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燃え上がる透視

 【透視】【透視】【透視】【透視】


 走りながらスキル【透視】を連続して発動する。そろそろスキルレベルが1になる頃か? レベル0のスキルなんて持っていないのと一緒だ。何の役に立つかは分からないが、出来ることは何でもしないと。しかし、このスキルは体力を消耗しないな。連発しても平気だ。


 手に持ったままのギルドカードを見る。よし! 【透視】のレベルが1になっている。これで何かしらの効果を発揮する筈だ。


「俺に希望を! 【透視】!!」


 ……うん。特に何も起こらない。このスキル、何を見れるようになるんだ? もしかしたら敵の弱点が見えるとか? いや、そうに違いない!!


「ヴォォオオオ!!」


 来やがったな。一度ならず二度も人の命を狙いやがって。逃げるつもりだったが、方針変更だ。【透視】でお前の全てを暴いてやる。


「ふふふ。罠に掛かったな。糞オーガ野郎」


「ヴォ?」


 オーガは急に立ち止まり振り返った俺を警戒している。さっきまでのニヤけ面はない。


「お前はこれで終わりだ! 【透視】!!」


「ヴォォォォ……ヴォ?」


 あれ? オーガの腰蓑が透けて股間が見える。確かに弱点かもしれないが、思っていた効果と違うぞ。なんかオーガの体に光る場所が見えてそこに触れると一撃で倒せる! みたいなのを想像していたのだが……。


「ふははは! もうお前の弱点は把握した!! 死にたくなかったらその場から動かないことだ。慈悲深い俺に感謝するがいい」


「ヴォ?」


 よーし、逃げろ!!



#



 ヴォォオオオ!!


 やっぱり追って来てる! しばらくは平気だったから上手く騙せたと思ったのに!! どうする? 足は向こうの方が圧倒的に速い。このまま単純な追いかけっこをしていれば直ぐに捕まってしまう。そしたら首チョンパ確定だ。さっきみたいなハッタリはもう通用しない。かといって、俺には奴と戦う地力もスキルもない。やはりここは、このスキルに賭けるしかない!!


【透視】【透視】【透視】【透視】【透視】【透視】


 どうだ! 早くスキルレベルよ、上がってくれ!!


【透視】【透視】【透視】【透視】【透視】【透視】


 まだか!! 流石にちょっと疲れてきたぞ。


【透視】【透視】【透視】【透視】【透視】【透視】

【透視】【透視】【透視】【透視】【透視】【透視】

【透視】【透視】【透視】【透視】【透視】【透視】


 きたあああ! ギルドカードに輝く"透視2"の文字!! 土壇場で俺はやった。やり遂げた。執念の【透視】100連発? でスキルレベルを上げてやった! 人間、本気でやれば出来るものなんですね、神様!! なんの効果があるか分からないけれど……。


「今度こそ俺に道を示せ! 【透視】!!」


 ……なんだ。左側の壁がおかしい。岩の筈なのに透けて見える。これは……隠し通路?


 ヴォォオオオ!!


 迷っている時間はない。手を壁につけるとスッと中に入る。よし! ここでやり過ごすぞ。もうそれしかない。



 息を潜めて隠し通路で待つ。物音一つが命取りになりかねない。心臓すら止める覚悟で静止する。俺は物言わぬ石、血の通わぬ木偶。神様は私を動かぬ身体で創りたもうた。


 真っ暗な隠し通路の中、ジリジリと焼けるような時間を過ごしていると、外から気配がする。足音は徐々に近づいて──。


 オーガだ。透けて見える壁の向こうをオーガが通り過ぎて行く。よおおおし! 上手くいった!! しかし、まだだ。完全に気配が消えるまでここで待とう。俺には【水生成】のスキルがある。2日ぐらいなら水だけでなんとかなる。俺は生きて帰れる! 帰れるぞー!!


「えっ?」


 背中に熱を感じ、続いてゴボゴボと血の泡が口から溢れ出る。


「……な、んで」


 背後に気配を感じたかと思うと、意識は砂嵐に掻き消された。

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