ナイト・オブ・ラブ_5
『バーンズ様
この度は心のこもったお手紙ありがとうございました。
読んでるそばから吐き気を催す手紙は初体験でしたので、
お返事に時間がかかってしまいましたが、
謝るつもりは到底ございません。
むしろ慰謝料を請求したいほどの気持ちになりました。
まず、手紙を拝見しましたが、
あまりにも言い回しが個性的かつ実験的で、
なかなか内容が入ってこなかったのは事実です。
要するに、わたしに好意を抱いてくださっている
という認識でよろしいのですかね。
結論から申しますと、バーンズ様の想いに応えることはできません。
本当に申し訳ございません。
ただ、あのような手紙を送ったら相手がどんな気持ちになるのか、
想像力のある方ならわかると思うのですが…
そういった点でも、バーンズ様は私の恋愛対象ではないかと思います。
どちらかというと、隣にいても自然体でいられるような、
普通の男性が好きなんです。からかっても笑ってくれるような子が…
ということで、バーンズ様のお気持ちには応えることができません。
どうかお許しください。
追伸:
コットンより』
そう言ってコットンは手紙を畳んで一礼した。
気が付くとあたりは静寂に包まれていた。
店の客たち皆が、コットンとバーンズに視線を注いでいた。
読んでいる途中から様子がおかしくなった
バーンズは膝から崩れ落ち、四つん這いの状態だ。
すぐ下の床には大きな水たまりができている。
「うぅ…おぉぉ…」
うめき声を漏らしながら震えていたバーンズは
膝に手をつき、ふらふらになりながらも立ち上がる。
「コ…コットンさん…心のこもった手紙でした…」
コットンはじっとバーンズを見つめている。
するとバーンズは右手を前に差し出し
「コットンさんその手紙を頂けませんでしょうか。」
と弱々しくしくつぶやいた。
コットンは、恐る恐る持っている手紙を差し出す。
その手紙を受け取ったバーンズは突然、そのクシャクシャと
手紙をボールのように丸くつぶし始めた。
それを見ていた俺は
「いったい何をやってるんだ?」
とつぶやくと、
「やけにでもなったんだろ…」
と横にいるミアが半笑いで答える。
するとバーンズはその丸めた手紙を
自分の口の中に放り込んだ。
突然の出来事に店の中にいた全員が、
目の前の状況が呑み込めず、ただただ見つめるしかなかった。
人間、信じられない事が起こると
黙りこくるしかできないのだと改めて知ることになった。
ムシャムシャと手紙を咀嚼し、ゴクンと飲み込んだ
バーンズの頬には一筋の涙が流れていた。
何の涙か理解に苦しむ俺は、固唾をのみ時間を待つ。
「コットンさんの想いが込められた手紙は、
私の胸の中に入っていきました。」
バーンズは胸のあたりをさすりながら呟く。
いや、実際は腹の中に入っていったんだが…と
思ったが、それは今考えることじゃない。
「今夜のことは一生忘れられない出来事として
私の胸に刻まれました。」
そう話すバーンズの流した涙はどんどん増加していき、
壊れた蛇口のように涙があふれ出していく。




