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おやじ彼女  作者: ponta
天下無双
549/570

対峙

「女なら殴らないとでも思ってる?

 あいにくと、俺も女なんだよね。

 さて、ついてくるか? こないっていうなら、

 もう二、三発殴るけど?」


俺が振り被る真似をすると、高田由美子は、顔を庇う仕草をした。


「いく。いくから、叩かないで」


「おっ。素直になったな。素直な娘は好きだよ。

 じゃあ、行くぞ。立て」


高田由美子の腕を引っ張り、店から出て、タクシーを拾った。


******************************


箱崎埠頭に着くと、夜のためか人の気配がない。

タクシーの運転手は、こんなところで降りるの?

と自殺でもするのか? と言いたげな顔だったが、

俺が笑顔を向けると、そのまま去っていった。


俺は高田真由子に電話をかけさせ、その間にセカンドバックから、

スローイングナイフをいれたケースを取り出し、

財布をジャケットのポケットにいれ、

空となったセカンドバッグを海に投げ捨てる。


アドレナリンが脳内を駆け巡る。

相手はヤクザだ。必ず銃を使ってくる。

過去に銃を持った相手と対峙したのは、数回しかない。


刃物には、だいぶ慣れているが、銃を出されると、

体が委縮してしまう。


そうそう当たるものではないと、知ってはいても、

音速を超える銃弾を防ぐ術がないと思うと、

どうしても体が硬くなってしまうのだ。


俺は自分に言い聞かせる。この試練を乗り越えれば、

一段高みに立てると。

死線を乗り越えた先に、強さがあるのだと。


常人から見れば、狂気の沙汰だ。

しかし、常識にとらわれていては、人外の強さを身に着けることはできない。


高田由美子が電話を切ると、50m程離れた倉庫の扉が開いて、

男がこっちだと手を振った。


俺はスローイングナイフを右手に隠し持ち、左手で高田由美子を押し、

倉庫へと近付く。


倉庫の5m程手前で止まり、周囲に気を配りながら、高田由美子の

肩越しに、男に話しかける。


「こんばんは。木崎さんですよね? さて、どうします?」


「木崎だ。お嬢さんは、関係ない。お前だけ入ってこい」


「関係ない? 私を罠にはめようとしたのに?」


「口の減らねえ女だ。わかった。入ってこい」


倉庫には大勢いるかと思ったが、意外にも5人しかいなかった。

20m四方のガランとした中に、パイプ椅子に座った高田を中心に、

一見してヤクザとわかる男たちが、脇を固めていた。


高田が立ち上がり、白鞘の日本刀を手にした。


「あらー。高田さん、立派なお姿ですね。

 この前、お会いした時とは、大違い」


高田のこめかみが、ピクピクと痙攣する。


「みんな手前のせいだろうが!!

 兄弟まで、やりやがって、お前のような女、

 最初に殺しとくべきだった。

 だがな、組は解散させられちまったが、

 俺には、慕ってくれる子分がいるんだよ」


「まーだ、そんなこと言ってるんだ。

 渡光源が、女一人守れなかったとかいうくだらない理由で、

 子分を切ると思うか? ばれてんだよ。

 お前が、覚醒剤に手を染めてるって」


「親父が? ふん。どうせ、組から抜けようと思ってたところだ。

 ちょうどいいやな。おう、お前ら、この女に」


その時、高田の横に立っていた木崎が銃を抜いた。

俺はナイフを反射的に投げ、木崎の右腕にナイフは刺さった。


次のスローイングナイフを右手に掴み、構える。


前腕にナイフが貫通した木崎が、俺を怒りの表情で睨む。


「このあま~!」


「動くな。動けば、次は眉間を狙う」


緊張から、俺の声は震えてしまう。

木崎は、顔をしかめながらも、背筋を伸ばした。


「お前、殺しの経験あんのか?

 ねえよな? 俺たちは暴力のプロだ。

 常に命の取り合いよ」


「殺したことはない。だが、今の状況なら、

 正当防衛が成立する」


木崎が銃を拾う。俺はナイフを再び投げ、

今度は左肩にナイフが刺さる。


「いてえなあ。おい。しかし、俺の聞き間違いか?

 眉間を狙うんじゃなかったのかよ?

 ビビってんのか? ええ、お嬢ちゃん?」


木崎が俺に足早に近寄ってくる。

背筋にぞくぞくした、感覚が走る。

 

木崎が俺の目の前で、銃を上げようとした瞬間、

俺は横に動き、右前腕に突き刺さったナイフを掴んで、

ぐいっと下に動かした。

木崎が、銃を落とし、顔をしかめる。


「お前、今、俺を殺そうとしたよな?

 なら、殺されても文句は言えんぞ」


「舐めんな! クソガキが!」


殴りかかってきた木崎の左を避け、

カウンターの右を鼻面にあて、木崎が後に下がったところに、

右の前蹴りを顔面に入れる。

まだ立っていたので、左の跳び膝蹴りを入れると、

木崎は倒れ、ビクビクと痙攣する。


汗が噴き出てくる。

死の恐怖と、他人を殺すかもしれないという高揚感が、

同時に体中を駆け巡る。


これは命のやり取りだ。この猛り、殺される前に殺せと本能が、

訴えている。

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