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新たな世界_4

カナイ村に戻ってくると、すれ違う村人達から

いろいろと感謝の言葉を送られた。


隣を歩いているミアは自分が感謝されているかのように

嬉しそうな顔で村人達に言葉を返している。


顔馴染みの村人たちから感謝されることは素直に嬉しい。

前の世界では近所の人たちとはあ挨拶程度の関係性だったから、

こんなに人との繋がりを感じたことは今までなかった。



しばらく歩いて俺の家に戻ってきた。

どうやらミアもついてきた。


俺は家に入るなり椅子に腰をおろし一息ついた。

ミアも椅子にぴょんっと座り、頬をつきながら俺を見て笑っている。


俺はその笑顔を見ながら、

「・・・なんでニタニタ笑ってんの?」

「ニコニコって言ってよぉ〜。」

ミアは笑いながら訂正する。


「いや〜タロさんがこの村にやってきて随分時間たったけど、

だいぶ村に馴染んできたな〜と思ってさ。」

「・・・確かにそうだなぁ。」


この世界の知識も常識も知らない、どこから来たのかも分からない男。

さらに俺の髪の色が黒ということもあり、最初は好奇な目で見られていたが、

今日のような村の困り事を解決していると、自然と村に溶け込めるようになった。


「ミアとジャムのおかげだな・・・」

「でしょ〜。もっと褒めてくれい。」

誇らしげな得意顔で、フフンと鼻を鳴らす。

「最初、この世界に降ってきた時はどうなることかと思ったけど。」

神様に落とされた時の事を思い出しながら俺は苦笑する。

「地面から足が生えてるみたいだったもんね。」

「まったくよく生きてたよ。」


ミアとの思い出話をしていると、

入り口のドアが勢いよく開かれる。


「タロ!報酬をもってきたぞ!」


ジャムが手のひらサイズのずた袋をもって家に入ってきた。

ズカズカと俺たちが座っているテーブルまで歩いてきて、

持っているずた袋を机の上にジャラッと叩きつけた。

どうやら袋の中には報酬の硬貨がぎっしり入っているらしい。


「うわ〜っ!すごい額なんじゃないの?」

ミアはその袋をジャムから掠め取り、上下に振る。

「どれどれ?ひえ〜〜!!こんなに貰っちゃっていいの?」

「おい!俺の報酬だぞ!」

袋の中を覗き込んでいるミアから袋を奪い返す。


「まあな。あの紅獣レッドベアを倒したんだ。

村の危機だったのは確かだし、それぐらい払わねえとな。」

ジャムは腕を組み、茶色く伸びた縮れた顎髭を撫でる。


「じゃあさ!じゃあさ!

討伐を祝して、この金で、パーっとみんなで美味いもん食べようよ!」

ミアは椅子から飛び降り、この指止まれというように、人差し指を真上に指す。

「おいおい、なんでミアが・・・

「いいこと言うじゃねえかミア!!」

ミアの提案に反論しようとしたが、ジャムの馬鹿声に遮られた。

「よし、善は急げだ!いくぞタロ!!」

ジャムは俺の腕を引っ張り、椅子から立たせる。


ミアはもうすでに家から出ていた。

こうゆう時の彼女は誰にも止められないだろう。


「わかったよ・・・。今日は俺のおごりだ!」

やれやれといったように首を振り、

ずた袋を握り締めジャムと一緒に家を出る。

しかし、俺の口元は緩んでいる。

ミアとジャムとの馬鹿騒ぎは嫌いではない。


この新たな世界で俺を助けてくれた仲間達と一緒に、

村一番の料理店へと向かっていったのだ。

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