大機械都市『ラギオン』奪還編1
「ねぇ、沙知。僕は、君たち以外にも光を見た、とは言ったけど、それが君らの友達とは限らないよ。もし、違ったら無駄骨だよ」
「でも、琴音ちゃんの可能性もあるでしょ?」
「涼吾はどう思うんだい?」
「沙知が雷に巻き込まれてこの世界に飛ばされたんなら、一緒に居た琴音ちゃんもこの世界に飛ばされている可能性は高い。タイミング的にもそうだろうな」
「そうだよね。行かないで後悔するより、行って後悔したほうがいいよね」
「なるほど、人間って仲間思いなんだね」
「琴音ちゃんは大切な友達だもん」
「だが、分からないことが一つあるんだよな」
「何?」
「俺たちは、雷に巻き込まれてこの大草原に飛ばされたんだろ?だったら何で、俺と沙知は同じ場所に飛ばされたのに、琴音だけ『ラギオン』の近くに飛ばされたんだ?」
「んー、確かに。リーブル、何で?」
「分からないなー。この世界に飛んで来る過程で、何かあったのかもしれないね」
「どちらにせよ、確認しないことには始まらない。『ラギオン』へ案内してくれ」
「分かったよ。でも、予め忠告しておくよ。『ラギオン』には、さっきの機械犬のようなものを開発している狂った研究者がいるんだ。君たちには重いかもしれないんだけど、さっきの犬は、元はこの世界にいたジェネラルウルフ、っていう狼犬だったんだよ。生息域は結構広くて、あまり強くはないし、温厚な方なんだ」
「でも、さっきはリーブルを襲っていたじゃない」
「そうなんだよ。多分、機械化した副作用だと思うよ。君たちの友達も見つかったら機械にされるかもしれない」
「そんな!?生き物を機械にするなんて…じゃあ、琴音ちゃんも…」
「そうかもしれないね。この世界では人間なんてほとんどいないよ。概念としては存在しているくらいだ。そんなレアな存在が降って来たら、その狂った研究者なら何するかわからないよ」
「ほとんどってことは、この世界には俺たち以外にも人間がいるのか!?」
「そうだね。続きは移動しながら話そう」そう言い。リーブルは大きく息を吸った。
スゥゥゥウ
リーブルは空気を溜め込み、僅かに宙に浮かぶ。
「二人とも、僕に捕まって」
「え、どこに?」
「足でいいよ。吸盤だったら落ちないだろうから」
「涼吾、リーブルに従おう」
「そうするしかないか」
涼吾と沙知はリーブルの足に捕まった。
「一気に飛ぶよ。振り落とされないでね」
「え!?リーブル。振り落とされないでね、ってどうい…」
リーブルは『ラギオン』とは反対の方に向けて、吸った息を吐き出す。
その瞬間、息を吐き出した反動でリーブルの体は少し縮みながら『ラギオン』の方へ飛んでいく。
「キャャャャャアアア」沙知は意識を失いかけている。
大草原の上を飛ぶと、向かう先に薄っすらと街らしきものが見えてきた。
「お、おい、リーブル。向こうに見えるのが『ラギオン』か?」
「そうだよ。でも、君たちも運が悪かったね。最初に訪れる場所が大機械都市『ラギオン』だなんて」
「そんなにやばいところなのか?」
「そうだね。『ラギオン』では、国一つをも吹き飛ばすと言われている兵器があるらしいんだ。あくまでも噂だけど、それが本当だとしたら『ラギオン』はいつか他の国を攻め滅ぼすかもしれない。でも、丁度よかった。涼吾の力で『ラギオン』を滅ぼしてよ」
「俺は戦う気なんてない。琴音を助けたら直ぐに逃げる、それで合意したはずだ。そもそも丸腰の俺に何ができるって言うんだ」
「そうだったね。僕もせっかちだ。それと、沙知が落ちそうだよ、支えてあげて」
沙知は白目を剥いている。かろうじて吸盤に支えられている沙知を涼吾が支え直す。
「もうそろそろ着くよ」
気付くと、涼吾の目の前には見上げるほどの大都市『ラギオン』があった。