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おやじ彼女  作者: ponta
天下無双
560/570

作戦会議

レフリーが俺の右手をあげる。


オーロラビジョンにKOシーンがリプレイされている。

我ながら、いいタイミングだった。


マイケルの動きが見え、全ての攻撃に合わせることができた。

開始15秒でOKは、少し出来過ぎか。


コーナーに戻ると、山下師範が嬉しそうな顔で出迎えてくれた。


「派手な勝ち方しおって! さすがだぞ!」


「押忍! ありがとうございます!」


リングを降り、通路を歩いていると、小森が観客にもみくちゃにされながら、

通路近くまで来ていた。


俺は小森の手を引き、警備員に目配せして、小森を通路側に入れた。


「奈津美さん、お見事です! 素晴らしいカウンターでした。

 通常の状態で、あんな芸当ができるようになったんですね!」


「メガネ君、応援ありがとな。まあ、今のは俺を持ち上げるための、

 かませ犬だったからね。パンチも遅かったからやりやすかったよ。

 問題は次だ。次はグラウンドに引き込まれるかもしれん」


控室に戻り、二人きりになると、小森は携帯を取り出した。

次の対戦相手のアーセンの試合映像が流れている。


「なるほど、次は一流のグラップラーですね。

 182cm、90kgとパワー、スタミナともに申し分ない。

 そして、変則的な関節技を持っている」


「そうなんだよ。俺の目的は三回戦にくるであろう、

 ボルガノフなんだ。あいつとは、是が非でもやりたい。

 だが、アーセンみたいなブラジリアン柔術との対戦経験が俺にはない。

 俺も少しはグラウンドを使えるが、奴のように一対一の寝技に特化した

 動きはできない」


「ふむ。この智の小森の秘策に頼りたい。

 頼らざる得ないと、おっしゃるわけですね?」


「そうなんだ。何かいい手はないか?」


「あるにはありますが、僕が長い年月をかけ、練りに練った秘策を

 タダというのは、ちょっと」


小森の目が怪しくひかる。

まったく、東京に行っても、相変わらずだな。


「わーったよ。条件は?」


「おお! さすが奈津美さんだ! なーに、簡単なことです。

 試合で使ったそのオープンフィンガーグローブ。それをいただきたい」


「なんだ。そんなこと? また、パンツくれとか、素っ裸になれとか言うかと思ったよ」


小森は鼻息荒く、足をジタバタさせて、怒りを露わにする。


「むきー! 失敬な! 奈津美さんは、そういう目で僕を見てるんですか?!」


「嘘嘘、冗談だって」


「僕はめちゃくちゃ傷つきました! ええ、傷つきましたとも!

 この傷を癒すには、奈津美さんの膝枕が必要だ!」


「わーった、わーった。膝枕でもなんでもしてやるから、

 秘策を聞かせてくれよ」


「ダメです! 先に膝枕です!」


「ははは。ホント、変わらないな」


俺がベンチに座ると、小森は頭を俺の太ももに載せてきた。


「どうですか? 女子大生の膝枕の寝心地は」


「うーん。思ったより、気持ちいいものじゃないんですね。ベンチが硬くて、

 背中が痛いです」


「そらそうだよ。俺、そんなに肉ついてないもん」


その時、ドアがノックされた。


「なっちゃん、入るね」


優子と橋本が笑顔で、入ってきて、俺と小森を見て、驚きの声をあげた。


「うおっ?! 小森、何してんだお前!」

「ちょっと、どうしたの? 疲れているのは、なっちゃんなのに?」


「いやね、メガネ君が、俺のやらしい写真をばらまくって脅すから、

 仕方なく」


優子が小森のほっぺをつねり、上に引っ張る。


「いたたたっ。優子さん、取れる! そんなに引っ張ったら! 取れちゃう!」


「いっつも厭らしいんだから! 私、許さないからね!」


腹を立てている優子を、俺はなだめる。


「嘘嘘、優子ちゃん冗談だって。秘策を教えてくれる替わりに、膝枕してるだけ」


「そうなの? だったら、そう言ってくれたらいいのに」


橋本が笑いながら、小森の頭を叩く。


「小森はいっつもエロイからな。冗談に聞こえねえんだよ」


「失敬な! この小森に何たる侮辱! ええい、だまらっしゃい!」


小森は勢いよく体を起こすと、ポケットから何かを取り出し、

広げだした。

A3の用紙に、作戦がびっくりと書かれている。


「お、メガネ君、マジでいろいろ考えてきてくれてたんだな。

 サンキュー」


俺が用紙を受け取ろうとすると、小森はすっと手をあげて、

俺の手をかわした。


「奈津美さん、さっきの約束お忘れなく」


「わかってるって。グローブぐらいいくらでも、やるよ。

 見して」


用紙は、5枚もあり、一回戦のマイケルから、2回戦の相手になる可能性がある二人、

準々決勝で当たるであろう、ボルガノフのことが事細かに書いてあった。


「すごいね。さすがよく調べてる。マイケルのこともあってるよ。

 さしあたっては、アーセンか」


「ムエタイのチャンパ―が上がってくる可能性もありますよ」


「いや、アーセンが上がってくると思う。説明会で会った時に、

 ボルガノフとアーセンは、雰囲気が強かった。おっ、ちょうど始まるな」


控室にあるモニターに、第二試合の映像が映しだされた。


立ち技の攻防が、5分程続き、タックルを決めたアーセンが、マウントから逆十字に移行して、

勝ちを収めた。


「奈津美さん、強敵ですね。あの重い攻撃をさばくとは」


「うん。真正の突きで押したいところだけど、ボルガノフまで消耗したくないんだ。

 いい手があったら、教えてくれ」


「わかっています。そのために、僕は来たんですから」


それから、30分程、小森と作戦を練った。


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