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おやじ彼女  作者: ponta
天下無双
552/570

参戦

1週間経ち、抜糸後に退院となった。


山下師範に迎えに来てもらい、そのまま記者会見場へと向かう。


「本当に出るのか?」


「はい。せっかくの機会ですので」


「私がお前なら、今回は見合わせるがなあ。

 あんな化物どもと退院したばかりで、やり合おうなどと、

 正気沙汰とは思えん」


「それは、山下師範の本心ですか?」


「何だその人を揶揄うような顔は。たしかに、私が後10、

 いや、20若ければ、戦いたいと思っただろうが」


「山下師範の全盛期なら、軽く優勝されますよ。

 山下師範の技を受け継いだ私たちがそれを証明します」


「美味いこと言って、話を逸らそうとするな」


「押忍、申し訳ありません」


「それにしても、お前たち3人が、こんなに世間に注目されるようになるなど、

 昔は、想像もできなかった。頼もしく育ってくれたことが、

 私は一番うれしいよ」


「押忍。ご期待にそえるよう、全力を尽くします」


会場に着くと、木村と伊藤は既に来ていた。

伊藤はTシャツに短パンで、木村はジーパン姿だ。

こいつらときたら、本当に常識がない。


『押忍!』


「押忍じゃねえ! お前らの恰好は何なんだ?

 山下師範と俺を見習え! ちゃんとスーツ着てんだろうが!」


伊藤は、さも口うるさいと言わんばかりの態度で、

耳をほじり、木村に至っては、自販機でジュースを買い出した。


俺は木村に跳び蹴りをかまし、伊藤の頭をはたいた。


「真面目に聞け!」


「いってえ。今度は俺が入院したらどうするんですか?」

「うんうん。木村の言う通りっすよ。あと2週間で試合だってのに」


「だぁーっ!! 真面目に聞けって言ってんだ! 

 ぶちのめすぞ!

 いいか? 光臨会の威光を示す場なんだ。

 それをなんだお前らの服装は?

 プラプラと遊びに行くんじゃないんだぞ」


木村がペットボトルを振りながら、

答えた。


「大丈夫ですって。磯野さんの去年の試合観て、

 うちの人間は、普通じゃないって思われてますから。

 余裕の態度見せてやった方が、相手が恐れますよ」


「相手が恐れますってお前なあ!」


伊藤が、顎でしゃくる方を観ると、出場者の一人が俺を、

緊張した面持ちで見ていた。


「ほんとだ。俺見て、びびってやがる。

 信じられん」


「信じられんって、何言ってんすか?

 俺らは優勝候補だそうですよ。

 この中の誰かが優勝するんじゃないかって、

 もっぱらの噂です」


「ふーん。三連覇してるのがいるんじゃないの?」


「ええ。ですが、やっこさんもそろそろ年齢的限界じゃないかって。

 38ですから」


「げっ。俺が男のままだったら、同じぐらいじゃん。

 それで限界とかって何か複雑だなあ」


しばし、四人で話していると、バネのありそうな、

黒人が近付いてきた。


俺が背を向けていると、そいつは尻を撫でてきた。


「oh! prety girl! 日本語少しわかりまーす」


俺は振り返り、伊藤に聞く。


「伊藤、こいつも出場者か?」


「いえ。去年は出てましたが、今回はリザーブですね。

 光臨会で3枠もとってるから、あぶれたんでしょう」


「そっか。なら、ぶちのめしても問題ないな」


俺は首を回し、笑顔を作る。


「Are you ready?」


「what?」


「寝てろ」


右の真正の突きを放つと、そいつはスウェーで避けた。

俺はすぐさま二段の跳び膝蹴りをだし、左膝をブロックさせ、右の膝を顎にあてる。

よろめいたところに、頭から飛び込んで鼻面に頭突きを当て倒した。


「弱っ! 気楽にケツ触ってくるから、強いのかと思ったら何だこいつ?」


余裕の表情を作り、周囲にアピールする。


不意打ちで真正の突きを出したのに、避けやがった。

しかも、跳び膝蹴りにも対応した。


さすが、トップレベルの奴は、一筋縄じゃいかん。

まともにやり合うのは得策じゃない。

俺流でいくか。


スタッフがバタバタと走ってきて、俺は後の始末を任せ、

他の選手と共にルール確認の場へむかった。

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