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おやじ彼女  作者: ponta
天下無双
548/570

反撃

運転手と助手席の男が、俺が寝ていると思って、好き勝手な会話をする。


「兄貴、上玉じゃないっすか。俺もいいすか?」


「構わねえよ。撮影が終わったら、好きにしな。

 後は頼むぞ。俺は、叔父貴に報告してくる」


「任せといてくださいよ。空手つかいだか何だか知らないが、

 ひーひー言わせてやりますよ」


車に元からいた男と、店で俺を背負った男がバトンタッチし、

俺は、車にいた男に背負われて、マンションの一室に運ばれた。


部屋はガランとしていて、部屋の四隅にライトが設置され、

三脚にのったカメラがあるほかは、男が5人いるだけだった。


「さあ、お前ら、お待ちかねの時間がきたぞ!

 馬鹿! なんで服きてやがる! 男の脱ぐとこみて、楽しいわけねえだろうが!

 さっさと脱げ!」


俺は床に寝かされ、男たちが服を脱ぎ始める。


俺が、立ち上がって伸びをすると、一人スーツを着て、カメラをいじっていた男が、

驚きの声を上げた。


「な?! 起きてるじゃねえか??」


「こんばんはー。なんで服脱いでるんですか?

 ストリップか何か?」


服を脱ごうとしていた男が俺に飛びかかってくる。

俺は左の突きを男の顔面にいれ、続いて股間を蹴り上げて倒す。


「いいですねー。この指輪チタン製なんです。

 硬くていい感じ。これ付けて殴れば、私の力でも、頬骨が折れるみたい。

 ほら、この人見てみてください。ぶっくり腫れてきてるでしょ?」


男たちの顔色が変わる。


「何してる! 早くその女、捕まえろ!」


掴みかかってきた男の手を屈んで避け、

伸びあがって顎に頭突きする。


右のフックを叩きこもうとしたら、そいつは血しぶきを上げ、そのまま倒れた。

残った3人は、恐怖の色がありありと浮かぶ。


俺は腰のケースから特殊警棒を出し、振って伸ばしてから、

くるくると回す。


「あれれ? 私がこういう女だって聞かされてなかった?

 ただ、女子大生を犯せとしか言われてなかったのかな?

 かわいそうねえ。気持ちいいことしにきて、痛い目見るなんて」


「じょ、冗談じゃねえ!」


半裸の男二人ちが、脱兎のごとく逃げ出していく。


「待て! こら、待て!」


スーツ姿の男は、一人残され、俺が微笑みかけると、

ズボンに刺していた短刀を抜いた。


「ざけやがって! 筋もん舐めたら、どうなるかわかってんだろうな!!」


「はーん? お前、手が震えてるよ。

 怖いんだろ? ここに転がってる奴らみたいになるのが。

 こいつなんて、顎割れてるよ。飯が食えないどころか、

 まともにしゃべれない。唾を飲みこむだけで、脳天まで痛みが走るだろうね」


「おおおお!!」


男が短刀を腰で構え、俺に突っ込んでくる。

俺は縮地を使って避け、男の手に警棒を振り下ろした。


「ぎゃっ!」


男は悲鳴をあげて、短刀を落とす。

俺は警棒で、男の肩や腕を殴りつける。


「ぐえっ。ぎゃっ」


しばらく殴ると、男は蹲って、震えている。

俺は男の頭を蹴り、地べたに這わせる。


「さて。そろそろ素直になれるかな?

 誰だ? 誰に命令された?」


男は、口から血をペッと吐き出した。


「ちきしょう。何が楽な仕事だよ……」


俺は安全靴の爪先を、男の口に入れ、グイッと踏んだ。


「んー!」


「答えねえなら、このまま歯抜けになってもらう。

 言う気になったか?」


男が、涙目でうんうんと頷く。

俺は足を、男の口から抜いた。


「げえっ。げふっ。た、高田さんだ。元直参の高田組長だよ」


「ああ。あのおっさんか。俺のおかげで、破門を解かれたってのに、

 何を逆恨みしてんだか。あ、由美子って高田の娘?

 そういや、同じ苗字だ。そかそか。嬉しくなってくるねえ」


俺は男の口を思い切り蹴って、失神させてから、

由美子に連れられていった店に戻った。


******************************


店の前で、困った。インターホン的な物がない。

そういえば、由美子はカードのようなものを左にあるリーダーに翳していた。


どうしたものかと、思案していると、自動ドアがあき、

ホステスと客が出てきた。

俺は、するりと横をすり抜けて、中へと入る。


「あ、ちょっと。ダメよ、あなた!」


自動ドアが閉まると、黒服が俺の方へ寄ってきた。


「お客様、当店は会員制ですので」


黒服が、肩に置こうとした手をかわし、俺は奥へと進む。

どうやら、まだ高田由美子は、飲んでいるらしい。


「おい! ちょっと待て!」


後から掴んできた男の手の勢いに逆らわず、俺は反転して、

男の鼻面に頭突きする。


顔を押さえて動きを止めた男にハイキックを入れ、倒す。

ホステスの悲鳴が、店に響き渡り、黒服やボーイが集まってくる。


「ごめんなさい! 大丈夫ですか?!」


俺は倒れた男を気遣うふりをして、踏み込んで一番近い奴に、

逆突きを当て、ソファーを跳びこえ、奥へと走る。

右から迫ってきた奴の側頭部にエンピを入れて倒し、

続けてきた奴の股間を蹴り上げる。


男たちが、動きを止める。暗くて顔は見えないが、

恐怖を感じたか。


「邪魔しないでもらえるかな? 奥にいる高田由美子に話があるだけだ」


男たちが動けないのを確認して、俺は足早に、高田由美子の元へと近付いた。

照明に照らされた高田由美子は、驚きの目で俺を見る。


「間抜けな顔してるな。俺が戻ってきたのが、意外だったか?」


「あんた、どうして」


「それは、酔った振りしてたことか? 

 それとも、ヤクザ含めた3人を血だるまにしてやったことか?」


高田由美子が、スマホを取り出し、どこかにかける。


「木崎どうなってるの? 大野」


俺はスマホを取り上げて、耳にあてる。


「お嬢さん、どうしたんですか? 大野奈津美なら、今頃」


「こんばんは。大野奈津美です」


「てめえ! 拓哉はどうした?!」


「拓哉? 一人だけスーツ着てたやつか?

 タコ殴りにしてから、歯を砕いてやったよ。

 あいつ、総入れ歯だよ。かわいそうになあ。

 うひひひ」


「極道に、舐めた口きいてると、どうなるかわかってるよなあ?」


「えっと、木崎さんって言いましたっけ?」


「それがどうした?」


「私が、渡光源さんと仲良くさせてもらってるのは、ご存知?」


「お前、本家筋の人間か……」


「知らなかったんですね。なら、内緒にしてあげます。

 その代わり、今、どこにいるのか教えてください。

 できるなら、高田さんも呼んでもらえると助かります」


「……。本家の名前、出せばビビるとでも思ったか?

 ヤクザは舐められたらおしまいよ。

 ケジメは取らせてもらうぜ!」


「ケジメねえ。だから、こっちから行ってやるって言ってんだ。

 それから、俺の目の前には、高田由美子がいることをお忘れなく。

 俺ってさあ、残酷だよ。嘘だと思うなら、俺を連れ込んだマンションに行ってみなって。

 死にかけてるのが、何人か転がってるから」


「ここまで馬鹿にしてくれたんだ。死んでも後悔せんよな?」


「だから、行くって言ってんだろ? お前、頭悪いなあ。

 場所言えよ。それとも、高田由美子が、総入れ歯になった姿見たいか?」


「わかった。箱崎ふ頭に来い。ついたら、連絡しろ。

 詳細を教える。お嬢さんには、指一本触れんじゃねえぞ?

 わかったな?」


「お前ねえ、ガタガタ言える立場か?

 俺の気が変わって、渡光源に連絡したり、警察に行ったら、

 お前ら終わりだよ?」


「どういう女だ。肝が据わってやがる」


「なんていっても、空手日本一らしいですから。うふふふ」


「チッ。早く来い。待ってるぞ」


俺は電話を切って、高田由美子に投げ渡す。


「さーてと。箱崎ふ頭まで、ドライブしようか?」


「なんで、私が! ふざけないで!」


「あははは。お前、面白いね」


俺は高田由美子の顔を軽く殴った。

高田由美子は、何が起こったのかわかっていないのか、

流れ出た鼻血を、指ですくって見る。

殴られ慣れていない人間は、大抵こういう反応をする。

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