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第92話 戦えぼくらの虹色戦隊-1


「五人そろって、虹色戦隊プリズムファイブ!」


五人の背後で虹色の爆発が巻き起こる。

そしてそれを合図にするようにして全員が走り出した。


目指すはモスマンだ。

羽を広げて鱗粉を飛ばしてくるが、イゼが剣を振って発生させた吹雪で全て反射して見せる。


ミモが飛んだ。

モスマンの触角を掴んで引き抜くと、背後に着地する。

モスマンは高速移動でミモの前方に回り込むが、イゼが同じスピードで追従してレーザーを剣で受け止めた。


さらにイゼの後ろからモアが二人走ってきた。

同時に飛んだ分身たちは発光する小刀を交差させてモスマンにXの文字を刻み込んだ。

その中央、線と線が交わるところへ光悟の足裏が叩き込まれる。


「ティクスキック!」


モスマンは背中から地面に倒れ、そのまま滑っていった。


「過去を!」


イゼは踏み込み、発光する剣を振るった。


「断ち切るッッ!!」


紫色に煌めく斬撃が地を伝い、モスマンに追いついた。

光が機体を引き裂いた。モスマンは大爆発を巻き起こして四散していく。


「アイたちはね、外に出るよっ!」


アイは振り返って銃を撃った。

発射された小型の機械がネッシーに張りつくと、ハッキングを行い自由に動かせるようになる。


「怖いけど! 辛いけど!」


アイの命令でネッシーは首を伸ばし、水流を発射してユーマたちを攻撃する。


「悲しいけどッッ!」


ネッシーの体からミサイルが発射されてユーマたちに直撃していく。

その爆炎の中から市江が飛び出してきた。手をかざすと冷気がネッシーを包み、水流が凍り付き、口が凍結して開かなくなる。


しかし同じくして光悟が飛んできた。

振るったハンマーをバリアで受け止めると、光悟は市江を掴んで転がっていく。


「人間の都合で生み出されたわたしたちの自由はどこにあるですか!」


市江が吠えると、それをきっかけにするようにネッシーがハッキングを書き換えて動き出した。

同時にミモが指を鳴らすと、ネッシーの前に炎が現れて口を覆う氷を溶かしていく。


だからネッシーは口をあけて水流を発射するが、ミモは地面を転がって回避する。

そんな彼女の上を液状化したモアが飛び越えていく。

モアはそのままネッシーが放つ水流に交わると、逆流するようにネッシーの口の中に入っていった。

するとネッシーの前ヒレが飛んだ。すぐに後ろヒレも飛んだ。断面からは水が噴き出している。


ネッシーが叫んだ。

目が取れて水があふれていく。口からも水があふれていく。

そこでネッシーの体が弾けた。

大量の水が飛び散り、飛沫とともにモアが着地した。

液状化で体内に侵入して内部から破壊していたのだ。


「神様を信じる前に、自分を信じなきゃダメだったんですよ……。ね? 市江ちゃん」


モアは悲しい目をしていた。

そんなもので見つめられたものだから、市江は不愉快だった。


「市江ちゃんの神様(アダム)は、なんて言ってた? 市江ちゃんはそれを本当の意味で理解していますか?」


「……っ」


「助けた人には、幸せになってほしい筈なんです……」


「ッッあぁぁああああ! シスターはウザいです!」


市江が吠えた。

アブダクションレイによってチュパカブラがモアの背後にワープする。

しかし飛び込んできた光悟がモアをかばい、代わりに舌で首を絡めとられた。


チュパカブラは体を振って光悟を後ろへ投げ飛ばした。

さらに全身の棘を発射して光悟を貫こうとする。

すぐに虹のバリアで攻撃を受け止めたが、棘はバリアをいとも簡単に貫き、光悟の体や周囲に突き刺さっていった。


そこで棘が爆発した。

光悟は煙を纏いながら地面を転がっていく。


「人間になったつもりです!? だとしても正義を語る資格なんてないですッ!」


アイがに銃を連射して仕留めようとするが、チュパカブラは弾丸の間を縫って走り、あっという間に距離を詰めてきた。

舌が伸びると、先端がアイの太ももに突きささる。


「ひっ! 吸われちゃう!」


思わず声にした不安。

しかしそこで閃光が迸る。イゼが高速移動で駆け付け、舌が切り落とした。


「ォオオオオオオオ!」


雄たけびのような音をたててビッグフットが走ってくる。

同じく走り出したミモ。一歩踏み出すごとに全身に炎が纏わりつき、やがて紅蓮の塊に変わる。


ビッグフットとミモは一切スピードを緩めない。

やがて二つはぶつかり合うと、すさまじい衝撃を拡散しながら、両者倒れた。


先に起き上ったのはビッグフットだった。

すぐにミモを踏みつぶすとするが、そこで水の塊が突進してきて弾かれる。


「ミモちゃん!」


「モア様!」


手を差し出し、それを掴む。

何も変わってない。出会った時と何ひとつ変わってない。

変わってないから、変わらないものがある。


誰に愛してほしい?


そんな声が聞こえてきたような気がする。

わかってる。運がなかっただけだ。

苺さえ生きていれば、わたしだって、向こうにいた。


「それだけで、よかったのに……」


弱弱しく呟いたから、それは誰にも聞こえない。

今も水が激しく流れる音が聞こえている。

空に浮かぶ激流。空中を流れる川はモアが忍法で生み出したものだ。


ミモは飛び上がると一回転しながらその中に飛び込んだ。


激しい流れだったから、一瞬でビッグフットの前に運んでくれる。

ミモは右足を突き出し、そこへ炎を集中させた。


「超絶美少女バーニングキィィィック!!」


ビッグフットの体を飛び蹴りが貫いた。

風穴がバチバチと音を立ててビッグフットはゆっくりと倒れ、爆発した。



繋いだ手はもう一つある。

イゼとアイが一本の剣を持ってた。


空に突き上げた剣先を中心として、ドーム状のエネルギーエフェクトが広がっていく。

空間情報がアイの脳内に送られていき、その中にいるチュパカブラの動きが手に取るようにわかった。


次はここに来る。

そう思った場所に光の柱が立った。

だからイゼと共に掲げた剣を振り下ろす。

冷気と電撃を纏ってリーチを伸ばしていた光の刃が一太刀でチュパカブラが真っ二つになった。


「なんで……! ゲロルの兵器が、こんなっ、簡単に!」


「兵器を破壊するために、ティクスは強くある!」


光悟が右手を広げると頭上に虹色の光が集まり、『手』の形になった。

セブンスハンド。

光の手が市江のハンマーを掴んだ。

振り払おうとするが、どれだけ力を籠めようと手はそこにあって輝き続ける。


「ティクスの力は! 戦いを終わらせるための力だ!」


手が、ハンマーを、イエティを握りつぶした。

市江は大きく目を見開く。残ったユーマはたった一つ、左手にあるカーバンクルだけだ。

それが壊れるのを想像した時、市江は叫んでいた。


恐怖、怒り、そして憎悪。

それらがユーマの破片を集め、カーバンクルを守るように覆わせる。


「それがわたしの不幸になるとしても! 貴方はこれを破壊するですか!」


素晴らしいヒーローへ見せつける異形のキメラ。

もはや何をモチーフにしているかもわからないそれを、光悟に向けて突き出した。

口かもわからぬところにチャージされていくエネルギー。


そこで光悟はプリズマーのボタンを押してジャスティボウを三体呼び出した。


口を開いたスパーダがライガーの尻を噛むようにしてドッキング。


さらに翼を広げたジャッキーがライガーの背に重なり、ドッキング成功。


並べて乗っけただけではあるが、それは立派な合体だった。


「完成! ディープストームライオ!」


バズーカーに手を当てていく魔法少女たち。

色が、装填されていく。市江は悔しくて悔しくて涙を零しながら笑った。

どこまでも食いついてくるし、何を出してもそれを超えるものを出してくる。それが正義というのなら――


「わたしは、悪ですか?」


「違う! だが今のままではダメだ! 変わらなければ虹色の未来はない!」


「ッ! あぁあああッ! 決めつけないでッッ!」


キメラからどす黒いレーザーが発射された。

同じくして、ライガーの鬣と口から虹色のレーザーが発射される。


「「「「「アトミッククラッシャー!!」」」」」


重なる五つの声。

虹の光線は、競り合うことすらせずに、一瞬で黒を飲み込んで市江を包み込む。


「あ……」


市江は左手を見て、諦めたような声を漏らす。

キメラが解けていく。中にいたカーバンクルが泣いている気がして、市江は腕で覆った。

しかし気づいた時にはもうカーバンクルが溶けていた。

市江は真顔になった。

苺に会いたくなった。


「もう、ずいぶん、会ってないの……」


「………」


「苺のフィギュアにハートを入れたらどうなるの?」


市江の体が粒子となって空に還っていく。


「どうせ幻が、生まれるだけでしょ……?」


そこで市江の肉が消えて骨になった。

その骨が消えて、臓器も消える。

こうして市江の姿をした肉人形は完全に消え去った。

イゼは彼女が立っていた場所に来ると、小さなため息を漏らす。


「どんな魔法が使えても……、返ってこないものがあるのだな」


光の粒を目で追いかけながら呟いた。

ナナコを思い出し、イズを思い出し、それでもイゼは両手を前に出した。

その意味を理解して、一番初めにアイが手を握った。


「すまん。室町」


「ううん。アイも、欲しかったから大丈夫だよ」


すぐにもう一方の手をミモとモアが触れる。


「埋めるものが出てきてくれる。生きていれば……」


でも、それもすぐに消えるかもしれないの。

埋めるものが永遠に出てこない可能性だってあるの。

そう問いかける声が聞こえた気がした。


「そうだ。それでも信じる。信じて続けて前に進んでいく。それが生きていくということではないのか?」


そうだろ、真並光悟?

話を振られたので、光悟は確かに頷いた。


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