意識の化身
「ククク………突き止めたようだな。やはり、お前には運命を変える力があった」涼吾の前に、再び道化師の格好をした意識の化身が現れた。
「おい、合ってたのか?沙知は?早く助けてくれ」
「お前は答えを導き出した。お前の願いはSTOPだ」
「何を言っている。俺の願いは沙知を助けることだ」
「いや、お前は彼女を助けるためにその問題の答えを望んだんだよ。問題はお前の願いに応じて出された」
「俺が望んだことが問題になるだと…?」
「そろそろ現実の世界に戻ろうか。力を貸してやろう」
突然、 目の前が白い光に包まれた。
目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
「世界が止まってる…。どういうことだ」
その時、頭の中で声が聞こえた。
「世界が止まっている時間には限りがある。早く助けないと全てが水の泡だぞ」
「おい、どういうことだよ!?これはお前がやったことなのか?」声は聞こえない。
「くっ!とにかく沙知を助けないと」
涼吾は沙知を交差点から引きずり出した。
「時間だ」頭の中で化身の声が聞こえ、世界が動き出した。
交差点ではクラクションの音が鳴り響き、信号無視をして交差点に突っ込んだトラックは急ブレーキをかけ、ガードレールに突撃し電柱にぶつかった。目の前で起きた事故に沙知は言葉を失って、自分が交差点を渡っていたことに気付いていない。涼吾は沙知を連れてその場を離れた。
「涼吾、涼吾、ちょっと離してよ」沙知は涼吾の手を振り払う。
「あ、わりぃ」
「どうしたの?なんかあった?」
「お前、何も覚えてないのか?」
「なんのこと?事故のこと?」
「いや、いい。忘れてくれ」
「なんか、さっきから変だよ。先生に怒られたのが効いた?」
「馬鹿は休み休み言え。散々怒られて、今更気が変わったりなんてするかよ。ほんとに何でもないから、気にすんな」
「涼吾がそういうなら気にしないことにする。その代わり、学校で言ったあれ、今から行かない?」
「まさか、駅前のプリンのことか?」
「そう!いいでしょ?」
「はぁ…分かったよ。一個だけだぞ」
「やった!早く行こ」
「待てよ。また、巻き込まれるぞ」
「何のことー」
「やべ、こいつは何も知らないんだ」小声で言う。
「何でもねーよ」
「変なのー」
この体験を機に、涼吾は信じられない体験をする。