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第9話 誕生日
娘の誕生日。
津波の日に娘は生まれた。
我々の知る日本と言う世の中が暗い気持ちになっていた頃、少しでも明るく出来るような人になって欲しいと「」と名付けた。
幸いにも娘は明るく優しく育っている。私達には勿体ないほどの幸せを振り撒きながら。
私が娘の誕生日に選んだプレゼントは花。
花を貰って喜ぶ年はまだ早いが、テーブルか何処かに置いて育てて欲しい。
一応私の誕生日の復讐で大人の道具も用意したが、結局は渡せなかった。
二十歳になった娘へのプレゼント倉庫にそっと今年の分も並べた。
「産まれた時の悲惨な新聞」
「名前入り古酒泡盛ボトル」
「産まれてから1年間毎日書いた育児日記」
「こけし」
「七五三の写真」
「震えるこけし」
「夫婦で書いた未来の娘への手紙」
New‼「歪なこけし」
New‼「妻と私のビデオレター」
妻の顔と私の顔と弟の顔の描いてある手作りこけしです。公民館にて作成。来年は誰の顔でしょうか。
震えるこけしは弟の顔が彫られています。