表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おやじ彼女  作者: ponta
天下無双
568/570

苦境

左ミドル、右ハイ、左後回し、左ハイと蹴りを出しまくる。

伊藤さんは、最初は動かずその場で、蹴りをさばいていたが、少しずつ前に出てくる。


いきなり、跳び膝蹴りでは、かわされる。隙を、隙を作らないと。


焦って、蹴りを出すスピードを上げていくが、攻撃している私がいつの間にか、

コーナーに追い詰められていた。


「あらー。困ったな。後がねえぞ?」


「くっ」


右から逃げようとしたとき、伊藤さんの左ショートボディが襲ってきた。

右手で受けるが、体を浮かされ、コーナーに押し込められる。


伊藤さんの左右の連打が、容赦なく襲ってくる。

私は体を丸めて、ガードすることしかできない。


サンドバックのように好きなように打たれ、ガードが下がったとき、

伊藤さんの右の膝がボディに食い込んだ。


痛めていた脇腹に、刺すように痛みが走り、私は片膝をついた。


伊藤さんは、お手上げのポーズをとる。


「ギブアップするか? 続けるか?」


「誰が、誰がギブアップなんか!」


「そうか。なら、気持ちが折れるまで付き合ってやる」


再びサンドバック状態になる。

伊藤さんの突きや蹴りが当たるたびに、激痛が走り、

内臓が痺れる。


耐えていれば、伊藤さんが休むかと思ったけど、

ラッシュは止まらない。


もうだめだと思ったとき、ゴングがなって、伊藤さんは攻撃を止め、

私の頭をポンと叩いた。


「よく頑張ったな。次で決めてやる」


私はよろよろとコーナーに戻る。

私の考えが甘かったのだ。伊藤さんに私が勝てるわけがない。


左手に続き、右手もあざだらけで、握力がない。

もう左も右も攻撃には使えない。


脇腹をさらに痛めてしまった。動き回って、攻撃を避けることも無理だ。

蹴りもそのうち打てなくなる。

万事休す。私の負けだ。


椅子に座ると、冷水をかけられた。


「きゃっ。ちょっと何するの?!」


「それはこっちの台詞です! 奈津美さんは勝つ気があるんですか!!」


「あるよ。あるけど、私じゃ無理。伊藤さんに勝てるわけないもん」


小森君が、私の両耳を引っ張る。


「痛い! やめてよ!」


「だまらっしゃい! 勝つ気がある人が、あんな戦い方をしますか?

 今の状態の奈津美さんが、正面からぶつかって、勝てる相手ですか?」

 

「そんなことわかってるよ。偉そうなこと言って、メガネ君だって策はないって言ってたじゃん」


「ふん。まだ気持ちは折れていないようですね。 

 とっておきの秘策があります。やる気はありますか?」

 

「ほんとに? 勝てるなら、何でもやるよ」


「その言葉に、嘘はありませんね? では、耳を拝借」


私が耳を向けると、小森君に耳たぶを舐められた。


「ちょっと! 何やってんのよ!」


「おう、ミステイク。あまりにも可愛かったので、つい。では、策です。いいですか? ……」


「本当にそんなことで?」


「間違いありません」


セコンドアウトが告げられ、私は半信半疑のまま、リング中央へと向かう。

伊藤さんは、大きく息を吐いて、構えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ