ルシオラ山にむけて
ニゲルはラウジア卿の屋敷に戻り、即ラウジアに合わせてもらっていた。アルタイルの力がないことからまずは神殿を見てみるべきだと考えた。
「神殿はどこにありますか」
「ルシオラ山の山頂です」
「ルシオラ山?」
ホランドがラウジア卿の後ろの窓を指さした。
「あそこですじゃ」
「あそこって? あの大きく白い山?」
「ですじゃ」
ニゲルは窓に近づき少し離れた白い帽子をかぶる山を見つめる。
あまりの遠さにニゲルはいけるかなと不安になってしまう。ニゲルは救いを求めるようにベリルを見ればクスリと笑われた。困った顔をするニゲルを抱き上げベリルは一緒に山をみる。
「俺も一緒に行きますから大丈夫ですよ」
「うん!」
「わしもおりますじゃよ」
「ホランド、大丈夫?」
「大丈夫ですじゃ!あのくらいの雪山なんということはないですじゃ」
老人であるホランドとルシオラ山を見て心配そうな声を出すニゲルにホランドは胸を張って答えた。ニゲルは本当に大丈夫かなと思いながらルシオラ山を見て、自分の心配が先かなとベリルにしがみついた。
山の麓までは馬車でいくということで再び慣れない馬車に乗り込んだ。しかし行きとは違い余裕が出たニゲルは窓にしがみつき外を見る余裕があった。
「ここからは歩きですじゃ」
目の前に続く坂道は鬱蒼としている。緑というより黒に近い葉が道の上を飾り付けていた。ニゲルは幼稚園で見た絵本の魔女の館に続く道みたいだとベリルの後ろからのぞく。ついてきた4人の神官も不気味な雰囲気に顔を見合わせていた。
「オーウェン、フリストはついて参れ」
「「はい」」
ニゲルはホランドの言葉に前に進み出た2人の神官を見た。灰色の髪に緑の瞳を持つオーウェン、金髪に茶色の瞳を持つフリストは緊張したようにニゲルに頭を下げていた。ニゲルはここで気が付いた。神官たちのことをあまり知らないということによくしてもらっているのに酷い気がしてくる。
「えっとよろしくお願いいたします」
ニゲルの言葉に膝をついて返事をするオーウェン、フリストに理解することできるのかニゲルは不安になった。
「じゃあ、コウ。行きますよ」
ベリルが後ろにいたニゲルを抱き上げる。初めから抱き上げられるとは思わなかったニゲルは驚いてしまう。
「歩くよ!?」
「でもこの方が早いですよ」
そういわれてはニゲルは何も言い返せない。いいのかなと悩んだ様子のニゲルにベリルは抱えなおすと豪快に笑う。
「さぁ行きますよ!」
歩き出すベリルにニゲルはしがみつく。
「つかれたらいってよ! 歩くから! ねぇ! 聞いてる、ベリル」
「ほほほほ」
2人の様子に楽し気な笑い声を出すホランドと真剣な表情のオーウェン、フリストも2人の後に続いて暗い坂道を登り始めた。