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神の箱庭の守り人  作者: 白山 銀四郎
自分の神様
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契約

 ニゲルはなぜかオレンジに染まり赤い惑星のようなものが浮かぶ空間に浮かんでいた。妙に暖かく落ち着く空間に目を閉じかける。しかしそんなニゲルの邪魔をするお方がいた。

 「寝るなよ」

ずんと腹の底に響く声にニゲルが急いで目を開ければ、赤い壁が立っていた。わずかに揺れる赤色はとても柔らかそうでつややかな羽で覆われてできている。じっと見つめるニゲルに楽し気な笑い声が聞こえればニゲルの前の壁も楽し気に揺れる。

「この大きさではまともに会話もできんな」

赤い壁がニゲルの目の前で下に下がっていく。すぐに黒い嘴と赤い瞳が姿を現す。

 「鳥・・・・・・人?」

ニゲルは目の前に改めて姿を見せた声の主を興味深く見つめる。頭はわしのような鳥、体は人型に近く、腕は羽におおわれている。その体は勇ましくたくましいと一目見てわかるものである。

 「どちらでもない。我はこの世界の神である」

そういいながら腕を広げる神にニゲルはそうだと納得する。そして納得する自分に気持ち悪さを感じる。自分の頭をかき替えられているようだと。


知らない神を神であり、どう見てもおかしい神の姿に何の疑問も恐怖も抱かない不思議な自分がいることにニゲルは気がつく。神であるとニゲルの中の何かが訴えかける。

 「混乱しているな。無理もない」

 「・・・・・・・」

 「たまたま見て回っていた地球なるところでお前をみつけた。器の大きさも申し分ない、こころもよどんでいない、そして地球に執着がない。すべてが揃っていた。これは運命であろうと我は思った」

 「・・・・・・」

そのような神の説明で混乱が解けるわけもなくニゲルはじっと神を見つめる。神はその目に愉快そうに笑いニゲルへ距離をつめる。

 「死にかけたところを助けてくれたんですよね」

 「そうなるな。偶然ではあるが」

 「ありがとうございます」

神としては殺してくれた方がよかったといわれるかと思っていたわけであるがこれには驚きである。

 「お父さんやお母さんより長生きするって決めてたんです。唯一できる親孝行? かなって」

照れた中には悲しさをたたえる瞳に神は目をわずかに見開くとニゲルを抱き締めた。神はやはりこのものは器としてもそして自分の宝としてとてつもないと思う。悲しいまでの優しさそしてかたくなさ、苦しい道であろうが耐え抜き突き進む姿はまるで宝石のようだと。


 「ヒロヤ」

 「えっ」

いきなり呼ばれた名前にニゲルはもふもふの腕から顔をあげる。優しい神の瞳になにかをとかされる強制さを感じる。

 「今ならばまだ地球に帰ることができる」

突然そんなことをいう神にニゲルは目を白黒させる。帰れると聞かれてもすぐに帰りたいという言葉はニゲルから出なかった。両親の墓もある。でもこの短い間に感じたぬくもりを話したくない。ニゲルは悩みうつむいていた顔をあげた。

 この鳥の頭を持つ神と離れがたかった。なぜかわからないが離れたくなかったのだ。

 「ここにいたいです」

 「そうか」

 ニゲルの答えに神はニゲルをものすごい勢いで抱き上げた。わかっていた答えであっても口にしてもらえることは嬉しいことである。神がニゲルを守り人きめた時から互いにつながりができていた。それに逆らうことはなかなかできない。本当に帰りたいときだけである。

 「ヒロヤ、我に名をつけよ」

 「名前ですか?」

 「あぁ、誓約するのに必要なことだ。我はお前をヒロヤと呼ぶ。お前も我らだけの名を我につけよ」

 見上げる赤い瞳をニゲルは見つめながら一生懸命考える。急に名前をつけろと言われても困ると一生懸命頭をひねる。難しい顔で考えるニゲルをこれまた楽しげに神は見つめる。大好きだった星空を想像させるきらめく瞳にある星を思い出した。


 「アルタイルはどうですか」

 「アルタイル? どういう意味だ」

 「地球から見える星の一つでわし座の中で一番明るく輝く星の名前」

ニゲルの説明に満足げに頷くとニゲルをようやくおろす。ニゲルは床なのかわからない下の具合に足を踏み踏みと動かす。

 「ヒロヤ」

 「はい」

 アルタイルの呼び声に顔をあげればアルタイルは膝をついてニゲルと視線を一定にしいとおしげに見つめてくる。慣れない視線にニゲルは戸惑いそらしかけるがそらしてはいけないとまっすぐ見つめ返す。

 「この世界の神である我 アルタイルはヒロヤを守り人とし慈しみ、愛することを誓う。ヒロヤは我と世界を繋ぐことを誓約せよ」

ヒロヤは何をいっているのかいまいちわからなかった、しかし口は言葉を勝手に紡いでいた。

 「誓約いたします」

ニゲルは額に当てられる嘴からなにかが注ぎ込まれるのを感じながら意識を落としていった。


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