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聖女として召喚された女子高生、イケメン王子に散々利用されて捨てられる。傷心の彼女を拾ってくれたのは心優しい木こりでした・完結  作者: まほりろ
第二章

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26話「ケルベロスと雷竜」





ご主人様は私を呼び出した後も、召喚の儀式を繰り返していた。


ご主人様のお目当ては雷竜らしい。


眠りこけてばかりいる電撃を放つしか能がない黄色い竜と間違えられて召喚されたのかと思うと、少しおもしろくない。


しかしそんなことは、コルト様に喉を撫でさせてもらうとどうでもよくなってしまう。


ご主人様は、私を呼び出した一か月後にケルベロスを召喚した。


ケルベロスはコルト様によくなつき、コルト様が作ったホットケーキを美味しそうに食べていた。


冥界の番犬を手懐けるとはさすがコルト様。


庭でコルト様とボール遊びをしているケルベロスは、その辺の犬とあまり変わらなかった。


ケルベロスは元の姿は巨大な犬だが、本来の姿では家の中に入れないので普段は大型犬ぐらいの大きさを保っている。


コルト様とボール遊びをするケルベロスを、ご主人様が羨ましそうに眺めている。


ご主人様のそんなお姿を見ていると、胸が切なくなる。


ご主人様は本来なら遊びたい盛りのお年頃。


ご主人様は遊びたい気持ちを抑え、リコ様を迎えに行くための研究に日夜励まれている。


さぞかしお辛いことだろう。


ご主人様を癒すためにチョコレートケーキを作った。


そのケーキをご主人様に差し上げる前にケルベロスに食べられた時は、ケットシー族を招集し、ケルベロス族に戦争を仕掛けようかと思った。


コルト様の仲裁がなかったら、ケットシー族とケルベロス族の戦争が勃発するところだった。


ケルベロスを招集してから一か月が過ぎたある日、ご主人様が召喚の儀式を始めた。


そしてついに雷竜を呼び出すことに成功した。


雷竜と一緒にガーゴイルもくっついて来たが、奴はどこかに飛んで行ってしまった。


雷竜は基本的に寝てばかりいる。


ガーゴイルは時々帰って来てはガラク……何かの部品のような物を置いていく。


寝てばかりいる雷竜と、どこかを飛び回っているガーゴイル。


正反対のように見えて意外といいコンビなのかもしれない。








雷竜から電気を、ガーゴイルから様々な部品を得られるようになったご主人様の研究は、飛躍的な速度で進んだ。


洗濯機、乾燥機、電気ポット、温度を感知して明かりがつく街灯などはご主人様が造られたものの一部だ。


どれもこの世界では見たこともないものばかりだった。


これらの物はリコ様のいた世界では、どこの家庭にもあり普通に使われていたらしい。


リコ様が住まわれていた世界は、かなり文明が進んでいたようだ。


このようなものがどこの家庭にもあり、日常的に使われている世界……私ごときではとても想像できない。


しかしここにきてご主人様の研究の手が止まった。


どうやらリコ様のいる世界に渡るための資料が不足しているらしい。


いかに天才でも資料不足では本来の力を発揮できない。


どこからか資料を調達してこなければ!


しかしどこに行けば異世界に渡る資料があるのか?


そういえば、王族は異世界から聖女を召喚していたな。


神の手助けがあったとはいえ独学で出来ることではない。


王宮に行けば、異世界召喚にまつわるそれなりの書物があるはずだ。


異世界から人を呼び出すのと、自らが異世界に行くのでは多少勝手は違うかもしれないが、何かの役には立つだろう。


そこで私はケルベロスとともに王宮に乗り込み、門外不出の禁書を盗み出すことにした。


新入りの雷竜にばかりいい格好させておくわけにはいかない。


王族の図書館には結界が張られていたが、人間の施した結界の解除など、結界のプロであるケルベロスの手にかかれば造作もないこと。


結界を破った私たちは図書館の立ち入り禁止エリアに侵入し、人間たちに気取られることなく異世界召喚について記された禁書を持ち出すことに成功した。


ご主人様は我々が禁書を盗み出してきたことに、初めは驚いていた。


しかしすぐに「後で返せばいいか」とおっしゃられた。


ご主人様は頭の回転だけでなく気持ちの切り替えも早い。


御主人様は我々が持ち出した禁書から得た知識を元に、研究を重ね、次元を超える機械の開発に取り組まれた。


ご主人様の試行錯誤の末、ついに次元を超える機械は完成した。


リコ様が自称神により異世界に連れ去られてから、四年の月日が経過していた。


異世界には神話の生き物はいないそうなので、私とケルベロスと雷竜はお留守番となった。


ケルベロスと雷竜はコルト様に抱きつき、コルト様のお顔を舐め別れを惜しんでいる。


永遠の別れになるわけでもないのに、みっともない。


私もコルト様に抱っこされたいとか、コルト様に頭を撫でられたいとか、ケルベロスと雷竜だけズルいとか、そんな気持ちから言っているわけではない。


理知的な私は本能の赴くままにコルト様に抱きつき、コルト様のお顔を舐め、彼を困らせるわけにはいかないのだ。


それにご主人様を一人にするわけにはいかない。


留守の間にしておくことをご主人様に確認しておかなくては。


「ご主人様、留守の間にしておくことはございますか」


「そうだね。

 母さんが帰ってきたとき気持ちよく過ごせるように()()()をしておいて」


()()()ですね。

 承知いたしました」


数ある家事の中で、私は掃除が一番得意だ。


ご主人様たちがお帰りになった時気持ちよく過ごせるように隅々まで掃除しておこう。





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