37話「ただいま」コルト視点・二章最終話
アビーが次元を超える機械を改良してくれたので、帰りは揺れなかった。
次元を超える機械に行きにはついてなかったトイレとかシャワーとかキッチンとかベッドとか色々なものが装備されていてちょっと驚いた。
しかも機械の中で音楽まで聞ける。
次元を超える機械をこんなふうに改良してしまうなんて、アビーは本当に凄い子だ。
「ただいま、ケットシー、ケルベロス、雷竜」
久しぶりに帰ってきた我が家は、よく清掃されていた。
庭に木の葉が一枚も落ちていなかったし、窓枠には埃一つなく、床は顔が映るほどピカピカだ。
カーテンからは花のような爽やかな匂いがする。
俺たちがいない間に、ケットシーたちが(おそらく主にケットシーが)大掃除をしてくれたみたいだ。
「お帰りなさいませ。
ご主人様、コルト様、リコ様」
ケットシーとケルベロスと雷竜が出迎えてくれた。
帰宅してすぐ俺の元にケルベロスと雷竜が走ってきた。彼らは俺に抱きつき、俺の顔をペロペロと舐めている。
俺はケルベロスと雷竜の頭を撫でてあげた。
ケットシーは少し離れたところでその様子を観察していた。
ケットシーの顎の下もなでてあげたいな。
「ふわわわ!
ほんとに喋るもふもふがいる!!」
ケットシーを見たリコが目をキラキラさせている。
「リコ、彼らが新しい家族だよ。
二足歩行の猫がケットシーで、大きな黒い犬がケルベロスで、黄色いドラゴンが雷竜だよ。
ケットシー、ケルベロス、雷竜、彼女が俺の最愛の妻のリコだよ」
俺はリコにケットシーたちを紹介し、ケットシーたちにはリコを紹介した。
「お初にお目にかかります、リコ様。
アビー様の眷属のケットシーと申します」
「二足歩行で歩く猫なんて童話の世界みたい!
素敵! メルヘン!!」
リコ様がケットシーに抱きつき、彼の顎をなでている。
リコが新しい家族と仲良くなってくれるのは嬉しい。
嬉しいのだがちょっとだけ嫉妬してしまう。
「母さん、あんまり強く抱きしめるとケットシーが息ができないよ」
「あっ、ごめん」
アビーが止めに入り、リコがケットシーを抱きしめる力を緩めた。
「ケットシー、ケルベロス、雷竜ただいま
!
お土産を買ってきたよ!
ケットシーには歩くと音がなって光る靴、ケルベロスには異世界にしかないスイーツ、雷竜にはふかふかまくら、ガーゴイルにはマフラー」
アビーは大きな袋からお土産を取り出した。
それにしてもガーゴイルって誰だ?
俺の知らない眷属がいたのか?
「ありがとうございます。御主人様」
アビーがケットシーの頭を撫でると、ケットシーは嬉しそうに喉を鳴らした。
「ご主人様は異世界に旅立ったときより、子供らしい表情ができるようになりましたね」
「そうかな?」
ケットシーの言葉にアビーが照れ笑いを浮かべる。
「それはそうと大掃除してくれてありがとう! ケットシー!
家中ピカピカだよ!」
アビーがケットシーに感謝を伝える。
「御主人様に仰せつかった通り、大掃除を済ませて置きました。
ケルベロスと雷竜も手伝ってくれました」
「へー意外だな。
雷竜は寝てばかりいるし、ケルベロスは遊ぶのが大好きだから大掃除の邪魔になると思ってたのに」
アビーが不思議そうな顔で小首をかしげた。
「いえ彼らの力がなくては(国中の)大掃除はできませんでしたよ」
ケットシーが含みのある笑顔を浮かべてそう言った。
俺がケットシーの言った「大掃除」の意味を俺が正しく理解するのは、だいぶ先のことである。
――終わり――
※最後まで読んでくださりありがとうございます!
※短編のはずが思ったより長くなりました。
私の作品にしては平和な世界線のお話でした。この作品のキャラクターが読者様に愛されて幸せです。
※コルトの村だけはケットシーたちの力で、税金を五倍取られずに済んだので平和でした。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
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