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7話「我が子は天才に見える」



回想に浸っている間に日は落ちていた。


本来なら夜の山道は危険だ。


しかし、俺が一歩あるくと道の横の灯りがつき足元を照らす。


腰の高さの街灯が家まで続いている。


「人の体温を感知してつくんだっけ? すごいな」


これがあるので、日が暮れたあとでも安全に帰れる。


それに途中から土でできていたデコボコした細い道が、きれいに舗装されていた。


「アビーが煉瓦を敷いてくれたから助かるよ」


煉瓦の道を抜け家に帰る。


ドアを開けると大きな黒い犬が飛びついてきた。


「ただいまケルベロス。お土産のチーズだよ」


チーズを袋から取り出すと、ケルベロスはおすわりをしてハッハッと下を出して待っていた。


「よしよし、いい子だね」 


ケルベロスの頭を撫でると、今度は二本足で歩く猫が近づいてきた。


「ケットシーの分もちゃんとあるよ」


ケットシーの頭を撫でチーズを手渡す。


そのとき、洗濯機がピーッと音を立てて止まった。


「乾燥までしてくれるなんて、本当に便利な道具だな」


洗濯物を畳んでいると、ケットシーがお茶を入れてくれた。


「コルト様、お茶が入りました」


電気ポットで沸かしたお湯は、薪で沸かしたお茶とは一味違う。


「ありがとうケットシー。

 ところでアビーと雷竜(らいりゅう)はどこだい?」


ケルベロスもケットシーも雷竜も俺の眷属ではない。


もちろん温度を感知して明かりがつく街灯や、煉瓦の道や、洗濯機と乾燥機や電気ポットを作ったのも俺ではない。


「ご主人様と雷竜なら地下の研究室におります」


「教えてくれてありがとう、ケットシー。

 ケルベロス、地下へと続く階段を出してくれないか」


「ワン!」


ケルベロスが地下への階段を出してくれた。


彼らは息子が雷竜を召喚するときに、間違って呼び出してしまった子たちだ。


ケルベロスは結界を張り、この家と街灯や煉瓦のある道を隠してくれている。


ケットシーは家事担当。


そして雷竜は一番大切な……電気担当。


外の街灯も、洗濯機や乾燥機も、ポットも雷竜の放つ雷エネルギーで動いている。


地下への階段を降りると、大きな翼のある作りかけの乗り物が目に飛び込んできた。


乗り物の横で息子が部品を組み立てている。


リコに飛行機の説明を受けても、どんなものなのか俺には想像できなかった。


でも息子には想像できたらしい。


こんな物を五歳にして作ってしまうなんて、やはり俺の息子は天才……。


いやいやきっとこれは親の欲目。


「幼い頃の我が子は天才に見える」ってケンちゃんも言ってたし。


それに幼い子に過度の期待をかけすぎるのも良くない。


「お帰り、父さん。

 ネフくんは木彫りの鳥を喜んでくれた?」


「ああ、とっても」


「だから言ったでしょう?

 木彫りの飛行機より、木彫りの鳥の方が喜ぶって」


「だな」


ちなみに、ネフくんへのプレゼント候補だった木彫りの飛行機は地下室の壁に飾られている。


「見たことが無いものを貰ったって、戸惑うだけだよ。

 父さん、そこの工具とって」


「アビーは見たこともないのによく飛行機が作れたな。

 俺にはイメージできなかったぞ。

 ほらよ、これでいいのか?」


「ありがとう。

 僕は母さんに飛行機の絵を見せて貰った事があるから」


「そっか」


そういえばリコは絵を描くのが得意だったな。


「父さん、僕は絶対に次元を越える乗り物を完成させるから!

 そしたら母さんを迎えに行こうね!

 王族や神様に出来て僕に出来ないことなんかないんだから!」


アビーは決意の籠もった瞳でそう言った。




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