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神の箱庭の守り人  作者: 白山 銀四郎
二つ目の地
17/19

ドラドの歓迎

 ニゲルは思っていたよりも離れたところに降りたのだと理解した。歩き始めて1時間は経過しているはずだとニゲルが歩くとベリルに提案したがベリルは紐を緩めない。後ろを振り向き荷物をもったオーフェンやフリスト、そして年寄りのホランドをニゲルは見た。自分だけがこんなに楽をしてもよいものだろうかと申し訳なさが心に募る。


  「もうすぐ砂漠都市ドラドが見えてくるはずです」

ベリルの言葉にニゲルは背中の上で首を伸ばした。その様子にベリルはまだ早いと小さく笑った。ニゲルは空の上から見た大きな石造りの都市をみたくて仕方なかった。しかし、問題はニゲルの体が耐えれるかどうかだった。

 アプスが別れ際、ニゲルに渡してた癒しの石がどれほどの効果をもたらすのか全く分からない。ジョルノ領に入った時に感じた不快感は感じないなとニゲルは首にかけた石を握りしめた。これ以上、ベリルたちに迷惑をかけるのは嫌だとニゲルはため息をつきそうになるが飲み込んだ。

 「見えましたよ!」

 「えっ」

 俯いていた顔を上げれば砂漠にそびえる砂漠都市ドラドが姿を目に映った。岩ではなく石でできているわかる色あいには合わない、荒々しい角ばった印象を抱かせる。


  「なんか強そう」

 「戦闘民族だったころの名残でしょうね」

 「戦の跡も消さずにそのまま残しておるですじゃ。中に行けばもっと厳つい都市じゃと思うでしょうじゃ」

 「襲ってきたりしないよね」

 ニゲルはずっと気になっていた。戦闘を得意とするジョルノ領の人々に襲われたらどうしようと気が気ではない。戦闘力が高いのはベリル1人という何とも心もとない状況に、ニゲルを背負っているという何とも言えない状態だ。

 「そこまで好戦的ではないですよ」

 「うーん」

ベリルのフォローを受けてもやはり不安を払拭することはできず、近づくドラドを見続けた。



 ドラドの前まで来たニゲル一行はドラドに入ることができなかった。そもそも門があいていないのだ。ベリルが大きな声を張り上げたが門が開くことはなく、門の上から矢を構えられる始末だ。

 「立ち去れ! よそ者は一切入れない!」

 「・・・・・・わかりました」

ベリルとホランドは目くばせすると上から見下ろす門兵に背を向けた。念のためホランドが結界をすぐに晴れるように身構えていたが背に矢を射かけられることはなかった。



  「どういうこと」

 「わかりませんじゃ」

 「ただ事ではないですね」

大きな門が小さな扉程度の大きさになったころニゲルたちは足を止めて振り返った。どう考えても普通ではありえないことが起きている。勝手に交易や流通など人の出入りを閉鎖することは禁止されている。そのようなことをしていることがばれれば、反逆の意があるとして取り調べを受け罰を受けることになる。

  「確か領主は御病気でご子息が政務の指揮を執っていらっしゃるそうじゃ。もしかするとそのご子息には反逆の心があるのかもしれませんじゃ」

 「中の様子を見ることができなければどうすることもできませんよ」

頭を突き合わせニゲルには難しい話をする4人にベリルの肩に顎を乗せてニゲルが口をはさんだ。 

 「ドラドに入らず神殿にいけないの」

 「それがここだけはドラドの中に神殿があるですじゃ。それも元ドラド王宮の中心ですじゃ」

 「えっ・・・・・・だって目立たないためにこの格好で隠れてやってきたんじゃないの」

ニゲルは自分たちの服を指さす。

 「普段は王宮は解放されておりますじゃ。神殿は祈りをささげる者たちが訪れる大切な場所ですじゃ」

 「祈りを捧げに行くふりをして中に行こうとしていたんですよ。しかし、こうなると」

 ニゲルは小さくなったドラドを見つめた。どうにかして神殿に行きたいとニゲルは成長中の小さな頭を必死に使い考える。考えたところで何か浮かぶわけもなくうなだれたが、あることを思い出した。


  「あの船の人たちは大丈夫かな。あの船はどこにつくの」

 「・・・・・・」

ニゲルの問いに珍しく誰もすぐに答えなかった。そのことにニゲルは嫌な予感を覚えた。

 「ねぇ!」

 「あの船は途中のラシヤ船着き場に止まり、最後はドラド地下洞窟船着き場につきます」

 「今ってドラドはほかの人、入れないんだよね! あの人たちどうなるの!」

ニゲルはホランドの背中で慌てていた。4人とてなんとかしたいと思うが、すでに船を離れてからじかんが経過し今から川に向かっても間に合わないことは明白だ。

 「じゃあ!」

 ニゲルがアプスを呼ぼうと提案しようとしたときベリルがニゲルの口をふさいだ。ニゲルは突然のことに目を瞬かせたが、視線を横にずらせば警戒しているベリルの顔があった。その表情にニゲルは体を小さくし、ホランド、オーフェン、フリストも油断なくベリルが睨みつけるほうに構えた。


 小高い砂丘の向こうから現れたのはぼろぼろのローブを纏った人間だった。人間は顔を隠していた布を取り去ると人懐っこい笑みを浮かべた。

   「ようこそ」

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