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聖女として召喚された女子高生、イケメン王子に散々利用されて捨てられる。傷心の彼女を拾ってくれたのは心優しい木こりでした・完結  作者: まほりろ
第二章

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36話「創造神の裁き」自称神ざまぁ



その日、創造神の五番目の息子ヴェルターは創造神である父親に呼び出されていた。


「創造神の第五子ヴェルター、お呼びにより参上仕りました」


ヴェルターは創造神の前に膝をつく。


ヴェルターは創造神の末っ子で、兄弟の中で一番見た目が良かった。


そのためヴェルターは母親に甘やかされて育った。なので彼は仕事や勉強が大嫌いなのだ。


ヴェルターは創造神に与えられた地区の見回りもせず、民からの上奏(じょうそう)文を暖炉にくべ、神殿に美女を侍らせ、自堕落な生活を送っていた。


そのため彼は、己が任された地区で瘴気が発生したことにもなかなか気が付かなかった。


瘴気は対応が早ければ早いほど、被害は少なくすみ、浄化するのも簡単だ。


部下に進言を受けヴェルターがしぶしぶ動いたときには、瘴気は国の十分の一の面積を覆っていた。


そんな状況に陥っても、ヴェルターは自ら瘴気の浄化を行う気はなかった。


人間に異世界から聖女を召喚する知識を授け、瘴気の浄化を聖女に丸投げしたのだ。


ヴェルターは聖女召喚に力を貸した見返りに、人間たちに供物を要求し、美女や金銀財宝を神殿に届けさせたのだ。


ある日、美女と戯れていたヴェルターは人間界から献上された美女の口から、

「瘴気の浄化を終えた聖女が王子に婚約破棄され、王子の借金のかたに辺境伯に売られそうになり、城から逃げ出したそうです。

 聖女は王子の婚約者時代も馬車馬のように働かされていたようです」

と聞かされた。


「聖女に仕事を丸投げしただけでも大事なのに、その聖女が王族に酷い扱いをされたことを他の神に知られたら大変だ! 下手したら神の地位を剥奪される!」


焦ったヴェルターは聖女の元に趣き、聖女を元の世界に送り返すことにした。


後から聖女に四の五の言われないように、ヴェルターは聖女の記憶を消すつもりだった。


しかし聖女に抵抗されたため、ヴェルターは彼女の記憶を消さずに逃げ出したのだ。







「ヴェルター、お前『雷竜一族に伝わる浄化施設』を知っているな」


「はい。悪しき人間の魂を清めるところですよね。

 そこのスペシャルハードコースは地獄よりも過酷という噂ですね」


「そこまで『雷竜一族に伝わる浄化施設』について知っているなら話が早い。

 ヴェルターよ『雷竜一族に伝わる浄化施設』に行き、スペシャルハードコースを受けて参れ」


「はっ?」


ヴェルターは一瞬父親に何を言われたのかわからず、硬直した。


「なぜそのような場所に神である私が、行かなければならないのですか?」


硬直が解けたヴェルターが創造神に尋ねた。


「ケットシーの一族とケルベロスの一族と雷竜の一族から苦情が来ている」


「えっ?」


創造神の手には三枚の便箋が握られていた。


「手紙にはこう記されていたよ。

『主のご母堂様は王族に聖女として召喚され、この世界に参りました。

 聖女時代のご母堂様は、日の出前から深夜まで馬車馬のように働かされたそうです。

 瘴気の浄化が終わったら、王子に婚約破棄され、ハゲでデブの五十過ぎの辺境伯に売られそうになりました。

 なんとか城から逃げ出したご母堂様は、心優しい木こりと運命的な出会いを果たし結婚しました。

 お二人の間には男の子が生まれ、親子三人で幸せに暮らしていました。

 ある日突然神を名乗る男が現れ、ご母堂様をご家族から引き離し、この世界での記憶を消して元の世界に連れ去ったのです』

 ヴェルター、この手紙に書かれていることは本当かな?」


創造神は口調は穏やかだったが、ヴェルターを見据える目は鋭かった。


創造神に見据えられたヴェルターの体はガタガタと震える。


「本当のことだったら大変なことになるよ。

 神が人間に聖女召喚の方法を教えるのは禁止されてる。

 神が人間に供物を要求することは禁止されてる。

 人間の記憶を本人の了承なく消却することも禁止されている。

 本人の了承なく異世界人を元の世界に戻すことも禁止されている。

 ヴェルター、君はいくつの法に触れたのかな?」


創造神に睨みつけられたヴェルターは、顔を真っ青にし額から汗を流していた。


「私は断じてそんなことはしておりません! 聖女の召喚だって人間が勝手にしたことです……多分。

 供物は人間が勝手に私のところに送ってきたんです……。

 私は聖女の記憶を消していません。

 ……消そうとしたけど未遂に終わりました。

 聖女を異世界に返すとき彼女の了承を得た……気がします」


ヴェルターは言い訳を並べ立てた。


「ケットシーの一族が僕のところに証拠を沢山送って来たんだよ。

 それでも白を切る気?」


「証拠を握ってるのに『本当?』と疑問形で訪ねて来るなんて父上はズルいです!」


言い訳すら止めて、いちゃもんをつけてくる息子に創造神は呆れていた。


「そっ、それに私が罪を犯したのには、ちゃんとした理由がありまして……!」


ヴェルターが出任せを言った。


「どんな理由?

 ケットシーの一族とケルベロスの一族と雷竜の一族を怒らせたんだから、それなりの理由があるんだよね?

 彼らの信用を失うほどの大義名分が君にあったのかい?

 あるなら聞かせてもらおうか」


創造神はヴェルターに凍えるような冷たい視線を送った。

 

「えっ……とそれは……」


ヴェルターが真っ青な顔で必死に言い訳を考える。


「僕はケットシーの一族の肉球と、ケルベロス一族のもふもふと、雷竜一族のピリッとくる電撃が大好きなんだ。

 君の下手な言い訳で、それらを失ったら僕は君を殺すかもしれないよ」


創造神から冷徹な言葉を放たれ、ヴェルターは何も言えなくなってしまった。


「君が仕事をサボって女遊びに現を抜かしていた証拠は揃っているんだ! 

 君が『雷竜一族に伝わる浄化施設』に行きスペシャルハードコースを受けることは決定事項だ!

 只今を持ってお前から神の権限を剥奪し、神の力を封じる!

 普通の人間として『雷竜一族に伝わる浄化施設』に行くが良い!!」


「ひぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!

 ち、父上!

 それだけはご勘弁を……!!」


ヴェルターは創造神の逆鱗に触れ、神の身分を剥奪され、神の力を封じられた。


ヴェルターは涙を流しながら土下座して創造神に謝罪した。


だが創造神がヴェルターを許すことはなかった。







「雷竜一族に伝わる浄化施設」に送られたヴェルターは、王太子と王太子妃と罵り合いながら、スペシャルハードコースのメニューに耐えているという。


創造神の見立てでは、彼らの魂が浄化されるには数百年かかるということだ。



読んで下さりありがとうございます。

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