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神の箱庭の守り人  作者: 白山 銀四郎
自分の神様
6/19

心を許す

 「・・・・・・・・・・・・」

 ニゲルは目を開けて一度見たことのある光景に戻ってきたことを知る。体をお越し目をこすり、ボケた視界をなおしていればとなりの部屋からホランドとベリルの声が聞こえてくる。ニゲルはベッドから滑るように降りると扉に向かいすこし頭を覗かせる。

倒れたニゲルを心配しているホランドとベリルの耳に扉が開く音が聞こえ振り向けばすこし開きニゲルが顔をのぞかせた。普通であればここで手放しで喜ぶことなれど2人は目を越すってニゲルをもう一度見直す。

 目を擦ったところでニゲルの変化は変わることなくあり続けた。

 「ニゲル様・・・・・・・・・・・・その額は」

ホランドのおずおずとした言葉にニゲルは首をかしげて手を額に当てる。ニゲルは特に違和感ないなとこすりながら部屋からでて2人の前にたつ。ベリルは不思議そうなニゲルの手を優しく姿見のところまで引いていく。

 ニゲルの額には赤い筋が前髪からのぞいていた。ニゲルは思わぬ額に目を見開くがすぐにアルタイルだと察しがついた。

 「たぶん大丈夫だと思います」

 「それならよろしいのですが」

ニゲルの慌てていない姿に2人は顔を見合わせニゲル様が大丈夫ならそれでいいかと思うがやはり気になる。

 「ニゲル様少し失礼しますじゃ」

ホランドはそういいニゲルの前髪をかき上げ、息をのんだ。それはベリルも同様であった。

 「「神の・・・・・・・・・・・・紋章」」

 ニゲルの額に浮き出ていたものの全容が明らかになれば、それはこの世界のものが知らないはずもない神の紋章であった。菱形を中心に羽ばたくように細いツタが複雑な文様をニゲルの額に描いていた。ニゲルはその紋様にどこか心が落ち着くような気がした。

 アルタイルにあたらえられたもの、それは何事にも代えがたいものであるとニゲルは自然にそう思う。しかし知らないものは知らないわけでニゲルはかがんで見下ろす2人を見上げる。

 「神の紋章?」

 「あとで書をお持ちしますじゃ。まずはご朝食ですじゃ」

ニゲルはホランドの言葉に頷き、そして姿見をもう一度振り返ると額を撫でて口をほころばせた。朝食だといい背を向けていたホランドは見ることはできなかったがベリルはこのようにうれしそうな表情をされるのかとほほえましく優しく目をほそめた。


 「僕は何をすればいいですか」

朝食が並ぶ机の前でニゲルはうつむきながらホランドたちに問いかけた。ホランド、ベリルは一瞬悲しそうな色を瞳に宿したがすぐに気を取り直してニゲルに優しく言い聞かせるように言葉を選ぶ。

 「ただ健やかにお過ごしくださればよいのですじゃ」

 「ニゲル様はまだお小さい、何かする必要はないのですよ」

 「はい」

 ニゲルは2人の言葉に鼻の奥がツーンとしていた。自分はここにいてもいいんだとニゲルは幸せになる。親戚とは違うんだと本当に心から理解することができた。うつむくニゲルにベリルが横に座り、取り皿に料理を乗せていく。ホランドもコップに水を注ぎニゲルに笑みを向ける。

 ニゲルは目の前に出された皿を受け取り2人の顔をみて頭を下げると料理を口に運んだ。ニゲルは久しぶりに食べるあたたかな料理をかみしめる。ニゲルが食べやすいようにと柔らかく消化によさそうな料理にニゲルはうれしくなる。しかし1つ気になることがある。

 「ホランドさんとベリルさんは」

下から伺うように見てくるニゲルの視線に2人は少し間を開けニゲルにとってうれしい返事をした。

 「「一緒に食べてもよいですじゃ/か」」



 朝食を食べ終わり神殿図書に紋章が書かれた書をとりにいったホランドをニゲルはベリルと一緒に待っていた。ニゲルは話しかけてもよいのかわからず気まずげにお行儀よく膝の上に手を置いている。

 その様子にベリルはつい吹き出してしまった。噴き出したベリルに少し驚き、きょとんとしたニゲルであったがすぐに楽しそうに笑った。ニゲルもベリルも互いに緊張していたことに気が付き、すこし心が落ち着く。

 「ベリルさん、お願い聞いてもらえませんか」

 「なんでしょうか」

ニゲルは笑顔を引っ込めるとお願いしてもよいものか言い出したものの15秒ほど言い出せず、ちらっとみたベリルの表情に言おうと決めた。

 「もっとこう、その・・・・・・・・・・・・話し方を普通? なんといえばいいんでしょう」

ニゲルはもっと口調を砕けたものにしてほしいとお願いしたいわけであるがどういえばいいのかわからずしどろもどろ状態である。そんなニゲルの言葉と態度に察しの良いベリルはすぐに大きく頷いた。

 「ではお言葉に甘えますよ。俺からもお願いいいですか」

砕けた口調に変えてくれたベリルにニゲルは顔を輝かせ、ベリルのお願いを聞こうと体をぴんと張る。その姿にベリルはかわいいなと弟を見ている気分にさせられる。

 「俺のことをベリルとよんで敬語もなしです」

 「・・・・・・・・・・・・」

 「お兄ちゃんと思ってくれればいいですよ」

お兄ちゃんという言葉にニゲルは目を大きくしながら嬉しそうなベリルを見て大きく頷いた。お兄さんと思っていいという言葉はニゲルをとても

 「もう1つ・・・・・・ニゲル様は何とよんでほしいですか」

 「えっ」

 「ニゲル様は我々が勝手によんでいる名前ですよね。名前を呼ぶことはできなくても呼ばれたい名前はないかと」

 ベリルはずっと気がかりだった。小さな守り人が知らないところに連れてこられ知らない名前で呼ばれている現状がとてもとてもかわいそうだと感じていた。ニゲルは考えた。どう呼んでほしいか聞かれればやはり名前である。しかしアルタイル以外に名前を言うも聞くことも許されていない。

 ニゲルは両親のことを思い出し呼ばれない名前に悲しくなりつつも懐かしい記憶の一つを思い出した。

 「コウ」

 これはニゲルが友人や同級生から呼ばれていた今思い返せば大切な自分の一つの名前だとニゲルは思う。

 「ではコウ様ですね」

 「・・・・・・コウがいい」

 ベリルはニゲルのきっぱりとした言葉にクシャっとした笑顔をこぼし頷いた。ニゲルは頷いてくれたベリルに顔をほころばせベリルを見つめていた。そこからの2人は今までと違い柔らかい雰囲気でいろいろな話をし続けホランドを待った。

 やってきたホランドが仲良さげな2人に驚き、うれしそうなニゲルにホランドも笑みをこぼすのであった。とことん守り人、いやニゲル至上主義の神官長ホランドであった。そしてコウと呼びたいが自分は神官長だという葛藤に苛まれていた。


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