コント『神経質な銀行強盗』
プロット帳に昔書いていたショートコントネタから、ゲラゲラコンテスト用に仕上げました。
場所はとある銀行。
登場人物は銀行強盗の犯人と、説得するために駆り出された警部。
どこからともなく、テレビのレポーターの声が聞こえる。
「犯人は刃渡り16センチくらいのナイフのような物を所持していて、支店長を人質にとって銀行内に籠城している模様です」
警部が拡声器を使って犯人に話し合いを試みる。
警部「犯人に告ぐ、犯人に告ぐ、今すぐ凶器を捨てて出て来なさい!」
犯人「出て来なさいと言われてすぐに出ていくような奴が銀行強盗なんかするわけないだろー!」
警部のもとに犯人の情報が回ってくる。
警部「そうか!犯人の詳しい情報がわかったか!なになに……身長175センチくらい、年齢は30代後半、テレビを見て事件を知ったという友人からの情報では、インドカレー屋でアルバイトをしている、か。よーし!でかしたぞ!」
いきなり犯人が大声で叫んだ。
犯人「おい!おいこら!そこの警察!間違った情報ばっかり好き放題言ってんじゃねーよ!」
警部「え?」
犯人「だから情報が間違ってるって、言ってんだよ!」
警部「いや、でも、最新の情報によると……」
犯人「175.5!!」
警部「はい?」
犯人「だ・か・ら!身長は『175センチくらい』じゃなくて175.5センチなの!」
警部「いやいや、0.5センチくらい……」
犯人「その0.5センチが大事なの!」
被せ気味に犯人が叫ぶ。
犯人「あと30代後半とか言ってるけど、オレまだ23だからな!」
警部「だいぶ老けて見えるな……」
犯人「ちょっと気にしてるんだよー!」
警部「あ、気にしてるんだ」
犯人「それにオレのバイト先はインドカレー屋じゃなくて、ネパール人経営のスリランカカレー屋だから!カレーだからってなんでもかんでもインドカレーって言うの、いい加減やめた方がいいぞ!」
警部「あ、すみません」
犯人「あと、さっきテレビで『犯人は刃渡り16センチくらいのナイフのような物を所持して』とか言ってたけど、オレの持ってるコレ、刃渡り16.5センチの三徳包丁だからな!」
警部「いちいち細かいな!」
犯人「お前らが大雑把すぎるんだよー!」
警部「そんな事はどうでもいい!それより支店長は無事なのか?!」
犯人「どうでもよくない!0.5センチって、だいぶ違うんだからな!ナイフと三徳包丁ってだいぶ違うんだからな!」
警部「わかった!わかった!わかったから!支店長は無事なんだろうな?!」
犯人「支店長ってあの逃げ遅れた人質の事か?あの『みんなにはカツラだって事を必死に隠してるけど、どう見てもヅラ頭だから、たぶん全員が気づいてるんだけどバレてないと思ってる』人質の男なら、あっちでカツラが取れないように頭を押さえてるぞ!」
警部「無事じゃなくなっちゃうから、大声で言うのやめてあげてー?!」
犯人「オレは誰にも危害を加えるつもりはない!成り行きで人質にしてしまっただけだ!それよりも!!」
警部「今度はなんだ?!まだ何かあるのかー?!」
犯人「オレの友人だと言っている情報提供者ってのは、もしかして渡辺の事かー?!」
警部「そうだ、渡辺さんの事だー!」
犯人「その渡辺の事だけどなぁー!」
警部「渡辺さんがなんだー?!どうしたー?!」
犯人「オレがアイツを友達だと思った事は一度もないからなー!!」
警部「仲良くしてあげてぇーー!!」
舞台暗転。
了。