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ファフロツキーズの悪魔  作者: 飯田三一(いいだみい)
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幼女と手を繋いで歩いているという一文から文章を始めないといけないことに危機感を覚えているのだが、しかし続ける。


吃逆のようなものもが、大分治り、徐々に会話も投入してみることにした。


「ねえ、私達流石に互いの情報知らなさすぎじゃない?」


この時を待っていた。今しか聞き時ないでしょ。


「え?すいません。聞いてませんでした。」


この至近距離で伝わらないの!?


「だから、私達流石に互いの情報知らなすぎだから、情報交換しない?って。」


「はい、しかしまず一軒目をここにしようかと考えておりまして。」


そしてまたお預け食らうんですね。


「わかった。この端正な住宅街の一角にあるこのいかにもファミリーが住んでそうな一軒家を調べるんですね。了解です。」


入る家を考えていたから、さっきの反応も鈍かったのね。いいやもう。今度で。


「あれ、鍵空いてます。」


いや、


「インターホン押す前にドアの確認してんじゃねえ!」


「あぁ、すいません。」


いや。幼女に求めすぎた。


「いや、知らなかったな。すまん。」


「流石にそのくらいの教養はありますよ!ただ…」


「ただ?」


「ただ今みたいな非常事態だったら勝手に開けても怒られないかなって」


そう言って目を小なりと大なりにして、舌を出して、頭に拳を置いた。


あざとさが何かしらのボーダー通り越して只のアホになってるぞ。クライン。


しかしまぁ。動機が足りないかと言われればそうではない答弁だった。その顔しなけりゃ完璧だった。


しかし、


「ちょっとガラが悪い人が居たりしてキレられたら怖いだろ?」


「むむ、確かにそうですね。気をつけます。」


しかしこの子は何歳なのだろうか。読めない。微妙に大人っぽいところはあるのに、たまにルーズなことがあったり。そのくせ敬語が乱れることは無いし。


まあ考えても無駄か。いつでも訊けるのにタイミングとか狙ってるから進まないんだ。


「あの、私た——」


「服だけっぽいですね。もぬけの殻です」


タイミング狙ってるんじゃ無いのかこいつ!


ってちょっと待て。


クラインの手を離してしまうほどの大発見をした。


子供服だ。子供服が落ちてる。しかも女の子のそれだ!


「え、子供服に欲情してるんですか…」


急に生ゴミを見る目で見だした。


「待て、発想が走り幅跳びしてるから待て」


「じゃあなんで幼女服をそんなテンション爆上がりみたいなので取りに行ってるんですか。私の発想は精々大うさぎ跳び程度しか飛んで無いですよ。」


「幼児服を幼女服に言い換えて犯罪臭を掻き立てるのをやめろ。間違ってないけれど。」


「いちいち…えーと」


「7だ」


「それ時報でしょ」


知ってたか!ってそうじゃ無い。


「さっき私が話した仮説の中にあった、10代のみ消えていない説がしっかり否定されたんだよ。」


「あぁ。そうですね。」


たまたま近くにあった固定電話の前で受話器上げていたクラインがその手を下ろした。


本気だったのか?


「だからその顔のラインに合わせて作られていて、それでいて綺麗に持てるその黒光りしたものを元の位置に戻そうか。」


「普通に受話器って言ってください。そういうの回想で言ってもらうのは自由ですが口に出されると気持ち悪いです。」


非常に刺さるお言葉を毒たっぷりで刺されたおかげさまで、一発ノックアウトであった。なにこの子。アホキャラかと思ったら毒舌キャラ?そんな誰も居ないからって一人で何役もやらないで良いんだよ。


「言葉で床にひざまずく人初めて見ました。」


ああ、しまった。思わず跪いていたようだ。


「というか話から離れすぎでは?」


「そうだ、まだ答弁が終わってないんだ。何故女の子もので反応したかといえばだな、」


「えっ、やっぱりそこに反応してたんですか…」


「違うからな!…私が今まで別れるまで生きて出会った人間が、私より年下の女の子だけだったんだよ。だから、自分は例外だったけれど基本はそういう子が生かされているのかなぁと思ってはいたんだけれど…って感じだ。」


「でもまだこの服の子が女の子だって確定はしていませんよね?」


「そうだね。私みたいなケースもあり得る…」


「自分で言うんですね…」


「このファッションスタイルに誇り持ってるんで。」


「はあ」


あからさまに適当に納得するのは一番辛かったりするからやめてくれ…


「兎に角、ここには生きている人居ないっぽいですし次行きますか?」


「そうだな。小さな女の子が居そうな家を狙っていこう。」


「危ない。」


「うん。分かってて言った。」


「しかし、」


クラインが合わせてくることを予想して合わせにいった。


「間違えてない!」


一人で言った。言えよって目でアピールしたやつみてただろ!…まあいいや。


「今の間違えてない!ってところの変な抑揚なんですか?」


微妙に恥ずかしいが赤裸々に語ってやる。


「えっと。合わせてくれるかなぁ?って。」


「流石に無茶振り過ぎるのでちゃんと言ってからそれしましょうね。」


それは興ざめってもんだろ。


「いや。なんかドラマとかでよくあるじゃない。ああいう唐突でも息ぴったり!みたいなやつ。あれがしたいんだよなぁ。」


「まあ気持ちはわかりますが現実ではほぼ不可能ですし、この形式でそれしてもあんまり映えないです。」


「まあ、そうだな。」


正直自分の中ではもういいかで解決していたので、適当な返事になってしまった。


「もう隣にすぐ行っちゃいますか?」


「そうしようか。より多く回るにはそっちの方がいいかも」


隣の家は、玄関が二階にあるようだった。自分の家がそうじゃないこともあり、少しドキドキする節があった。


「インターホンから。ですよね?」


「ああそうだ。その方が安全だ。」


インターホンをクラインが手を上に伸ばして押す。少しこのインターホン、つける位置が高い気がする。


返事はない。


「鍵は?」


インターホン押してから1秒反応しないとドアをもう狙っていたクラインに聞いた。イヤイヤ期みたいな感じでドアあけたい期みたいなのがあるのだろうか。


「閉まってます。」


少し残念そうだった。


「窓割って入っちゃいますか?」


「やめておこう。」


少し守りに入ってしまった。


いや。イモってしまったという言葉の方が正確だろうか。


とにかく物怖じしてしまった。


しかし何故そういう人を芋に例えたのだろうか。緊張している人に、人は芋だと思えばいいとよく言うが、それが関係しているのだろうか。


「何ですかそんな芋みたいな顔して。」


「思考が読まれてた!?」


「え?何言ってるんですか?」


困られてしまった。


「とにかく窓割らないなら次行きましょうよ。」


「なんか…申し訳ないです」


ほんと、ほんとすいません。


そうして階段を降りて、また鍵が開いてそうか、人がいそうか、”幼女が住んでいそうな”家を


「なんか変な事考えてません?」



「やー特にはない…かなぁ?」


「…」



「そ、そういえばさっき言ってて気になったんですが、いいですかディンさん」


そう呼ばれたの初めてじゃないか?


「はい、何ですか?」


「何でそんな格好してるんですか」


クラインの火の玉ストレートに私は咳き込むしか無かった。

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