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ビビリですが怪異退治はナイフ縛りが基本です  作者: RYO
第一章 鎧武者とかチョー余裕なんですけど(涙目)
7/17

1-6

 思わず紅が古谷の顔を見上げると、彼はこの状況なのに笑っていた。さすがに慣れたものなのか、悲鳴すら上げない。

「す、すご……い……?」

 驚嘆の声を上げかけて、紅は気づいた。

 古谷は笑っているのではない、“笑うしかない”のだ。悲鳴を上げないのも単に固まってしまっているからである。

「ふ、古谷さん!?」

「……はっ!」

 紅の呼びかけで古谷はようやく意識を取り戻した。そして体と声を震わせながらなんとか言葉を発する。

「だ、だだだだからこここういう状況にもなんらかの思惑があるかもしれないってことででで――」

「そ、そういうのはいいですから!」

「と、ととととりあえず…………どうしよう」

「いや私に聞かないでください!?」

 そんなやり取りをしている二人を、悠長に鎧武者たちが見守ってくれるはずもなかった。

 金属音を響かせながら古谷たちの方へと向かってくる。

「ど、どうするんですか!?」

「――あぁもうくそっ!」

 紅の言葉に古谷がどもりながら指示を飛ばす。

「と、とりあえずここで待ってろ! 前はいいから後ろを警戒! 挟み撃ちにされたら大声上げろ! 分かったな!?」

「わ、わかりました!」

 紅の返事に、もはややけくそといった様子で古谷が叫ぶ。

「よっしゃいくぜぇ!」

 そして古谷は走り出した。

 鎧武者たちと古谷、両者の距離はすぐに縮まる。

 当然ながら古谷が構えるカランビットよりも、鎧武者たちの構える刀の方が先に間合いに入ってしまう。

「…………!」

 鎧武者はまっすぐ振り上げた刀を、そのまま古谷へとめがけて振り下ろす。

 そのまま突っ込めば文字通りの一刀両断にされるところを――古谷は僅かに足運びのタイミングをずらして回避した。

 刀の間合いのすぐ外、一瞬だけ立ち止まるような感覚で回避した古谷の眼前を、掠めるようにして刀の切っ先が振り下ろされる。傍から見れば危ないところだがプッツン状態の古谷はまったく動じない。

 そして古谷は鎧武者が次の行動に移る前に、前進する勢いを殺さないまま飛び込むようにしてカランビットの間合いに鎧武者を収める。そのまま間髪入れずにカランビットを右から左へ振り抜いて、鎧武者の首を深く深く切り裂いた。切れ味と速度が合わさったその一撃で胴体から半ば切り離された首を抱えるようにして、鎧武者は膝から崩れ落ちる。

 鎧武者を瞬殺した古谷だったが、まだ終わりではない。

 一体目の鎧武者の死体を踏み越えるようにして二番手の鎧武者が放った袈裟切りを、今度は僅かに足運びを早め左斜め前方に踏み込むようにして避ける古谷。そのまま鎧武者の脇を走り抜けざまに首元をカランビットで一閃。倒れ付す二体目の鎧武者に一瞥すらくれずに後方の鎧武者へと襲い掛かる。

 ほんの少し反応が遅れた鎧武者が振り下ろす刀、そのタイミングに合わせカランビットをアッパー気味に突き上げるようにして籠手の隙間に突き刺す。一瞬で戦闘能力を奪われた三体目の鎧武者に対して、しかし古谷は容赦せずに喉元をカランビットで一閃して確実にトドメを指す。

 さらにその鎧武者に渾身の前蹴りを放って後方に吹き飛ばした。

「…………!?」

 吹き飛んできた仲間に巻き込まれた一体が仰向けに倒れる。化け物でも仲間意識はあるのか思わずそちらを見てしまった鎧武者がハッと視線を前に戻すが、もう遅い。

 すでに古谷は間合いに入っている。

 首をバッサリと横一閃、さらに倒れた鎧武者が起き上がろうとしているところに振り上げた足を思いっきり叩きつけて、首の骨を折る。

「…………!?」

 あっという間に五体も倒されて、残った鎧武者たちに動揺が走った。ジリジリと後方に下がろうとする。

 だが明らかに慣れている相手に対して精神的に気圧された時点で彼らの敗北は決定していた。

 彼らはせめて、玉砕覚悟で突っ込むべきだったのだ。

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