11話「異世界での社畜生活」リコ視点
【リコ視点】
あたしの名前は黒崎リコ。
ごく普通の女子高校生だったあたしは、ある日突然異世界に召喚され、聖女にされてしまった!
王子との結婚を餌に大臣や教会に利用され、十六歳から十八歳の貴重な時間を、朝は日が昇る前から夜は深夜まで馬車馬のように働かされ、社畜として過ごした。
しかもその間食べたものといえば、パンと果物とじゃがいものスープのみ!
聖女の神聖な気が汚れるから肉も魚も禁止ですよ! ただの経費節減じゃないの!? 聖女の扱い悪過ぎ!
そして三年後、あたしが瘴気の浄化を終え国が綺麗になったら、王子も大臣も教会も手のひらを返した。
「瘴気が浄化されたからそなたはもう用済みだ!
この国では十九歳を過ぎた女は行き遅れだ!」
王子はそう言ってあたしを罵ってから捨て、十四歳の貴族の娘と婚約した。
二十一歳にもなってるのに十四歳の女の子に欲情してんな! このロリコン王子!
十四歳の少女はあたしに向かって、
「殿下がリコ様と結婚する前に瘴気の浄化が終わって良かったですわ。
だって瘴気を浄化するしか能がない、品性もない、教養もない、身分も低い、年増のおばさんと結婚するなんて殿下が可哀想ですもの」
と言った!
誰がおばさんよ! あたしはまだピチピチの十代よ!
高校に通っていたあたしを誘拐して聖女にしてこき使って来たのは誰よ!
品性も教養も磨く暇なんてなかったんだから!
ただでさえ腹が立ってるのに王子の奴、あたしをハゲでデブの五十過ぎの辺境伯に嫁がそうとした。
あたしは完全に頭にきたので、城を抜け出し、行商人の馬車に隠れて王都を脱出した。
王子は少女との結婚式の費用をハゲ辺境伯から借りていた。
あたしを辺境伯に花嫁として差し出すことで借金をチャラにするつもりだったらしいけど、残念でした!
お金がなくなった二人が質素な結婚式でも挙げるところを想像すると、ちょっとだけ胸がスッとした。
そこまでは良かったんだけど……。
追手を避けるために森に入ったら、迷ってしまい、崖から落ちて足を怪我してしまった。
自力じゃ動けないし、助けを呼んでも誰も来ないし、もうだめかなと思ったとき……彼は颯爽とあたしの前に現れた。
彼は煉瓦色の髪に琥珀色のキラキラした瞳をしていた。
王宮や教会にはいなかった素朴な人間に出会えたことが、単純に嬉しかった。
彼はあたしの足の治療をしてくれて、家まで背負って運んでくれた。
そしてご飯を食べさせてくれた。
数年ぶりに食べるお肉とチーズの味は格別だった。
あたしが事情を話したら彼はあたしに同情してくれた。
彼は怪我が治るまでここにいてもいいと言ってくれた。
彼の名はコルトといい、あたしの四つ年上の二十三歳。
四つ年上なら充分に守備範囲!
コルトは木こりの仕事をしていて、人里離れた山奥に一人で暮らしているらしい。
彼は手先が器用で、副業として木彫師の仕事もしている。
コルトは木こりをしているときの額から汗が滴るワイルドさと、木を彫っているときの真剣な表情のギャップがいい!
この世界の人に食器洗い乾燥機やオーブンレンジもミキサーの話をしてもわかるはずないのに、彼はあたしの話を嫌な顔一つせずに聞いてくれた。
コルトは「リコのいた国はこの国よりも、かなり文化が進んでいたんだね」と言ってほほ笑んでくれた。
彼はあたしの話を否定したり、うっとうしがったり、悪魔憑き扱いしたりしなかった。
この世界に来てから王子とか神官とか大臣とか、一癖も二癖もある二枚舌のペテン野郎ばかり相手にしていたので、彼の純朴な優しさは心に染みた。
コルトの作るご飯は美味しいし、とっても働き者だし、なんでこんな優良物件が今まで独身だったのかしら?
コルトが山奥の小屋で一人暮らししてなかったら、とっくに誰かと結婚してたかも?
彼の隣に知らない人が花嫁衣装を着て立っているところを想像したら、胸がもやもやした。
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