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第26話 ラブリンランド開園!


【LOAD】


「ジャア、イマカラ、オレノヘヤニ、ミンナデ、イコーカ!」


女性たちは大盛り上がりで光悟の後についていく。

中でもルクスという女性は積極的だった。いち早く光悟の隣につくと、腕に胸を押し当ててくる。


「ハハ、アワテナクテモ、ヒトリズツ、カワイガッテ、ヤンヨッ! ブハハハハ」


ホールから出ていこうとする光悟を、涙目のパピが見つめていた。


「やだぁあああああああああああああ! いがないでぇえぇええ!」


そこで衝撃。光悟が目覚めると、そこは自分の部屋だった。


「間違いねぇ! 今回のループはパピの死がきっかけじゃない。光悟だ!」


どうやら光悟が他の女性と仲良くしているのをパピが見るとゲームが終了してしまうようだ。

何故かはわからないが、今までの流れを見るにそうとしか考えられない。

思えばセーブデータが更新されたポイントも二人の関係にヒントがあるのでは?


『いずれにせよ悪くない話だね。パピが死ぬ以外でハートを漏らすなら、このまま繰り返せば回収しきることができるかもしれない』


「だが回収することが全てじゃない。それでヴァジルたちの運命が変わると思うか?」


悲劇で終わるゲームに戻すのは胸が痛む。


『その点はわからないね、でもとりあえず真並くん、キミは逃げろ。その間におれが残りのセブンを見つけ出して始末してやる。悲劇に進む要因が全て排除されれば、何かが変わるかもしれないってね』


そこで倒れていたティクスがムクリと起き上がり、声をあげた。

どうやらずっと考えていたようだ。ループが起きる『本当の理由』というものを。


『話を聞く限りパピちゃんは光悟くんのことが好きみたいだけど、どうするんだい?』


光悟は少し怯んだように和久井を見る。

和久井は苦虫を噛み潰したような顔を返した。


「それな。どうなんだよテメェは。パピのことは、その、好きなのか?」


「……嫌いじゃない」


「なんだそりゃ? くッだらねー答えだな本当。つまんねー男だよお前は」


光悟らしくない答えだと思ったら、なんだかカチンと来てイライラしたきた。


「オレも詳しいことはわかんねぇけどさ、お前が他の女と仲良くするのがパピにとって死ぬのと同じぐらいのことだったんだろ? なのにテメェは嫌いじゃないだぁ?」


流石にかわいそうだ。

それを聞くと、光悟の表情が"いつもの"に変わる。


「……悪かった。そう、そうだな。なら俺はパピが好きだ」


「いいか? 前回のループはティクスっていうデウスエクスマキナが解決した」


演劇用語で、解決困難な状況を絶対的な力を持つ神が登場して解決に導くことだ。


「でも今回はそれじゃダメだろ。お前の力で終わらせろ、お前がパピを落とせ」


『ではコチラはいろいろ調べたいことがある。今回はキミたちでなんとかしてくれ』


月神はそういうと通話を切り、光悟たちはPCの中に入っていった。


【LOAD】


まずは誤解を防ぐため、他の女性との接触は避けるべきだ。

光悟は迫る人々を振り切ると、パピの手を取って走りだす。


「人込みに疲れた。少し外に出よう! 喫茶店に行かないか?」


「え? え、え! うん! 別にいいけど……!」


すると和久井が指示を出してきた。光悟は言われた通りの台詞を口にしてみる。


「服はどうする? このままで行くか?」


「賛成。着替えるのも面倒だし」


「まあでも俺は今のドレスより、いつもの服の方が好きだけどな」


「は? いきなり何? きもっ! ばっかじゃないの? さむさむさむッ!」


パピはそのまま中庭に入り、噴水の中にダイブした。


「パッ! パピーッ!?!?!?」


「うっさいわね! ちょっと足が滑っただけじゃん! 着替えて来るから待っててね!」


パピは猛スピードで部屋に戻ると、ロリエに髪を乾かしてもらって、いつもの服装で戻ってくる。なんだか目がキラキラしているような……?


【完全にテメェに惚れてるじゃねーか。楽勝じゃん、さっさと終わらせてくれ】


光悟は何も言わなかった。何も言わず、喫茶店の奥の席につく。


「ねえ、でもなんでアタシを誘ったの?」


「なんでって、二人きりになりたかったからだ」


「え!? あッ! そう! そうなんだ! ふーんッッ! ほうほう!」


パピは赤くなってニヤケはじめる。一方で光悟は緊張した面持ちで咳払いを一つ。


「パピ、お前のために歌を作ってきたんだが、聞いてくれるか?」


「えッ! う、うん! ありがと。でも何よいきなり、きもいんだから、へへへ……!」


パピはうっとりとしながら頬杖をつく。ああ、まさに夢見心地――


「地球から来ました真並光悟です。それでは聞いてください『鼻毛祭り2013』!」


光悟はPCから吹っ飛ばされると、壁に叩きつけられてベッドの上に伏せた。


「な、なんでだ! 何が悪かったんだ!」


「頭」


「ぐッ! しまった! 『え? なんかキミ臭くない?』にしておけばッッ!」


「よくねーよ! 終わってんだよタイトルが。ラブソングだぞ、本気で言ってんのか?」



【LOAD】


和久井のアドバイスを受けたのでもう間違えることはない。

とりあえず先程と同じ状況を再現することはできた。

パピはうっとりとしながら光悟を見つめており、雰囲気はバッチリだ。

小粋なラブソングを聞かせてやれば彼女はすぐにメロメロだろう。


「聞いてください。キミと見た月」


「うん……!」


「んッパパパパパーパパーパパッパァ! パピパピパーピパピパッパー! パラパー!」


光が巻き起こり、光悟はきりもみ状に回転しながら壁に叩きつけられる。

ベッドの上に崩れ落ちると、そこへティクスも直撃した。


『ど、どうしたんだ光悟くん! 何があった!?』


「わからない! 和久井ッ! 一体なぜ!」


「うるせぇブチのめすぞ! なんで電波ソングなんだよ! 愛を囁け愛を!」


「歌詞が思い浮かばなくて! 頼む和久井! ラブソングはどう作ればいいんだ?」


「……いやッごめん。何ていうかオレ陰キャだし? ラブソングあんまり縁がないし。いやでもやっぱ過去の恋愛の切なさとかじゃねーの。知らんけど。あ、ごめん今適当なこと言った時の関西圏特有の責任逃れ台詞が出ちった……!」


考えてみれば光悟も和久井も彼女というものを知らないまま生きてきた。

月神だったらばと連絡を取ってみるが、『いいかいキミたち、恋人なんて浮ついたものを作るよりも目標に邁進したほうが――』そこで通話を切ったので情報はない。


『そもそもどうして歌を? 変に捻るより素直に自分の気持ちを伝えればいいよ」


ティクスの言うことはあまりにも尤もだった。光悟は喉を鳴らし、PCへ向かう。


【LOAD】


喫茶店。

大切な話があると言うと、パピは緊張した面持ちで肩を強張らせていた。


「パピ、俺はお前が好きだ。正式に恋人として、お付き合いしてほしい」


「――そ。嘘よ。絶対嘘」


「え? パピ?」


「いやあああああああああああああああ!」


PCから光悟とティクスが排出され、壁に叩きつけられた。


「なんでだよ! あの態度から、なぜ拒絶に走る!」


【LOAD】


光悟、知ってるか?

ネットで見かけたんだが、今だと下に履くものは全部パンツって呼ぶらしいぞ。知らんけど。

あと女は服を誉められると嬉しいらしいぞ。知らんけど。

だからまあそうすればいいんじゃね? 知らんけど。


「なあパピ、今日のお前のパンツいいよな」


ビンタされた。


【LOAD】


「うぇーいパピちゅぁーん、俺っちとラブリンランド一緒に開園しちゃうー?」


【LOAD】


まあ今のはなかったことにしよう。誰だって模索しながら生きてる。


「パピ、何か欲しいものはあるか? なんでも言ってくれ」


喫茶店、光悟とパピは紅茶を飲んでいる。次はプレゼント作戦だ。


「え? うーん……、なんでも、いいの? だったらあの時――ッ!」


そこでパピは言葉を切った。何かを迷っているようだった。


「……あれはダメ、違う。えっとね、一緒に行ったケーキ屋さん覚えてる?」


あそこで売っていた特製のシロップをパンケーキにかけて食べたいという。

光悟はすぐに店を出ると、五分ほどで戻ってきてリボンで飾られた袋をパピに差し出した。


「店まで走って買ってきた。ティクスにはほら、早く動ける紫の姿があるから」


「えッ! でも、お誕生日じゃないのにもらってもいいわけ……?」


「もちろん。俺の気持ちだ。包装は不慣れだから、不格好だけど許してくれ」


「ありがとう! うれしい!」


まあまあ気合を入れて走ったし、パピの笑顔を見たら体が熱くなってきた。

今日の朝、ポケットの中にハンカチを入れておいたので、それで額を拭う。


「ん?」


違和感を感じてハンカチを広げてみると、手の中に女性ものの下着があった。

おかしい。汗を拭った筈なのにまた汗が出てきた。その時、ヒラリと落ちる紙。


【プレゼントです。あなたのルクスより】


積極的な女性である。自分の下着を脱いで光悟のハンカチとすり替えていたのだ。


「ばかあああああああああああああああああああ!」


PCから吹っ飛ばされた光悟は壁に激突して動かなくなる。

そこにティクスがぶつかって、最後にハンカチがヒラヒラ落ちてきた。握り締めていたパンツはない。


どうやらティクスやジェンガなど地球から物を持ち込むことはできるようだが、向こうの世界の物を持って帰ることはできないようだ。

光悟がベッドから降りると、銀色の小さな包み紙が落ちているのが見えた。

何か引っかかるものを感じたが、それを捨てるとすぐにPCへ手を伸ばした。


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