表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おやじ彼女  作者: ponta
天下無双
550/570

けじめ

高田が日本刀を抜き、周りの男たちも日本刀を抜いた。

男たちの左わきを確認するが、銃を持っている風ではない。


俺は半笑いになりながら、高田へと歩き、

途中倒れている木崎の胸に、思い切り、踵蹴りを落とした。


死ぬなら死ね。その思いが頭に浮かんだ。


「おああああ!!」


男が日本刀を構えて、突っ込んでくる。

振り下ろされた日本刀が見える。

軌道まではっきりと。


俺は斬られる寸前で後に下がる。

男は勢いあまって、自分の脛に日本刀を食い込ませる。


「ぎゃああ。足が、足がー!」


屈んだそいつの頭を鉄板で固められた安全靴の爪先で、

蹴り飛ばす。


男二人が、左右から迫ってきて、払ってきた日本刀を屈んで避け、

振り下ろされてきた日本刀を縮地を使って避ける。


左の突きを左の男の目に当て、右の男の顎に二段跳び膝蹴りを当てて倒す。


目を押さえて、日本刀を振り上げた男の顔面に右の真正の突きを当て、

倒す。


残った高田は、正眼に構え、かかってこない。


「残るはお前だけだよ。見て分かったろ?

 お前らは俺の敵じゃない」


「なんて目をしてやがる。お前、狂ってるな。だが、まだ甘い。

 後がお留守だ」


「ふん。そういえば、俺が引っかかるとでも」


突如、左腰に刺すような痛みを感じた。

振り返ると、高田由美子が震えて立っている。

視線を下げると、俺の腰にナイフが刺さっていた。


「ぐうっ。娘まで使うか。さすがヤクザだ」


「なんとでもいえ。その傷じゃ、もう動けまい。

 大人しく俺に命とらせな」


高田が大上段から振り下ろしてくる。

動こうとするが、腰に痛みが走り、動きが遅れる。


俺は上段十字受けで、日本刀を受け、

高田の股間に右の爪先をめり込ませた。

高田は泡をふき、その場に倒れる。


両手に鈍い痛みが走る。

ケブラーのプロテクターのおかげで、斬られはしなかったが、

ヒビでも入ったか。


高田に踵蹴りを食らわそうと、一歩踏み出すと、刺された腰付近に激痛が走った。

ナイフを刺したままのため、出血はひどくないが、ナイフの形状からして、

5~6cmは刺さっているだろうか。


高田由美子が、倒れた高田に駆け寄り、高田の頭を抱く。


「パパ! パパ! しっかりして!」


この女、俺を刺しといて、自分の父親の心配かよ。

まったく、呆れちまう。


「由美、救急車呼べ。俺は、携帯もってきてない」


「勝手に呼べばいいでしょう! あんたなんかに、由美って呼ばれると虫唾が走るわ!」


高田由美子が俺に、スマホを投げつける。

地面に落ちたスマホを、足を引きずって取りにいく。


救急車を呼んでから、俺は端に置いてあった木箱に腰かける。


「由美、一時でも友人の振りしてた俺からの忠告だ。

 父親かもしれないが、その男とはもう関わるな」

 

「何も知らないくせに、わかったようなこと言わないで!」


「知らないよ。俺は他人だ。でも、そいつが根っからのヤクザで、

 汚いことを平気でやる外道だってことはわかる。

 ヤクザなんて、社会に不必要という人もいるが、

 俺はそうは思わない。必要悪だと思う。

 日本にヤクザがいなくなれば、台湾マフィアだの、中国マフィアだのが、

 わんさか入り込んでくるだろう。

 そうなれば、より社会が混乱する。

 犯罪組織と警察が認定しながら、逮捕しないのは、

 そういったことなんじゃないかって、俺は思ってる」

 

「知らないわよ。そんなこと。どうでもいい」


「まあ、聞けよ。救急車の到着まで、まだ時間がある。

 でな、暴力団って、一般市民を食い物にしているわけだが、

 そんな中でも、覚醒剤は、絶対やっちゃいけないと思うんだよ。

 覚醒剤は、人や社会を破滅させる。

 そいつは、金ほしさに、覚醒剤に手を染めてた」

 

「パパが、そんなことするわけないじゃない!」


「はははは。言ってやろうか? お前、薬やってるだろ?」


高田由美子がびくっと反応する。

当てずっぽうだったが、当たりみたいだ。


「その反応は、図星だな。

 なんか、おかしいなとは思ってた。お前って、やたら黒目が大きいし、

 女子大生っていうのに、着るものに無頓着だ。授業中、急に息が荒くなって、

 汗を大量にかいたりしてた。

 何かの病気かと思ってたが、覚醒剤をやってる高田の娘なら、

 やってておかしくないと思ったのさ。

 お前ね、何年やってるかしらないが、そのままだと、人生終わっちゃうよ」

 

「うるさい! うるさい! うるさい!

 全部、お前のせいじゃない!

 全部、お前が悪いんじゃない!

 お前のせいで、パパは組を解散させられた!

 お前のせいで、お金がどんどん無くなってる!

 辛かったパパが、覚醒剤に逃げたって仕方ないじゃない?

 パパのことわかってあげたくて、一緒に薬やっただけよ!

 誰にも迷惑かけてない! あんたみたいな暴力女に、偉そうに言われたくないわ!」

 

「はぁー。お前、救えないな。わかったわかった。

 勝手にしろ。だが、もう薬は手に入らないぞ。

 高田は、もう終わり。忠告を無視して、二度までも薬に手をだした。

 海に沈められるか、山に埋められるか、俺は知らんけどね」

 

気を失っていた高田が、立ち上がり、フラフラと近付いてきて、俺の前で両膝をついた。


「俺の負けだ。俺はどの道、消されるだろう。

 都合のいい話だが、由美は許してやってくれ。

 お前を刺したのも、俺ってことにしてほしい」

 

「ほんと、都合いいな。お前、俺を輪姦して殺そうとしたの忘れてないか?」


「頼む。ただとわ言わねえ」


高田が、腰に手を回して、短刀を抜いた。左手を地面におき、小指側に短刀を突き立てる。


「指つめますってか? 俺はヤクザじゃない。

 そんなもんじゃ、詫びにならないよ」

 

「今の俺には、これしかできん。むん!」


高田が刃を倒し、ごり、ごりっと嫌な音がして、高田の左手の指三本が切り離された。

高田は、中指、薬指、小指を拾い、俺に差し出す。


「それが、お前の覚悟か。お前な、俺がこんなもんもらって喜ぶとでも思うのか?

 気持ち悪いだけじゃねえか」


「そういうな。あとな、ボクサーの大平。あれをお前に返す」


「返す? もう終わったことだ。いらないね」


「あれな、俺が仕組んだ。あいつの友人だとかいうのを人質にとって、

 お前と別れるように脅したんだ」

 

「ヤクザの考えそうなことだ。

 まあ、俺も鬼じゃない。渡光源に、娘の助命は、頼んでやる」


高田は、つぶれた股間と指の無くなった左手を痛そうにしながら、

胡坐をかいた。

 

「すまん。しかし、俺もヤキが回ったな。いつから、こうなったのか。

 いけいけで、鳴らしたこの俺様が。情けねえ」


「ヤクザなんかになるからだろ? まっとうに働いてたら、こうはならなかった」


「違いねえ。お前、小娘のくせに人生わかってるじゃねえか。

 いるか?」

 

高田はそう言って、煙草の箱を俺に差し出す。


「吸わねえよ。俺は清純な女子大生だぞ」


「くくくくっ。俺の股間おしゃかにしといて、よく言うぜ。

 なあ、消えてゆくヤクザの頼みをもう一つ聞いちゃくれねえか?」

 

「なんだよ?」


「そこに伸びてる、俺の子分、いや元子分か。

 そいつらも、由美子のついでに、

 助けてやっちゃくれねえか?」

 

「はははは。巻き込んどいて、どの口がそういうこと言うのかね?

 わかった。言うだけ言ってみる」

 

「ありがとよ。恩に切るぜ。もっと早くに知り合ってりゃ、

 いい飲み仲間になれたかもな」


「はっ。ヤクザなんかと」


高田の手が短刀へと延びる。

玉砕を選ぶか。


「もう、痛い思いはしないほうがいいんじゃないのか?」


「そうは、いかねえよ。どうせなら、お前の手できっちりと終わらせてもらいてえ」


「ふん。散り際は、美しくか。ヤクザの考えることは、わからんね」


「そりゃ、残念だ!」


高田が短刀を拾い、俺へ突き刺そうと手を伸ばす。

股間を潰しているため、動きが遅い。


俺は中腰のまま、右の真正の突きを高田の顔面に入れた。

高田はひっくり返り、首だけあげて、しばらくもがき、動きを止めた。


「人殺し! ちゃんとこの目で見た! お前はパパを殺した! お前は終わりだ!」


「ほんと、救いようのない娘だな。生きてるよ。胸が上下してんだろ?

 気を失ってるだけだ。せっかく親父がお前のこと助けようとしてんだ。

 俺にそういう口きいてると、六道会がお前も連れてくことになるぞ」

 

高田由美子は、その場にへたり込んだ。


「どうなっちゃうの? パパは殺されちゃうの?」


「ヤクザの世界のことは、俺にはわからんね。

 二度も裏切ったんだ。ただじゃ、許してもらえんだろ」


救急車のサイレン音が近付いてきて、近くで止まった。

救急隊員たちが、倉庫に入ってきて、驚いた顔で立ちつくす。


俺は手を挙げて、救急隊員を呼び病院へ搬送してもらった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ