お師匠様とカエデ
番外編は次書きます
あれから4分ぐらいだろうか。私はやっと泣き止んだ。泣いている間、フュエルさんはずっと抱きしめてくれていた。
「落ち着いた?」フュエルさんは深くは聞いてこなかった。そして優しく接してくれた。
「はい、取り乱してすいませんでした。」
「いいのよ、さっ、落ち着いたならご飯続き食べよー!でも冷めちゃってるかも……もっかい温め直すからもうちょっと待ってねー」
温め直してくれたご飯を食べる。
1口。2口。3口。どんどん箸が進む。美味しい。温かい。私はここにいてもいいよと言われた気がした。
気づいたら全てのお皿が真っ白になっていた。
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「今日はお仕事を覚えてもらおうと思ったんだけど………カエデは魔法使ってみたい?」
「え、えぇ、使えるなら…」1回使ってみたいものだった。
「じゃあお師匠様のところに行こう!あ、お師匠様っていうのはこの村で1番の魔法使いの事ね!皆“お師匠様”って呼んでるのよ、カエデもそう呼ぶといいよ!」
「分かりました。」私は笑顔を添えてそう言った。
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「ここがお師匠様の家だよ!」そう言って案内されたのは村から少し外れたところにある小さい家だった。でも何故だろう。威圧感が凄い。
「ここに、“お師匠様”がいるんですね?」
「えぇ、でもとっても優しい人だから!」フュエルさんがそう言うなら安心だろう。
私は家の扉をノックした。すると
「はいはぁぁい!どーもどーも!」という声が扉の中から聞こえる。
ガチャリ。扉が開く。
「はーい、宅配便ですかぁ?」と勢いよく飛び出してきたのはお姉さんだった。
先のとがった帽子を被っており、いかにも魔女っぽかったが服装がパジャマだった。上と下のセットだろう。星のマークが大量にある。
「あ、あのぉ、“お師匠様”でしょうか??」私は恐る恐る聞いてみた。すると
「えぇ、そーだよ!私が師匠さ!はっはっは!ともあれ君は見ない顔だね、そこにフュエがいるってことはきっとあれだね、魔法を教えて貰いに来たんだね、分かる、分かるよ!」機嫌良さそうにその“お師匠様”は言う。
「その通りで、魔法を教えて貰いたくて………」私はそのテンションについていけずに弱気になってしまう。
「ん、おっけー!私が教えてあげよう!ちょっと待っててねぇ、準備しちゃうから」と言って“お師匠様”は家に戻って行った。
10分後。
ガチャリと扉が開く。
中からはさっきと全く変わらない格好のした“お師匠様”が出てきた。強いて変わったと言えば杖を持ってきたぐらいだろうか。パジャマは変えないのか……などと思ったが触れないでおこう。
「んーじゃ、ついてきてー」と言って案内されたのは広い高原だった。ここなら魔法を使っても被害が少ないのだろう。
「それじゃ、この子を《鑑定》しちゃうねぇ、どれどれ〜……………ッ!?」“お師匠様”は顔を青ざめる。
「フュエ!あんた、この子をどこで見つけたの!」声を荒らげて言う。
「普通に、バラニス森林で狩りの途中に、よ。多分迷い子だと思う。」
「迷い子なんてものじゃない!この子は、これは、こいつは、忌み子よ!」私の知らない単語ばかりだ。まだ迷い子の意味すらわかってないのに。 それに忌み子ってなんだ。嫌な予感しかしない。
「そんなわけないでしょ!忌み子なら私だって気づくわ!」フュエルさんは言い返す。
「いや、確かに忌み子の痕跡はどこにもない。ステータスだってバグってるようなことは一切ない。でもね、このスキルは、このスキルたちは、普通に生活しして手に入れられるものじゃないのよ、それにこれ、《手足》のスキル、Lv15よ。ありえないわ」
「確かに私も疑った。でもカエデはいい子よ。」
「いい子かもしれないけど、今ここで殺しておかないと後々厄介になる。」
そうフュエルさんに言ってから視線をこっちに向ける。
「だから、ごめんね、カエデちゃん?貴方、私に殺されて?」
持っていた杖を私に向ける。
「ごめんね、カエデちゃん」“お師匠様”はもう1度言う。
杖の先端が赤く光る。私はこの世界で2度目の死を感じた。