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大機械都市『ラギオン」奪還編8

「この広間には来た道以外に出られそうな場所はないわね」

「行き止まりなのかな?」

「そうだよな…正規ルートじゃなさそうだけど、行ってみるしかないな」

「どういうこと?」

「あの、デカブツが開けた壁の穴だ。川だとしたら、水が流れ続けてるからこの広間にコンスタントに流れ込むはずだろ?」

「うん、そうかも」

「でも、水が引いた後あの壁からは水が流れ込んで来てない。つまり、この広間の隣は貯水タンクかなんかになってるんだろうな」

「ククク、ハハハハ」

「リーブル何笑ってるの?」

「いや、異世界だというのに涼吾は本当に理詰めだなって思って」

「お前らにも理詰めの概念があんのか?」

「そうだね。ただ、この世界と君たちの世界の論理が一致するとは限らないよ」

「確かにな。でも、この世界にも俺らの世界の原理が通用することは証明された」

「そうだね。電気が通りやすいってことだろう?」

「ああ。とにかく俺はできるだけ能力なんて使わない」

「さっき使ってたじゃん」

「さっきはさっきだ。結局、切り抜けられたんだからいいだろ?」

「ブレブレだね」リーブルは笑いながら言う。

「いいから、行くぞ。俺はこんな世界納得いかないんだからな」

「きみが納得いってなくても事実だけどね」

「わかってる…だから、自分の力で切り開くんだ」

涼吾たちは割れた壁の中に入る。

「うわぁ、高いね」

「あの広間の結構な高さまで水が入って来たんだ。それなりの水が貯水されていたんだろうな。なんのため貯水されてたのかは知らないけど」

「そっか、確かにあの量の水を貯めてたなら結構な高さになるよね」

「そういうことだ。それに、この城にはまだ下があるのかもしれない」

「え!?まだ、あるの?」

「引いた後の水は全部下に行ったはずだからな。その水がどこに行ったかは気になるけど、下なんか目指しても仕様がない。とにかく、上に行けそうなところを探そうぜ」

「ねぇ、涼吾、あそこに梯子っぽいのがあるけど…」

「どこ?」

「見えないのかい?」

「逆にこの暗さで見えんのか?隣の広間から漏れてる灯りだけだから、ほぼ何も見えないぞ」

「リーブル、視力どれくらいあるの?」

「『しりょく』ってなんだい?」

「あ、ここは違うのな…お前にはこのタンクの中はどう見えてるんだ?」

「そうだね。広さは幅、五ランテールくらいの丸い形をしてる場所だね」

「『ランテール』?」

「長さの単位だよ。君たちの世界にはなかったのかい?」

「いや、あったけど、呼び方が違うな」

「へぇー、君たちの世界ではなんて言う単位だったんだい?」

「『メートル』とか、かな?」

「へぇ、そうなんだね」

「単位が違うってことはいろいろと不便かもな…」

「この世界での単位と君たちの世界での単位変換は結構重要かもね」

「面倒だが、重要になるだろうからここで確かめておくか」

「できるの?私たちの世界の物差しなんて持ってないよ」

「いや、大体ならわかる」

「どうやって?」

「靴だよ。俺の靴は28cmだ。靴には捨て寸っていうのがあるから、プラスで1cm〜2cm。俺の靴なら、大体30cmってとこだろう。面倒だが、これで測ろう」

涼吾は一歩一歩、ズレないように歩く。

「ほぼ三十三回分ってとこか…だとすると、このタンクの直径は約十メートルってことになるな。つまり、五ランテール=十メートルだから、一ランテール=ニメートルだな」

「すごいね、流石だよ」

「お前の方が規格外だ。もしかしたら、お前の目を暗視スコープみたいになってるのかもな。とりあえず、単位変換に関してはこういうことにしておこう」

「リーブル、また明るくできない?」

「帯電してもいいけど、残った水に流れるかもしれないよ?」

「それは危ないね…どうしようか」

「仕方ない、隣の広間の火を持ってくるか。リーブルは沙知を連れて梯子の下に行って、後で導いてくれ」

「わかったよ」

涼吾は火を取りに行く。

「松明を一つ頂くか…それにしても、この火はなんで灯ったんだ?俺たちが来たタイミングで灯ったし、あの機械兵もタイミングよく出てきた。何か仕掛けがされていたのか、それとも俺たちは監視されてるのか…」

涼吾は壁の突起などをうまく使い、少し上にある松明を一つ拝借する。

「おい、リーブル、どこだ?」

「こっちだよ涼吾!」

涼吾は声のする方へ向かう。

「あ、いた!」

「あんた、ウロウロし過ぎよ。松明の火で分かるわ」

「悪かったな。お前らからは見えるだろうけど、こっちからはお前らの位置なんてわからないんだよ」

「まぁまぁ、無事灯りも手に入れたんだし、脱出しようよ」




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