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第二十話 緊急事態発令

本日二度目の投稿です。

7月31日 話数にミスが合った為修正。

「チンピラに目を付けられているのが事実なら、賭場に向かったって言っても、流石に同じ賭場じゃなくて別の賭場を探しているのでは?」


 ドルカが今朝、目を付けられて追いかけられたばかりのチンピラ達がいる賭場に向かったのではないかと気が気でない様子のアッシュに、エリスは冷静に落ち着くよう言い聞かせていた。


「俺もドルカもこの街に着いたのは今日なんです! そしてドルカはバカだ! 他の賭場なんて思いつくわけがない! 間違いなく同じ賭場に向かっているはずです!」

「そ、そこまで言い切りますか!? ……だからって一人で飛び出して行ってもどうしようもないでしょう! あなたも目を付けられているのは同じなら、一人で飛び出して行った所でその方々に捕まるのが関の山ではないですか?」

「でも、ここでこんなことしてる間にドルカが何をしでかすか……」


そう言って必死で引きとめるエリスを振り切って自分もギルドを飛び出そうとするアッシュ。いよいよエリスを振り払って走り出そうというその時に、脇から太い腕がぬっと飛び出しアッシュは肩をがっしりと掴まれ、身動きが取れなくなってしまった。


「誰だ、今俺は急いでるんだ!」

「何をそんなに焦っているのかね。ちょっと吾輩がホワイトリリーの魔女と話し合いをしている間に何があったというのだ。……それに、ドルカ嬢は今どこに」


 アッシュを引き留めたのは、このギルドまでドルカとアッシュを案内してくれた、冒険者クラン剥き出しの筋肉愛好家ネイキッドマッスルラバーのリーダーである、半裸の大男、ダグラスであった。


「ダグラスさん、実はドルカの借金が俺のものになっちゃって、それで俺は気絶しちゃって、その間にドルカが賭場にリベンジしに飛び出していったらしいんです!」

「なんと! 追われていたチンピラ共の拠点に自ら飛び込むとは、ドルカ嬢も中々肝が据わっておりますなぁ」

「あいつバカだから、追われていたことなんて完全に忘れてると思います。何よりあいつがこれ以上借金を増やしたらそれも全部俺のものになってしまうんです! だから俺は一刻も早くあいつを追いかけないと……」

「なるほど、それで急いでおったのか。……ふむ。アッシュ殿、ドルカ嬢の向かった先に心当たりは?」


 そう言われて初めて、アッシュはドルカを追いかけようにもドルカが向かった賭場の場所さえ知らないことに気付いた。


「場所はわからない……。でも、あいつは市場をうろうろしている時におっさんに声をかけられて金貸しや賭場まで案内してもらったって言っていた。だから市場の近くを手あたり次第探せば見つかるはず……」

「アッシュ殿、焦る気持ちはわかるが、こういう時に冷静にものを考えられる者が優秀な冒険者というものですぞ。そこまでわかっているのであれば、もっと簡単な方法があるではないか」

「え……?」


 そう言われて必死で頭を回転させるアッシュだが、どうしても気が逸ってしまうからか、ダグラスの言う『簡単な方法』が一体何なのか、まるで見当がつかなかった。

ダグラスは必死で考えるアッシュを見守っていたが、答えが出なさそうであることを確認し、さも愉快そうにヒントを挙げていく。


「具体的な場所がわからないなら、わかる奴に案内させれば良いのである。チンピラ共は市場を徘徊し、獲物を探している。そして、アッシュ殿もドルカ殿もチンピラに目を付けられている。……どうかね、答えはわかりましたかな?」


 そしてダグラスは、最後のヒントだと言わんばかりに、アッシュに向かってその鍛え上げられた腕に力こぶを作って見せる。


「俺たちを追っていたチンピラを探して、賭場の場所を吐かせる……?」

「そういうことである」


 なるほど、ダグラスの語る『簡単な方法』は非常に単純明快で、合理的な方法のように思えた。……アッシュがチンピラを締め上げるだけの力を持っていればの話であるが。


「それが一番良い方法だってことはわかりました。でも、俺は今日冒険者になったばかりで、さっきも逃げるだけで精いっぱいで……」

「誰がアッシュ殿一人でチンピラを締め上げるのが正解と言いましたかな?」

「え……?」

「新人冒険者を教え導くのも我らベテランの役目というもの。微力ではあるが、手助けいたしますぞ、アッシュ殿!」

「ダグラスさん……ありがとうございます!」

「ふっ……。他人行儀な言葉は不要。『さん』等付けずダグラスと呼ぶといいのである。そうとなれば市場まで急ぐぞ! アッシュ殿!」

「はい!」


 いきなり話に割って入ってきて、突然アッシュに同行すると宣言し、あっという間にギルドを飛び出していった二人を、唖然とした表情で見送ってしまったエリスだったが、彼らの姿が見えなくなった途端、我に返り青ざめた。


「魔窟の中でもトップクラスの冒険者(変態)が市場で暴れる……? 早く本部に連絡しなければ……!」

「エーリースー! いつまで私一人に受付やらせるのよー!? ねぇエリスってばー!」

「ごめんなさいドリー! 筋肉愛好家(バカ)のダグラスが動いたわ! 市場で暴れるみたいなことも言っていたから今から大至急で本部に連絡しないといけないの! もう少し一人で対応お願いね!」

「はぁ!? 何がどうなってそんなことになってんのよ? しかもよりによって筋肉愛好家(バカ)のダグラスって、こないだ川の水を全部プロテインに変えて森の生態系を筋肉一色に染めかけた事件の主犯格じゃない!? 話の流れ的にさっきの新人君絡みでしょ? なんでそんな奴がぺーぺーの新人の為に動くのよ?」

「私だって教えて欲しいくらいですっ! そんなことより早く本部に連絡しないと……!」



『市場に筋肉愛好家(バカ)のリーダーが向かっている。標的はイカサマで一般人や新人冒険者から金を巻き上げ借金漬けにしているマフィア共と彼らの拠点となる賭場である。至急安全確保の為周囲に冒険者を派遣されたし』


――その日、突如として魔窟ギルドから入ったその通信に、冒険者ギルド本部は揺れた。


ここまで読んで頂きありがとうございます。


明日の投稿は朝7時を予定しております。


気にいって頂けたようでしたら、ブクマ、評価、感想などよろしくお願いいたします。

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