きまぐれな転生_1
ああ、どれくらいの時間を彷徨っていたのだろうか。
辺り一面真っ白な世界。
上も下もない、空間を感じないただひたすら白い世界。
歩いても歩いても、一向に景色は変わらない。
この空間に突如やってくる前までは、
確かに自分は学校からの帰り道を歩いているところだった。
受験を目前に控えている高校3年生である俺は、
授業が終わり、いつもの道を歩いて自宅へ帰る道中。
足元に紋様のようなものが現れ、眩しいほどの光を発した。
突然目の前が真っ暗になり、気がついたらこの真っ白な空間に
ひとり佇んでいたというわけだが。
「これ、どうしたらいいんだろう・・・」
歩いても歩いても一向に疲れないのが不気味でたまらない。
「どこなんだ?ここ・・・」
「失礼」
不意に後ろから声がした。
あまりの驚きに心臓が飛び上がり、
思わずその場でジャンプしてしまった。
すぐに振り返ると、そこにはこの世のものとは思えないほどの美しい女性・・・
いや、人の形はしているが、すぐさま異質な存在だと感じた。
陶器のような肌、全てを見通すかのような涼しい眼。
人工物のように均衡のとれた美しい顔に、絹のような透き通った白い髪。
白く光る布を纏い、まるでギリシャ神話にでてくる女神のような趣である。
「驚かせてすみません。
長い時間お待たせして大変申し訳ありませんでした。」
そして、その声は恐ろしいほど透き通ったいた。
「あの・・・あなたはいったい・・・」
頭の中が混乱しているが、
真っ先に思いついた質問を恐る恐る声にした。
「ヴェルヴァニアの創造主。
あなたの世界で云うところの、『神』という概念です」
「かみ・・・様・・・」
予想を遥かに越えた回答に、
ますます思考が追いつかなくなる。
「突然の事で戸惑っているかもしれませんが、
落ち着いて私の話を聞いて下さい。」
神様と名乗る女性が
落ち着いてくださいというように
手をこちらに向ける。
「ここはヴェルヴァニアと呼ばれる世界。
あなたのいた『宇宙』とは別次元に存在する世界です。
太古の昔はヴェルヴァニアと宇宙は同じ次元にありましたが、
次元離隔によるパラレイド化をおこし、4つの次元に・・・」
「ちょっ、ちょ、ちょっと待ってください。」
「失礼、話がそれました。」
話の内容が専門的すぎて、途中で聞くのを放棄した。
「最初のほうの話を聞くところによると、
僕は地球とは別の空間にいるということですね?」
「はい。簡単にこの世界の構造を説明しますと、
世界は4つの次元に分かれております。
私が創造した『ヴェルヴァニア』
そして別のものが創造した世界が『ノーレイス』・・・
あなたたちがいた『宇宙』という世界です。」
「信じがたい話ですね・・・」
「他にも2つの次元が存在しており、4つの次元は並列に存在しています。
まあ、その話は今は置いておきます。」
神様の話を半信半疑で聞きながら、あたりの真っ白な空間を見渡す。
「こちらの『ヴェルヴァニア』と『宇宙』の間を移動するなど、
通常なら有り得ないことなのですが・・・
私なら可能なんです。「創造主」ですから。
そこであなたを『ヴェルヴァニア』に転移しました。」
「転移・・・」
いわゆる異世界転移ということだろう・・・