3話「彼女との出会い」
彼女と出会ったのは六年前。
手頃な木を求めて山奥に足を踏み入れたとき、倒れている彼女を発見した。
この世界で見たことのない漆黒の髪と黒檀色の瞳、あどけなさの残る整った顔。
纏っている衣服は上等だったが、木の枝にでも引っ掛けたのかあちこち破れていた。
俺は彼女を背負って自宅に連れて帰った。
彼女は三日間うなされていたが、四日目に目を覚ました。
「お腹すいたーー!
ハンバーガーショップのハンバーガーとポテトとコーラのセットが食べたい!
あと宅配ピザチェーン店のミックスピザとマルゲリータでしょ!
南国カフェのホイップクリーム山盛りのパンケーキにタピオカミルクティー!
ああでも、和食も捨てがたいな〜〜!
お寿司に天ぷらにたこ焼きにきつねうどんに鶏の唐揚げにすき焼きにお刺身に豚汁……!」
彼女は起きてすぐ空腹を訴えた。
彼女の口から出てきたのは聞いたことのない食べ物ばかり。
都会で流行っている料理だろうか?
「あいにくだが、家にはこれしかなくて……」
俺は買い置きしておいたパンにチーズを挟み彼女に差し出した。
「パンがもさもさして食べにくかったらスープもあるよ」
彼女はスープを受け取り「ありがとう」と言って、ほほ笑んだ。
その瞬間雷に打たれ、弓矢で心臓を射抜かれ、ドラゴンのブレスに焼かれたような衝撃が体を走った!!
二十三年間生きてきて……こんな気持ちになったのは初めてだった。
心の中の全てを彼女にもっていかれた。
彼女は女神だろうか? それとも妖精?
黒く輝く髪はとても神秘的だ。
「あたしの名前は黒崎リコ、みんなはリコって呼んでる。
よろしくね」
「俺の名前はコルト」
「コルトいい名前だね。
それに呼びやすい」
彼女に名前を呼ばれただけなのに気恥ずかしくなった。
「この世界の人の名前って長いし、『ッ』とか『ィ』とか多くて呼びにくくて……」
ん? この世界? 外国から来たのかな?
だから見たことのない漆黒の髪をしているのか?
「コルトの職業は?」
「えっ、あっ……木こりだけど」
「そっか〜〜、木こりさんか。
あたしの職業はね凄いよ。
聞いて驚いて!
あたしは異世界から呼ばれた聖女様だったんだから。
まあ、今となっては『元』聖女だけどね」
「聖女……?」
聞いたことのない職業だな?
都会にしかない職業だろうか?
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