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第一話 北海の少年

 ここは滅びた世界。どこまで行っても突き抜けるような青空と、澄み渡った空気と、だだっぴろい灰色の世界が広がったり、真っ赤だったり、真っ青だったり、はたまた起伏の大きな真っ白な惑星の地球だ。


 平和な世界(まっさらわーるど)。である。


 さて、話を始めよう。私には名前が無いんだ。紹介するまでもない。

 聞いてくれると嬉しいぞ。消えていく私の記憶のカケラは君が持つといい。

 2234年日本における夏至の日にその戦争は勃発し、3年後、世界の大半の国が滅亡するという形で幕をとじた。その最中に用いられた旧時代の爆弾によって戦争の終了に拍車をかけただろう。ただ、代償は大きかった。国が滅亡するとともに、環境の劣悪化によって、住める環境がほとんどなくなっていた。この島以外は。


 晴天の元、談笑は行われていた。

「ここでも儲けられそうだな。」

 顔をにやつかせながら一人は言う。

「ああ、これなら順調だ。ここにあの爆弾が落ちてるとは思わなかったな。これは、すばらしい幸運だ。」

 また一人は、あまりの喜びで顔が崩れ。

「その、爆弾のせいで私たちも即死級の病気になってるのは忘れないでね?開発者さん」

 ある一人はきついまなざしで冷静に見る。

「あれは、仕方ないだろ。諦めてくれ。」

 目線に本格的な痛みを感じるまた一人は、手を挙げて降参したかのように言った。

「そんなことはいいじゃないですか!またお金持ちで、すばらしいことができそうですよ!?」

 更に一人は、目を子供の用にキラつかせていた。その小さな背丈で。……普通の子供である。

「そこまで、興奮するな……どうせ、ここでできることなんて少ないんだ。金の価値なんざほとんどないさ。」

 最後に円卓に座った中で影をひそめた一人は言う。

 この世界が確実に終わって、価値観が崩れているというのに何を喜べるというのか……

 それは、その場の誰もが分かっていることだった。

 そして、答えもある。

 ただ、それを言う必要性などという物は……あるわけが、ないのだ。



 その5人はもう、他の場所では見ることのできない青空を眺めながら青空のもと暗い暗い会談を繰り広げていた。

 いや、傍から見れば暗くはないだろう。少し、不思議なだけだ。ただ、周りの背景がおかしかったと言えよう。

 その空は、澄んで美しい青色の空だった。余りにもきれいすぎた。

 とても可愛い美少女をまるで人形のようだと言うように、


 その空はまるで絵に描かれているかのようだった。




 時空飛ばして恐らく2258年、今日は休日である。学校というものが存在している以上休日はある。

 ただ、大人のための休日がないことは……すでに、諦めていたことでもあった。

 だから、子供たちは遊ぶしかないわけである。

 そこの島で何ができるかって?

 それは、工夫次第……ってやつだ。

 さて、少し綺麗なところも見せないといけないな。

 所変わって島の北の海岸である……


 一人の少女と離れたところに一人少年が走っていた。

 彼女は後ろに呼びかけた。

「早く来なさいフレラ!今日は海がきれいよっ」

「あぁーーーまってぇぇーはやいよぉ……おねーちゃーーん」

 前を走る少し背丈の高い少女と、それに追いつけないでいる小さい少年。

 少女の方がルピナス。僕のお姉ちゃん。それで、今追いつけないで泣きそうな気分なのがシェフレラ。

 お姉ちゃんにはフレラって略される。僕からしても言いにくい名前だと思うんだけど、母親が付けてくれたこの名前は好きなの。



 それはそうと、僕はあまり運動神経が良くなくて、お姉ちゃんが走っちゃうと追いつけない……。

「もう……ちょっと待っててあげるから。おいで。」

「っ……うん。ありがと。」

「この海。どう?綺麗でしょ?」

「はぁ……はぁ。…………うん、そうだね。きれい!この海はきれいだねお姉ちゃん。」

「ほかの所は全部汚くて泳げそうにもなかったけど、ここならできるかも?!泳いでみる?フレラ。」

「お、およぐのぉ?」

 僕が泳ぐのは苦手……いや、運動全般苦手なのはお姉ちゃん知ってるはずだけど。

 他の場所の海はなんだか、黒ずんでいたり、茶色だったり、泡が浮いていたりしたけど、ここは澄んだ青色。

 きっと、泳げたら気持ちいんだろうなぁ……


 僕の答えを聞く前にお姉ちゃんは海に向かって走っていた。

 綺麗な水……好きだもんね。お姉ちゃん。

 そっとその水に手を浸していた。

 そして、振り返って僕に叫び掛ける。

 これだけ時間あったにも関わらずまだ追いついていないの、僕。

「この海、ちょーーつめたいぃ!」

「泳げる温度じゃなさそう……?」

「駄目よ!だめだめ!ここで泳いだら凍えちゃう!」

 全力で否定してた。本当に冷たいんだね。

 僕はへとへとになりながらようやく海岸についた。

 そして、海を見渡す。

「でも、本当に綺麗……」

 言葉が漏れちゃった。でも、本当にきれいだった。海水の癖に綺麗だなんて。

 真水なら、飲めたのかな。少しだけ、口に含んでみようかと思った。けど、よくよく考えたらほかの汚い海とつながってるんだよね、見た目だけ綺麗なのかも。

 そう思ったら、飲みたくなくなった。

「ね、そうでしょ!?でもまぁ、泳げないけど……」

 まるで、自分が作った海だというかのよう。流石にお姉ちゃんでも、海は作れないよ。


 僕も水に触れてみる。

 つ、つめたい……これは、できるできないの前に泳げなさそう。

「今は、春だから駄目なのかな。夏にまた来てみよう?お姉ちゃん」

「そうだね。フレラ。その時までに泳げるようにしよっか?」

「い、いやだぁーー。無理。無理だからね!?」

 全力否定。

「大丈夫大丈夫、今度はちゃんとこのお姉ちゃんが教えてあげるよぉ~」

「にやにやしてるお姉ちゃん怖い。」

「ヒッ……ごめん。」

 さっと身を引いたお姉ちゃん。人付き合いはうまいけど、極端に、嫌いになってほしくないって気持ちがつまってる。

「そ、そんな顔しないで!本気じゃないから」

 顔も青ざめて、もっとこわかったけど、それを言ったら今度は白くなる気がする。

「そ、そうだよね。私のことをフレラが怖がって距離置いたりしないよね。」

「そんなことしないから、そんなに怖がらないでよ……」

「怖がらないであげるから、お姉ちゃんと練習、しよ?」

 そう誘ったお姉ちゃんは卑怯だと思う。

「し、しかたない……ね。で、でも今度は溺れないようにしてよ!」

「そこは大丈夫よ。今度はちゃんとペースとか考えるから。……溺れかけても助けるから。心配しないで。」

 かつて、お姉ちゃんと練習して死にかけた記憶が思い浮かぶ。多分4歳。かつてってほどでもなかったね。そのせいで、僕のお姉ちゃん好きは一瞬消えかけたっけ。命の危機なんだもん、しかたない

 僕は運動が苦手なのは、さっき言ったっけ。

 だから、お姉ちゃんと一緒に泳ぎに行ったときに上手く泳げなくて、

 姉ちゃんが、わたしがじきじきに教えてあげよーぅ。なんて言って。

 教えてくれたのはいいものの、

 僕は足をつって、お姉ちゃんにしがみついて、そしたら、お姉ちゃんも沈み込んじゃって、二人溺れかけて……それで、

 お姉ちゃんが一人だけ、水面に行ってから僕の手を引いて息を吸わせてくれた。こういう感じだったと思う。



「帰ろっか」

 僕が物思いにふけっていたら、お姉ちゃんはそう切り出した

 思い出にふけっていた僕は上にあるお姉ちゃんの顔を見つめる。

「そうだね、何も、することないし」

 そう言って、名残惜しむかのように海岸を一瞥した時の事。

 お姉ちゃんが声をかけてきた。

「フレラも気づいた?」

「んみゃ?」

 上から覗き込んできた姉に驚きながら肯定の返事。

「もしかして、あの船?」

「せーかーい!さすがっ!良く見てるね。フレラは。」

「先に言ったのはお姉ちゃんだけど。まぁ……いっか。見にいくの?」

 視線の先にある、この辺りでは見ない船の事を指して言う。

「もちろんっ!しないわけにはいかないでしょ!いくよー。フレラ―。」

「はーい?ま、また走るのぉ~!?」

 また走り出したお姉ちゃんについていく。……また引き離されーるー。まってーよぉー。

 口に出すには空気がたりなかった。

 息をっ……するっ……ひまがっ!ないっ!

 そんなに遠い訳ないのに、砂に足を取られて上手く走れないっっ!

「っ……あぅ」

「また、わたし走っちゃったね。フレラ、大丈夫?」

 膝に手をあてて、再び息を切らした。砂の地面は僕には辛すぎる。

「大丈夫っ。さっき走ったから体が慣れてるよ。」

 そう強がったけれど、足も声も震えてる。

「それより、お姉ちゃんその中身見た?」

 頭突っ込んでみてるお姉ちゃんに聞いてみる。

 まるで、頭が船に食べられてるみたい。

「見えたよ!中に人……こ、子供が一人だけ……倒れてるみたい。」

「お姉ちゃん。どんな子供?ちょっとまって、そっち行くから。出してみよ?」

 どんな子供なのか気になる。船の中に子供が一人だけ……って何だか『みすてりあす』一瞥(いちべつ)

 そして、覗き込んでみようと……したけれどお姉ちゃんに止められた。

「大丈夫、私一人で、あの子をだせると思うわ。」

「どうしたの?」

 どうして、止めたの。っていう意味を込めてお姉ちゃんに尋ねる。ちょっとだけ、声色が堅くなっていたのを感じていたけどそれは、すぐに消えてしまった。止められる理由が良くわからなかった。けど、お姉ちゃんがダメと言うなら、ダメなんだよね。僕はそうして納得する。

 そうして、お姉ちゃんがその子を引きずり()()()()出した。

 お、重そうな子供。男の子……かな?

「どうするの?お姉ちゃん。うちに連れて帰ってみるの?」

「そうするつもり、今は寝てるだけみたいだし。」

 なんだか、お姉ちゃんの声が低く聞こえた。少しだけ、顔を隠しているようにも見えた。

 何か、隠してるかのように見えた。いや、きっと本人が隠しているつもりになっているだけなのかな。僕には何か隠してるのは分かってるから、意味ないのに。知らせたくないことがあったのかな。


 ……もしかして、あの船には、何かやっぱあるよね。気になる……。

 もう一度覗こうとすると、いきなり首根っこをお姉ちゃんにつかまれて苦しく肯定(こうてい)なる。

「んんッ!?」

「ごめん。早く帰ろ?」

 何だか、お姉ちゃん怖いよ……?

「う、うん……帰ろっか。その子、僕も持つよ。一緒に抱えようか?」

「んあ、ありがとうね。フレラ。」

 ふと、持ち上げるときに上を見上げると、

 真っ暗とは言えないけど、暗い暗い灰色の空だった。

 もし、これが何かを暗示するとすれば、破天荒だろうけど、

 こんなのいつものことだよね。

 なんて言って、すぐに前に歩き始める。家へ。


 再び私だ。

 喜ぶと良いぞ。おい、確かに子供ばっかだが、そこに悪意はない。

 彼らの始まりを示しただけである

 遊びに来た海にまさか子供がいると思っていなかった彼らは好奇心で彼をお持ち帰りし、とてつもないこと……をせずにさっさと寝かせてあげた。

 ただな、その子が原因で、本当のことに気付くのはもっと後の話。あの時は面白かったと教えてあげよう



私こと、カm……じゃない。

このナレーターが時々かっこいいこと喋ってやるぞ。惚れても良いんだゾ☆


すまない。今のは悪意はないんだ。

ちょっと、あの二人のあどけなさに洗浄され過ぎたかもしれないな……

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