大機械都市『ラギオン』奪還編7
「キィィィィィィィィイ!」
巨大機械兵は突然叫びだし、リーブルに襲い掛かる。
「沙知、今のうちに行くぞ!」
「う、うん」
涼吾は沙知を連れ、機械兵に見つからないように壁に沿って走る。
「リーブル、すごい」
「流石に、俺たちとは生きている世界が違うだけあるな。あの機械兵はあいつに任せよう。とにかく、水の在り処を突き止めるぞ」
「うん。でも、この広間全体に音が響き渡ってるし、機械音と混じって特定できそうにないよ」
「考えろ、俺。この部屋を観察するんだ。この部屋の地面に水が流れてる様子はない。だとしたら、上か?」
天井は丸くなっており、水が流れていそうな場所はない。
「下にも上にも見える場所にはないってことか…」
「ねぇ、涼吾、流れているっていうか湧いてるんじゃない?」
「どういうことだ?」
「流れてるんだったら、チョロチョロっていう音よりサーっていう音なんじゃない?チョロチョロってことは少し高低差があるからでしょ?」
「その可能性はあるな。ナイスだ、沙知!」
「私だってたまには役に立つよ」
「よし、この広間の壁を注意しながら調べるぞ」
「わかった」
涼吾と沙知は、注意して壁を見る。
「その程度なのかい?君の速度じゃ僕は捕まえられないよ」
ガシャン、ガシャン、ガシャン
機械兵はリーブルめがけて重い手を振り下ろす。
「デカいだけじゃ何の役にも立たないよ」
「キィィィ」
「沙知、大丈夫か?」
「うん。リーブルも頑張ってるんだし、私だけ役立たずなんて嫌だから」
「役立たずじゃねーよ。お前は俺が守る。だから、絶対に離れんなよ」
「カッコつけてないで、いいから探すよ」
「おい…」
チョロチョロチョロ
「ねぇ、なんか音が近くなってると思わない?」
「確かにな。ここらへんに流れてるのかもしれない」
「涼吾!沙知!」
中央で戦っているはずのリーブルが叫ぶ。涼吾と沙知がリーブルの方を見ると、巨大な機械兵がこちらへ向かって走ってきた。
「ばれたのか!クソ!」
「キィィィ」
「きゃぁぁぁ」
ガシャン!
機械兵のパンチが広間の壁に割れ目を入れる。
「危なかったぜ…」
涼吾は沙知を抱え、紙一重で避けていた。
「このー」リーブルが機械兵の顔面に覆いかぶさる。
「涼吾、沙知大丈夫かい!?」
「ああ、危なかったぜ。だが、これでやつが倒せる!」
「どういうことだい?」
「今の機械兵のパンチで、壁に少しひびが入った。おかげで、壁から湧き出た水の量が増えている。つまり、この壁の向こうには水が大量にあるってことだ」
「なるほどね。で、僕はどうすればいいんだ?」
「うまい具合に誘導して、その壁を壊させるんだ。そしたら、すぐに部屋の中央に来い」
「わかったよ!」
「キィィィ」機械兵は暴れている。
「沙知、走るぞ!広間の真ん中だ!」
「え、うん」
涼吾と沙知は広間の中央へと向かう。
「ねぇ、デカいだけの機械兵さん、もう終わりなんて言わないよね?かかってきなよ」リーブルは機械兵から飛び降り、挑発する。
「シャアア」機械兵は蒸気を吹き出しながら、リーブルを捕まえようと躍起になっている。
「リーブル!いいぞ!」
「わかったよ!君もこれで最後だ!」
リーブルが機械兵の攻撃を避けると、その攻撃は壁を突き破る。すると、壁のひびが徐々に大きくなる。
「リーブル!走れ!」
「もう、いるよ」
「はや!!」
「それで、どうするんだい?」
「見てろ、これですべてが決まる」
壁のひびが限界を迎え、壁の向こう側から水が一気に広間に流れ込む。巨大な機械兵の腰まで水が入り込む。
「すごい、ここだけ水が入ってこないね」
「ああ、あいつが最初ここから動かなかったのが気になってな。恐らく、異世界的な力が働いてるんだろうな。俺には理解できないけど」
「そうだね、機械都市と言ってもここは異世界だ。なんらかの魔法がかけられているんだろうね。理詰めの涼吾にはわからないかな」
「うるせえ。いいから放電しろ」
「わかった。やるよ」
リーブルは水の中に飛び込み、すべての電気を放出する。
ビリ、ビリビリビリビリ
「シャァァァァァ!」機械兵は断末魔をあげ、倒れた。
「やったじゃないか!ここを抜けられたのなんて僕たちだけじゃないか?」
「まだここを抜けたわけじゃない。それに、こんなところに侵入したやつなんているのか?」
「それもそうだね。最後まで気を抜かないで行こう」
広間の水が引いていき、完全にショートした機械兵が横たわっている。
「火は上の方にあったから消えなくて済んだな。どっかに進む道があるはずだ。手分けして探そう」




