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第二十八話 似たもの同士の邂逅は果たされませんでした

話の切れ目の関係で本日の投稿はやや短めです。

ご了承ください。

「いや、今回のことは偶々というかなんというか。結局森まで行って帰ってきただけに等しいのにそんなに大金を頂いてしまっていいんですかね」

「……アッシュちゃん、気持ちはわかるけど、ここは貰っておくものよ? 確かに依頼内容はゴブリンの討伐とゴブリンが依頼人を襲うようになった原因の調査だったけれど、その本質は依頼人の身の安全の確保。結果を見ればこれ以上の結果は無い位に条件を達成できているじゃない」


 そこまで柔軟に物を考えてくれる依頼人ばかりでもないけどね、と付け加えつつも、マヤリスはブルーノが良いと言ってるんだからそれで良いのだ、とあっけらかんと答えてみせた。


「そういうことですよ。それでは、依頼表にサインしますね。……これでよし、と」


 そう言うとブルーノは、依頼表にさらさらとサインを書き加え、アッシュに渡した。これでこの依頼表をギルドに提出すれば、依頼人であるブルーノが同行せずとも依頼達成の証となるという寸法である。


「はい、確かに受け取ったわぁ。……とはいえ今回はちょっとケースがケースだから、差し支えなければギルドまで一緒に来てもらえるかしらぁ? これだけ特殊なケースだとどの道後でギルド職員が詳細を確認しに来ることになるから、それなら一緒にギルドまで行って依頼人としてあれこれ証言してくれるとありがたいのだけれど」

「ははっお安い御用ですよ! 皆さんと一緒に行動すれば他の冒険者さん達に怯えなくても済みそうですしね!」


 そんなわけでブルーノ同伴の元、魔窟ギルドまで戻ってきた一行だったのだが。


「……というわけでゴブリンを倒すことはなかったけど、ブルーノさんの身の安全は保障されたというわけなんです」

「結果だけを見れば考えられる限り最善の結果をもたらしたと言えなくもないですが、アッシュさん達はどうしてこう、普通の結果に終われないんですかっ! 常識ぶった面しておいてそういう所だけはしっかり魔窟の冒険者じゃないですかぁっ!」


――案の定エリスは頭を抱えることになり、マヤリスは愉悦の笑みを浮かべるのであった。



「それにしても、これで5000ペロか。ブルーノさん、本当に調査費用最大日数分の報酬の上乗せ、良かったんですか?」


 ゴブリンの討伐で1000ペロ、それに加え調査にかかった日数に応じて1000ペロ。日数の上限を4日としていた為、本来であれば1日分1000ペロの報酬で会った所を3日分の調査費用を上乗せする形で手にすることとなったアッシュは、やっぱりちょっと貰い過ぎなのではないかという気になってしまっていた。


「はは、いいんですよ。こう見えてあの森に移り住むまではそこそこ良い家を持っていてね。森に移り住む時に全部売り払ったからお金だけは余っていたんだ。どの道森で暮らしていく分にはほとんどお金も減らないしね」

「そういうことならありがたく。もう大丈夫だとは思いますが、また何かあればいつでも言って下さい。大根達の様子も見に行かなきゃいけないので、定期的に顔出しに行きますよ。」

「そうしてもらえるとこちらとしてもとてもありがたいよ! やっぱりローブで顔を隠さなくても、怯えなくても普通に会話が出来るって素晴らしい! 君たちさえよければいつ来てくれたって歓迎するよ」


 そう言って笑うブルーノに対し、アッシュは実は初めから気になっていたことをついでとばかりに投げかける。


「そう言えば、魔窟で不純喫茶ガチムチゴブリンってお店知ってます? あそこのマスターも人間であることが不思議な位のゴブリン顔なんですよ。もしかしたらブルーノさんの家族や親せきだったりしないかなって」

「いや、そんな話は聞いたことが無いなぁ。そもそもボクも親戚にゴブリン顔の連中がいたなら自分の顔がゴブリン似だったとしてそこまで驚いたりはしなかったと思う。少なくとも両親もゴブリン顔ってわけでもなかったなぁ」


 そう答えつつもブルーノは自分と同じ境遇の人間がいることに非常に興味を覚えたようだ。


「でも、もし本当にそんな人がいるなら是非会って話を聞いてみたいところだよ。その人は魔窟とはいえ普通に街の中で暮らせているんだろう? ボクも何かコツみたいなものを教えてもらえば冒険者達に襲われることは無くなるかもしれない」


 それを聞いたアッシュは、ここでこうして知り合ったのも何かの縁だと思い、不純喫茶のマスターにブルーノを紹介することを思い付いた。


「じゃあ、会ってみますか? なんだかんだ俺達がこの街に着いて一番最初にお世話になった人でもあるし、悪いことにはならないと思いますよ」

「いいのかい!? いやぁアッシュさん達には依頼関係なく色々感謝しきりですよ! ちなみにどんな人なんですか、その人は」


 そのブルーノの何気ない質問に、アッシュもまたさらっと答える。


「筋肉ムキムキで口調はオネェ、どぎつい化粧にふりふりのエプロンで着飾っていて……。ざっくり言うと女装したムキムキのゴブリンって感じの人です」

「……いや、やっぱり会うのはやめておくよ」


 その説明で何故実際に会ってみる流れになると思ったのか。悲しいことに、アッシュもまた順調に世間一般の常識が失われつつあるのであった。

ここまで読んで頂きありがとうございます。


次話の投稿は明日7時頃の予定です。


よろしくお願い致します。

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