ミツアジ
声劇台本(1:1)
男性1人、女性1人、計2人用声劇台本です。
利用規約はありませんのでお好きな様にお使い下さい。
録画を残せる媒体をご使用の際は、残して公開して下さると大変嬉しいです。喜んで聞きに参ります。
(所要時間20分前後)
キャスト
カツノリ(男):
サユリ(女):
《高校3年生、春》
カツノリ
「あれ……サユリ?」
サユリ
「お疲れ様!」
カツノリ
「今日って何か約束してたっけ?」
サユリ
「ううん、たまたま委員会が長引いてね。
最近一緒に帰れてないなぁって思って」
カツノリ
「そっか…
ごめんな、来週大会だから」
サユリ
「大丈夫、分かってるって。
それに…かっちゃんの邪魔しないって決めてたし」
カツノリ
「邪魔だなんてーー…」
サユリ
「ほら、帰ろ?」
カツノリ
「お、おう…あ、後ろ乗る?」
サユリ
「もー、いつも言ってるでしょ?
自転車の二人乗りは違反なの!」
カツノリ
「はは、言ってみただけだって。
ちょっと憧れてたんだよ」
サユリ
「はいはい、耳にタコが出来る位聞いてるってば」
カツノリ
「好きな子を後ろに乗せてさ、しっかり捕まってろよ、つって、こう…ちょっとさ、当たるんじゃねぇかなーっていう期待とか…」
サユリ
「ホンットに男って…」
カツノリ
「あ、サユリにはそれ、期待出来ねぇかもーー…」
サユリ
「このドアホ!!」
カツノリ
「いって!
おま、鞄で殴るな!」
サユリ
「かっちゃんが失礼な事言うからでしょ!?」
カツノリ
「事実だろー?」
サユリ
「ぐっ…」
カツノリ
「あー、腹減った…」
サユリ
「うん?
じゃあ、あそこ寄る?」
カツノリ
「俺はいいけど、サユリ、ダイエット中って言ってなかったっけ」
サユリ
「うるさいなー、たまにはいいの!
今日の委員会、めちゃくちゃ眠たかったけどちゃんと起きてたから、自分へのご褒美にする」
カツノリ
「それ、当然の事じゃねぇの…」
サユリ
「何だろ、疲れた時って無性に甘い物食べたくなるよねー」
カツノリ
「あぁ、糖分は栄養になりやすいから、体が欲してるとか何とか」
サユリ
「そんな小難しい理屈はいらないって!
食べたい時に食べる!」
カツノリ
「サユリがダイエットに成功する日は永遠に来ないだろうな…」
サユリ
「あーもううるさいなー。
あれ、あのお店、この辺だったよねぇ?」
カツノリ
「んー……看板見当たらないな」
サユリ
「えっと、確か…あぁっ!!」
カツノリ
「閉店のお知らせ、かぁ…」
サユリ
「やだぁ、ここのたい焼き美味しかったのにぃ」
カツノリ
「年中売ってるってのもレアだったしな〜。
まぁでも、しゃあないよ」
サユリ
「はぁ!?
何がしゃあない、なの!?
あたしのこの熱いパッションはどうすればいいの!?」
カツノリ
「どんだけたい焼き好きなんだよ」
サユリ
「…だって、ここは…かっちゃんと初めて寄り道したお店だったのに…」
カツノリ
「…そうだったな」
サユリ
「覚えてるの?」
カツノリ
「そりゃあ…衝撃的だったしさ。
道端でうずくまってるから、具合いでも悪いのかと思って声掛けたら…お腹空いて動けない、なんだもん」
サユリ
「う、ううっ…」
カツノリ
「あの頃はまだお互いクラスメイトだって認識してなかったっけ」
サユリ
「あーそうそう、クラス替えしたばっかりだったもんね。
でもあたしは…声掛けられた時にすぐ、かっちゃんだって分かったよ」
カツノリ
「え?」
サユリ
「かっちゃんって、いつも輪の中心にいて、楽しそうで…
いいなぁ、羨ましいなって、思ってた」
カツノリ
「サユリ…」
サユリ
「あたし、学区外からだからさ。
元々知り合いもいなかったし、1年の頃にやっと出来た友達とは離れ離れになっちゃったし、人見知りだからなかなか馴染めなかったしさ」
カツノリ
「…そうだったんだ」
サユリ
「だからあの時、かっちゃんに声掛けられて凄いビックリした。
あの時はまだあだ名で呼ぶなんて出来なくて、カツノリ君って呼んでたよね〜」
カツノリ
「そうだったそうだった……あっ、サユリ!!!
……あっぶね、何だあの車…」
サユリ
「え、ちょ、かっちゃん…っ…」
カツノリ
「悪ぃ、急に腕引っ張って…痛かったよな、大丈夫か?」
サユリ
「だ、大丈夫、だから…ちょっと離れて貰って…いいかな…」
カツノリ
「…どした?」
サユリ
「あーもう…だから…近いってば!!」
カツノリ
「お、おう…?
何怒ってんだよ」
サユリ
「怒ってない!」
カツノリ
「ちょっ、先行くなって!
また暴走車来たらどーすんだよ」
サユリ
「…その時は……」
カツノリ
「ん?」
サユリ
「…その時は、また、かっちゃんが守ってくれるんでしょ?」
カツノリ
「えっ……
ば、馬鹿言ってんじゃねぇよ!
俺が言ってんのは、勝手に危ない行動すんなって事でーー…」
サユリ
「守ってくれないの?」
カツノリ
「ぐっ……(小声)あーもう、その上目遣いやめろよなぁ」
サユリ
「かっちゃん?
どしたの??」
カツノリ
「しかも無自覚にやってんだから、ホントタチ悪いよ…」
サユリ
「へ?」
カツノリ
「何でもねぇよ!
いいから、大人しく隣り歩いてろ」
サユリ
「えぇ〜、だってさぁ」
カツノリ
「何だよ」
サユリ
「……(小声)自転車、邪魔なんだもん。
せっかく久々に二人っきりなのに…」
カツノリ
「サユリ?」
サユリ
「何でもない!」
カツノリ
「…変な奴」
サユリ
「はぁ?
それ、かっちゃんには言われたくない!」
カツノリ
「なっ、どういう意味だよそれは!」
サユリ
「あーもう、大声出したら余計お腹空いちゃうじゃないの!
責任取ってよね!」
カツノリ
「何でそうなる!?」
サユリ
「あのお店のたい焼きに匹敵する…ううん、それを凌駕する物じゃないと、あたし認めないから!」
カツノリ
「いや、俺が言いたいのはそこじゃなくてだな…
何で俺がお前の空腹の責任取らなきゃなんねぇんだよ」
サユリ
「あっ、肉まん食べたい!」
カツノリ
「もう甘いモンですらないし、てか人の話を聞け!」
サユリ
「かっちゃん、早く早く〜!」
カツノリ
「だーかーらー、勝手に先に行くなっつーの!
ったく、何でもかんでも先走り過ぎか」
サユリ
「ふふ〜ん…ここのコンビニの肉まん、美味しいよねぇ。
最近のコンビニは侮りがたい!」
カツノリ
「はいはい、もう何でもいいよ…」
サユリ
「へへ〜、ゴチになりまぁす!」
カツノリ
「どこから俺が奢る事になってんだっつーの」
サユリ
「責任取れ!」
カツノリ
「店先でそんな事大声で言うな!
誤解生むだろーがよ!」
サユリ
「肉まん早く〜!」
カツノリ
「お前の頭ん中は食い気しか無ぇのかよ。
んーと、チャリは…ここでいいか」
サユリ
「は〜や〜く〜!」
カツノリ
「わーったって」
サユリ
「もうね、口の中が肉まんスタンバイ完了なの!」
カツノリ
「ったく、貸しだからな!
ちゃんと返せよ」
サユリ
「聞こえませ〜ん。
さて、肉まんちゃん肉まんちゃんっと…あぁっ!?」
カツノリ
「うわっ、ちょ、店ん中で奇声上げんなよ!」
サユリ
「あたしの肉まんちゃんが…無いぃ…」
カツノリ
「あー、もう販売終了か、早いな」
サユリ
「うぁぁ…そんなぁ…」
カツノリ
「はぁ…そうガッカリすんなよ、しゃあねぇだろ?
季節モンなんだし、肉まんなんて冬季限定商品じゃん」
サユリ
「そうだけど…空振り2回なんて……」
カツノリ
「もう1回チャンスあんじゃん」
サユリ
「あー、出た!
すーぐ野球に繋げるんだから!」
カツノリ
「言い出しっぺはサユリだろ、空振りって」
サユリ
「あたしは野球の意味で使ったんじゃないもん!」
カツノリ
「分かった分かった、頼むから大声出すなって。
代わりにコイツ買ってやるから」
サユリ
「うん?」
カツノリ
「俺も先週見付けたんだけどさ、ここのコンビニ限定らしいぞ」
サユリ
「へぇ、そうなんだぁ。
でもまだ、アイス食べるには早くない?」
カツノリ
「そうか?
俺年中食うけど…これ美味かったぞ」
サユリ
「んんー…分かった、じゃあ今日は、これで許してあげる」
カツノリ
「何で許す許さないの話になるんだよ…ったく。
買ってくっから、サユリ外で待っててくれ」
サユリ
「へ、何で?」
カツノリ
「自転車の番してて」
サユリ
「え、何、鍵してないの?」
カツノリ
「鍵はかけたけど、この間弟のチャリ盗まれたんだよ。
最近物騒だよなぁ」
サユリ
「なるほどね、分かったぁ」
カツノリ
「すぐ行くから」
サユリ
「はーい!
…さてと…んじゃ大人しくかっちゃんの自転車の番してますかね。
それにしても大っきいなーこの自転車…あたしじゃ絶対跨げないや。
って、当たり前かあ、かっちゃんとの身長差どんだけあると……えっ?」
カツノリ
「買ってきたぞ、サユリ……っ!」
サユリ
「えぇと…あの、困ります…っ」
カツノリ
「すみません、コイツ、俺のなんで」
サユリ
「か、かっちゃん…!?」
カツノリ
「ほら、行くぞ」
サユリ
「えっ、あ…す、すみません、それじゃ」
カツノリ
「………」
サユリ
「…か、かっちゃん?」
カツノリ
「…何だよ」
サユリ
「お、怒ってる…?」
カツノリ
「…何で」
サユリ
「だって、怖い顔してる…」
カツノリ
「…怒ってねぇよ」
サユリ
「怒ってるじゃん!」
カツノリ
「これは!
………怒ってるんじゃねぇ」
サユリ
「…かっちゃん?」
カツノリ
「……ちょっと寄ってくか」
サユリ
「えっ……あ、ここ?」
カツノリ
「アイス」
サユリ
「あっ、そうだね、溶けちゃうもんね」
カツノリ
「ここなら大丈夫だろ。
あそこのベンチでいいか」
サユリ
「う、うん。
あっ、自転車中に入れていいの?」
カツノリ
「大丈夫だろ、昼間よく子供達が自転車の練習したりしてるし」
サユリ
「あー、そだね」
カツノリ
「ほら、アイス」
サユリ
「ありがと」
カツノリ
「よっこらせっと」
サユリ
「ちょ、おっさん臭い!」
カツノリ
「うるせーな、部活終わりで疲れてるんだよ」
サユリ
「はいはい。
あれ、アイス2つ入ってる…」
カツノリ
「俺も食うからに決まってんだろ」
サユリ
「あ、そうだよね。
はい、かっちゃんの分」
カツノリ
「おう」
サユリ
「いただきまーす!
……ん、何これ……!!」
カツノリ
「…口に合わなかったか?」
サユリ
「何これ……美味しいっ!
美味し過ぎるっ!!!」
カツノリ
「…そら良かったな」
サユリ
「…かっちゃん?」
カツノリ
「何だよ」
サユリ
「まだ怒ってる?」
カツノリ
「は?」
サユリ
「眉間に皺寄ってる。
それに、何か返事もぶっきらぼうだし…」
カツノリ
「怒ってねぇっつってんじゃん」
サユリ
「でも…」
カツノリ
「いいから黙って食っとけ、溶けるぞ」
サユリ
「……美味しくないもん」
カツノリ
「おま…さっき美味しいって言ってたじゃん。
美味し過ぎる〜って」
サユリ
「美味しいけど、美味しくないの!」
カツノリ
「意味分かんねぇ」
サユリ
「だーかーらー、そんな顔されてたら美味しい物も美味しくないって言ってんの!」
カツノリ
「あー……いーから、ほっとけ」
サユリ
「やだ!」
カツノリ
「駄々こねんな」
サユリ
「………ごめんなさい」
カツノリ
「…何でお前が謝るんだよ」
サユリ
「あたしが、酔っ払いのおじさんに絡まれてたから…怒ってるんでしょ?」
カツノリ
「ちげーよ」
サユリ
「ちゃんと一人で対処出来なかったから…」
カツノリ
「違うって言ってんだろ?」
サユリ
「あ、じゃあ助けて貰ったのにあたしがお礼ーー…」
カツノリ
「サユリは何にも悪くねぇだろ!」
サユリ
「でも…!」
カツノリ
「…かっこ悪ぃから言わせんな」
サユリ
「えっ……な、何で?
かっこ良かったよ!?」
カツノリ
「はぁ!?」
サユリ
「かっちゃん、少女漫画の王子様みたいだった!」
カツノリ
「……何だそれ」
サユリ
「ごめんね、あたしがキッパリお断りすれば良かったのにね。
ありがと、助けてくれて」
カツノリ
「あーもう、だからお前が礼言う事でもなくて!
……俺が悪い」
サユリ
「へ?」
カツノリ
「…もう二度としない」
サユリ
「え、どういう事?」
カツノリ
「…ぷっ、あはははは!」
サユリ
「ちょっと、何で笑うの!?」
カツノリ
「あー、間抜けな顔見たら気が抜けた!」
サユリ
「ま、間抜けって…酷い!」
カツノリ
「ほら、早く食っちまおうぜ。
アイスは時間との勝負だかんな!」
サユリ
「待ってよ、今何か誤魔化したでしょ!?」
カツノリ
「早く食わねぇと俺が残り全部食うぞ」
サユリ
「それはダメ!」
カツノリ
「はー、何か馬鹿らしくなるわ、お前と話してると」
サユリ
「さっきから悪口ばっかり!
もー知らないっ!」
カツノリ
「早く食えよ、日付け変わるぞ」
サユリ
「そこまで時間かけて食べません!
でも急かさないでよ。
せっかくの美味しいアイスなんだもん、ゆっくり味わいたいでしょ?」
カツノリ
「へいへい」
サユリ
「んん、濃厚で美味しい〜!
真ん中に入ってるのって蜂蜜かなぁ?
うーん、このレモンとの調和はね、もう芸術作品と言っても過言じゃないっ!
……ん、何?」
カツノリ
「あ?」
サユリ
「あっ、これはあたしの分だからね!
そんなに見てもあげないよ!?」
カツノリ
「取らねぇよ。
イイ顔して食ってんなーと思っただけ」
サユリ
「だって美味しいもん!
美味しい物は幸せにしてくれるよねぇ。
う、ううっ」
カツノリ
「どーした?」
サユリ
「美味しいけど、やっぱりまだ外で食べるには寒いかも」
カツノリ
「…そうだな」
サユリ
「は〜、残りは家でゆっくり食べる、すぐそこだし。
帰ろ〜!」
カツノリ
「ん」
サユリ
「…かっちゃん?」
カツノリ
「いや、帰るか」
サユリ
「うん、よっこいしょっと」
カツノリ
「おばさん臭い」
サユリ
「えー?
かっちゃんの真似しただけだもーん」
カツノリ
「てんめ…置いてくぞ!?」
サユリ
「あ、待ってよ〜!」
カツノリ
「早くしねぇと、残りのアイス溶けちまうだろ」
サユリ
「うぁっ、それは困る!!!」
カツノリ
「どんだけ食い意地張ってんだよ…」
サユリ
「どうせ、色気より食い気ですよーっだ!」
カツノリ
「はいはい、お前はそういう奴だもんな」
サユリ
「あ、ねぇねぇかっちゃん」
カツノリ
「うん?」
サユリ
「さっきの…ホントにありがとね」
カツノリ
「あ?
だから、さっきのはお前が礼言う事じゃーー…」
サユリ
「違うの、その事じゃなくて、その時の事だけどそうじゃなくて、ええと……嬉しかった、から」
カツノリ
「何か俺、お礼言われる様な事したか?」
サユリ
「したんじゃなくて…だから、その…」
カツノリ
「何だよ、まどろっこしいな」
サユリ
「コイツ、お、俺のってーー!」
カツノリ
「あ、ほら、家着いたぞ」
サユリ
「…へっ?」
カツノリ
「アイス溶けるから、さっさと食えよ。
俺の奢りなんだし」
サユリ
「(小声)うち着くの早過ぎでしょ…」
カツノリ
「っと…これ、邪魔だな」
サユリ
「どしたの、自転車停めて」
カツノリ
「……サユリ、かっこ悪いし一度しか言わない」
サユリ
「えっ?」
カツノリ
「さっき怒ってたのは、自分に対してだから。
もう二度としねぇから」
サユリ
「自分にって…え、ごめん、よく分かんないけど…」
カツノリ
「だから…っ!」
《カツノリ、サユリを抱きしめキスする》
サユリ
「んんっ…!?」
カツノリ
「……もう、二度と一人にしねぇから、俺とーー…」
サユリ
「か、かっちゃん…これ、どういう意味…?」
カツノリ
「…え、まさか意味分かんないとか言う?
ここで?」
サユリ
「だ、だって、今のって…」
カツノリ
「っ俺は!
好きでもない奴とキスなんてしねぇからな!
だー、もう、帰る!」
サユリ
「あ、ちょっと、かっちゃん!?」
カツノリ
「じゃーな、また明日!」
サユリ
「え、あ、また明日!
……って、何これ…急展開過ぎて、明日どんな顔すればいいのか分かんないよっ!
かっちゃんの馬鹿っ!」
-end-
有難うございました!
感想お待ちしています!