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第五話 怒れる筋肉&ときめくメスゴブリン

「ちょ、ちょっと待ってくれよ! ダグラス達が俺のことで本気で怒ってくれるのは嬉しいけど、俺が相談したいのはこれからのことなんだって!」

「これからのこと……であるか?」


 今にも大挙を成してギルド本部に殴り込みに行きそうな、ダグラスを始めとした『剥き出しの筋肉愛好家ネイキッドマッスルラバー』の面々を何とか引き留めようと、アッシュは必死で説明を繰り返す。


「結局今何が一番問題かって、俺とドルカじゃ魔窟ギルドに並ぶような難しい依頼じゃとても太刀打ちできないってことなんだよ。キースに嫌われちゃったのはまあそりゃ悲しいけど、向こうからしてみれば裏切られた! って気持ちになるのはわからなくもないしさ」

「私がダグラスさんを追いかけてる間に本部はそんなことになってたんですね……。」

「ムゥ。アッシュ殿は優しすぎるのである。冒険者というものは一度相手に舐められたら一生付け上がられるのである。やはりきっちり潰すしか」


 ようやく聞く耳を持ってくれたが基本思想が危なすぎる。アッシュは何とかこれ以上大ごとにならないようダグラス達を大人しくさせる為に説明を続けた。


「だから待ってくれってば! 一番まずいのは、このままずっと借金が残ったままの状態でディアボロスがもう一度この街を襲いに来たら、間違いなく俺もドルカも最前線に立たされちゃうから一刻も早くお金を稼がなきゃってことなんだよ。メンツどうこうの前に俺達このままだと命がヤバいんだって」

「良いことを思いついたのである! ギルド本部を襲うのがダメなのであれば、ギルド本部を拠点とする冒険者達を片っ端から潰せば良いのである! 依頼を受ける冒険者そのものが消えれば難しい依頼も簡単な依頼もよりどりみどり選び放題なのである!」

「だーかーら! 何でアンタらそんな物騒な解決法しか思いつかないんだよ! お前ら全員脳筋かっ!」

「フハハハハ、そう褒めないで欲しいのである。流石の吾輩もまだ脳の筋肉は鍛え方を知らないのである」

「ちょ、ちょっとぉ! ダグラスさん達が本気出したら本部の冒険者なんて一瞬でぼろ雑巾になっちゃうからっ! あぁっでもそうしたらまた本気を出したダグラスさんの逞しい姿が見れるのかしら……!」


 流石全身の筋肉を鍛え上げている男達は考えることが違う。彼らにとっては脳でさえも最終的には鍛え上げる対象に含まれているらしい。

 そして、一昨日の事件でどうやら筋肉フェチに目覚めてしまったらしいガンミは、苦楽を共にした仲間たちの拠点の安全と本気を出したダグラスの筋肉をもう一度目にすることの二択に迷い、悩まし気にくねくねと揺れている。


「脳みそは筋肉じゃねぇしそういう意味でもねぇからっ! とにかく物騒な方法以外で何かいい方法無いか教えてくれよ」

「ごめんねアッシュちゃん。アタシが相談させる相手を間違えてたわ。ほんっと、ここに集まるオトコってばバカばっかりなんだから……」


あまりの脳筋思想に頭が痛くなっていたアッシュに助け舟を出したのは、他ならぬアッシュにダグラスに相談するよう勧めたマスター自身だった。


「マスター! ……その、ドルカはもう大丈夫なのか?」


 そう言いながらマスターの方を向いてみると、マスターの背中にくっつきながら恐る恐る顔だけ出してこちらを見ているドルカと目が合った。


「ほらドルカちゃん、アナタからアッシュちゃんに言ってあげなさいな」

「アッシュ君! ……えっと、さっきはごめんね。私、アッシュ君に怒ってたわけじゃないから。もう元気だから大丈夫だよ!」


 泣き腫らした目元と、何故か頬っぺたまで赤くしているドルカは、罰の悪そうな顔でえへへ、と笑って見せると、えいっとばかりにマスターの後ろから飛び出し、アッシュにもたれかかるようにしながら丁度空いていた隣の席に座った。


「アッシュ君、これからも一緒に冒険頑張ろうね!」

「あ、ああ。元気が出たなら良かったよ。これからも何も、まだ俺ら冒険者になって3日目で依頼を受けたことすらないんだけどな。目、腫れちゃったな。確かそういうのもヒールで治るはずだから、一回離れてちゃんと座ってからこっち向いてみろよ」

 

 珍しく離れることを嫌がらず、言われた通りすぐにアッシュから離れて座り直したドルカに対し、アッシュもまたその目元をちゃんと見れるように自分も向き直ると、両手でドルカの顔を横から覆うようにしてヒールをかけ始めた。


「えへへへへ。こうしてアッシュ君にヒールかけてもらうの2回目! 前もこのお店だったよね」

「一昨日は頬っぺただったけどな。よし、これで元通り……っと」


 別に怪我をしていたわけでもないのであっさりと治療は終わり、アッシュは手を放し、途切れてしまった話の続きに戻ろうとする。


「えー! もう終わりー!?」

「怪我じゃないんだからすぐ治るに決まってるだろ!」

「いいじゃんもっとやってよー! ヒール要らないから! 両手だけ貸して!」

「なんでだよやだよ」

「あーもうじれったい! 見てるこっちがキュンキュンしちゃうわぁっ! 仲良しのお二人さん? 今はもっとやらなきゃいけないことがあるんでしょ? ドルカちゃんも、アピールの仕方は悪くなかったから、後は時と場所と周りの人の目を気にするようになりましょうね?」

「はい! ししょー!」

「師匠……?」


 何故か元気よくマスターに向かって返事をするドルカを怪訝な表情で見つめるアッシュであったが、マスターの言う通りここで話を切り替えないといつまでたっても話が進まない。


「それでマスター。ダグラス達に相談してもこの通り物騒な意見しか出なかったんだけど」

「そうそうそれよ! この筋肉バカ達、ほんとに脳みそ詰まってるのかしら? 今アンタ達がギルド本部に殴り込みに行ったら明らかにアッシュちゃん達が酷い目にあったことに対する報復ってバレちゃうじゃない! やるならほとぼりが冷めた頃にこそこそ着実に仕留めなさい!」

「問題はそこじゃねぇからっ! それで、マスターはちゃんとした意見あるのかよ?」


 結局物騒な意見しか出さないんじゃないかとしらーっとした目で睨むアッシュをさらりと受け流し、マスターは続けた。


「簡単よ。むしろこのムサいオトコ達が何で思いつかなかったのか不思議な位よ」

「ムゥッ! ムサいとはなんなのである! 吾輩達はいつだって爽やかに汗を流しているのである!」

「はいはい。わかったからちょっと黙ってて頂戴」

「うぉー! ししょー! その素晴らしい方法とはっ! はやくはやくー!」


 何故ドルカはマスターを師匠呼ばわりするようになったのか。アッシュがダグラス達と話している短い間に一体どんな会話が繰り広げられていたのか。それが気になってしょうがないアッシュだったが、そこをぐっと堪え、マスターの言う『素晴らしい方法』が一体どんな方法なのか、続く言葉を待つのであった。

評価入れて下さった方が二人目……!

それも二人とも文章・ストーリー共に満点ですと!?

心臓飛び出るかと思った……。


こんなカオスな物語を楽しんでくださってありがとうございます!

まだまだ物語は序の口、これからもっとカオスになるよう頑張ります!


次話の投稿は明日24時頃の予定です。

ぜひぜひよろしくお願いいたします!

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