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フュエルと楓

朝になった。昨日の夜はなんとかバレずに部屋まで戻ることが出来た。だが気になることは山積みだ。迷い子とはなにか。私は何なのか。フュエルさんは何者なのか………上げだしたらキリがない。


今考えていたってどうにかできる話でもない。とりあえずフュエルさんの所へ行くか。


私は部屋から出てダイニングへ向かう。するとあの緑色の髪の毛が見えた。


「おはようございます。フュエルさん」


「おはよう、カエデ、昨日はよく眠れたかしら?」


カエデとは私のことだ。本名は望月楓なのだが

ここの人達にとって苗字という概念が存在しない。 だから名前の「カエデ」で通すことにした。


「フュエルさんが部屋を譲ってくださり、ベッドまで頂いたのでぐっすり眠ることが出来ました」


「そう、それは良かったわ。なら朝ごはんにしちゃいましょ!ごっはん〜ごっはん〜」


「ご飯まで頂けるんですか!?」私は正直驚いた。家を出る前も、家を出たあともまともに朝ごはんを食べたことがなかったからだ。


「何をそんなに驚いているの〜?カエデが期待しているほどのものは出せないよ?それに今日からちゃーんと働いてもらうんだから!それに、ほら、カエデったら昨日はご飯も食べずに寝ちゃったじゃない?」確かに私は疲れていたからか、ご飯も食べずに寝てしまっていたのだ。


出てきた料理は、白いご飯、お味噌汁、焼き魚……これがあの「和食」ってやつ………


私は和食とは一切縁のない生活を送ってきた。だからといって洋食と縁があるかと言われればそうでは無いが………


「いただきます!」私は両手を思いっきり合わせる。それに伴い大きな音も鳴る。


「いただきますって何!?」フュエルさんは私に尋ねてきた。そうか、ここは異世界。私がいた日本との文化は異なっているのか。


「私の故郷の習慣です。ご飯を食べる前に命に感謝するために“いただきます”と言うんですよ」

「へぇ、こ、こうかな?」パチンと音が鳴る。フュエルさんも私を真似してやってくれたみたいだった。


「命に感謝って、なんかいい響きねぇ〜 これから毎日やろうかしら!」などと言っている。私は嬉しかった。私が言ったことを真似してくれる。私の言ったことを受け止めてくれる。初めての経験だった。


私は出された料理をひと口食べる。


ん、んっ、あたた、かい。


なんでだろう、目の辺りが熱い。机に水滴が滴る。


「え、え、そ、そんなに美味しくなかったの?ごめん、ごめんね」必死になってフュエルさんは謝ってくれる。


「ちが、違うんです。美味しい。温かくて、私を受け入れてくれて………」涙を隠そうと必死に堪えるけど次々に出てきてしまう。


そんな私をフュエルさんは後ろから抱きしめてくれた。


その腕からも体温を感じて、更に涙が出る。とっても、とっても嬉しかった。

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