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私ののびくん

作者: ぱんだ

ちょっと浮かれたので、書いた。

私の好きな人は、のびくん。


別に某人気青猫ロボットアニメのキャラじゃない。

とてもよく似てるから、私が勝手にそう呼んでいる。(ただし心の中でだけ)


のびくんは、他の人からは「ハカセ」とか「委員長」って呼ばれている。

別に委員長なわけじゃないけど、うんちく好きなのとメガネのせいで小学校の頃にはそう呼ばれていた。


のびくんは、小さくて「前へならえ!」の号令で

当たり前のように腰に手をあてる。

前に先生が「お前ら【前にならえ】してみろー」って言ったら、

1人だけポーズが違くて可愛かった。

みんなに笑われて、恥ずかしそうに拗ねてたっけ。


のびくんは、真面目で融通がきかなくて。

からかうとムキになって反応して、楽しい。


私は、そんなのびくんが可愛くて大好きだけど

女の子にモテるタイプじゃないから、安心している。まだ告白とかはいいかな?

見てるだけでも幸せだし。



そう思っていたのに…。


私ののびくんが、放課後の部室で

女の子に告白されている。

私とのびくんと同じクラスの女子。

バレー部とかにいそうなスポーツが得意で

集団の中で目立つタイプの子。

(実際、あの子は陸上部だけど)


なんで?同じクラスなだけで接点とかなかったよね?

バスケ部の先輩がカッコイイ!ってはしゃいでたじゃないっ!


私ののびくんに手を出さないで!


思わず、覗いてたドアから飛び出しそうになったけど

…部室の奥。

1階にある部室の窓の外からピョコピョコ何人かの頭が見えたり隠れたりしてる。

あれは…同じクラスの…。


のびくんが、彼女に返事をしようと口を開いた。


「ありがとう、あの…」


ガラッ!


『うぇーいっ!ドッキリ成功っ!!』


窓から意地悪な笑顔のクラスメイトの男子が大声をあげながら登場した。


眼鏡の奥の目をシパシパさせるのびくん。

告白していた女の子もひどく顔を歪ませながら、

嘲笑うかのように何かを言おうとしていた。


スパーン!


ものすごい勢いで開くドア。

開けたのは、もちろん私。


「私ののびくんに勝手に手出さないでくれる?」


思っていたことがそのまんま、口から飛び出してしまった。

なんだかもうヤケクソな気分で ずんずんと部室に踏み込み

のびくんの手首を掴むとそのまま引っ張って連れ出した。


「あの…」


ずんずんずんずん


「ねぇ…?」


ぐいぐいぐいぐい


「しずかちゃん?」


ピタッ


今、のびくんが私の名前を…呼んでくれた!


「のびくん、私の名前知ってたの?」


「そりゃクラスメイトなんだし、知ってるよ」


「話したことそんななかったし、知らないと思ってた…」


顔が熱い。きっと私は今ゆでダコだと思う。


「しずかちゃん、部活ないなら このまま帰ろうか?途中まで送るよ」


のびくんが、のびくんなのに、紳士だっ。(感動)


2人、なんにも話さずに下校する。


学年で1番大きな女子である私と。

ならう前がいないのびくん。

夕日で伸びる影ですらもデコボコな私たち。


私の家の前に着いた時、のびくんがグッと上を見て

私と目をあわせた。


「しずかちゃん、今日はありがとう。助けてくれて、嬉しかった。」


眼鏡の奥の目が潤んでるように見えた。

のびくんは涙目でも、かわいい。


「明日から、よろしくね。朝、朝練に間に合う時間に迎えにくるから!」


そう言い残して、のびくんは短いコンパスでだぁーっと駆けていく。


…明日からよろしくってなんだろう?

…朝練に間に合うように迎え…?



翌朝7時にのびくんが家のチャイムを鳴らした。

そして、また2人で無言で登校する。

部室棟前で別れて、私は部活に。


朝練終了後、生徒玄関で上履きに履き替えていると

のびくんは当たり前のように迎えにきて。

2人で教室に入った。


『ほんとだったーっ!!』

クラスメイトの大声に迎えられた。


「マジかよ!ハカセ!ハカセのくせに!」

「大魔神と付き合うとか!」


様々な声に

いつものようにむきになりながら

「うるっさいな!早く朝読にうつれよ!」

と怒鳴り返して。


教室のドアのとこで固まる私をそっと席に誘導してくれる。


これ、いったい誰なのかな。

私ののびくんってこんなにかっこよかったっけ。


体が大きくて、柔道なんてやっちゃってて、あだ名が大魔神な私を

のびくんが女の子扱いしてくれて

…。


なんだか、すごく泣きたくなった。

嬉しくて、恥ずかしくて。




のびくんにウソ告白を仕掛けたアホ共は

のびくんが先生にチクって、指導室に呼ばれたけど

そんなに大事にならなかった。

アホ共のせいで全校集会の時の先生の説教はマシマシだったけど。


そして、のびくんは

私の心の中だけの「私の」ではなくて

自他ともに認める「私の」のびくんになってくれた。


今もよく分からないけど、人生勢いって大事だなって思った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 二人が、可愛くて、可愛くて、床でごろんごろんなりました。 [一言] ああ、もう、こういう可愛いお話大好き!ソッコーでブクマと評価しましたよね。そして、感想に少し時間をかけたいから、1日寝か…
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