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おやじ彼女  作者: ponta
天下無双
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訪問

「平田、原田! 戻ってくれるのか?」


「俺は戻る。強くなるために、空手部に入ったんだしな」


「俺もだ。このまま、やられっぱなしじゃ、なんか悔しい」


俺は三人に歩み寄る。


「改めてよろしく。一緒に頑張りましょうね」


スキンヘッドの平田が、眉を潜める。


「ほんと、こうしてると普通の女の子だよなあ。

 こんな細くて、めちゃくちゃ強いなんて、今でも信じらんねえよ」

 

大柄で、185cmはある原田が、うんうんと頷いた。


「まったくだ。こんな女みたことない」


俺は原田に、思い切りボディブローを打った。

硬い腹筋に、拳が押し戻される。


「なんだ? いきなり?」


「鍛えてんなあ。不意打ちだったのに見事だ」


「やっぱ女の力だ。なんでこんなパンチで、ぶっ飛ばされるんだ?」


「もう一発食らってみるか?」


「いつでもどうぞ」


俺は真正の突きで、腹を殴った。

原田は、体を九の字に曲げ、苦痛に顔を歪める。


「女の力がなんだって?

 俺はこういうのが打てるんだよ。

 まあ、よろしく頼むわ」


「うっく……。よ、よろしく」


上島が、呆れ顔で俺を見る。


「また、磯野さんは意地悪だなあ。

 あのな、磯野さんは光臨会の大先輩なんだよ。

 敬意を払えよ。お前ら」

 

二人が、顔を見合わせる。

その二人の肩を、真鍋さんがバンと叩いた。


「よし! なら着がえてこい!

 練習開始だ!」

 

『押忍!』


それから、真鍋さんに練習を見てもらい、いい汗を流した。


*******************************


19時過ぎに練習が終わり、俺は自転車で典子の家に向かった。

南西大学から、典子の家までは3Km程度しか離れておらず、

15分程度で着いた。


門前で自転車を降りると、スウェット姿で、無精ひげを生やし、ぼさぼさ頭の男が、

へこへこしながら挨拶してきた。


「お久しぶりです。へへへっ」


誰だろうか。見た覚えはないが。


「こんばんは。どこかでお会いしましたか?」


「高田ですよ。お忘れですか?」


高田? 前にベンツに乗せてくれた奴か。

確か、組長として一家を構えていたはずだが、この落ちぶれようはどうだ。


「高田さん、どうしたんですか?」


「へへへ。下手打って、破門されてたんですが、

 大野さんのおかげで、復縁してもらいました。

 一兵卒からやり直せってことで、いまじゃ雑用しています」

 

そうか。こいつは、マムシの連中が俺にちょっかいかけてきていたのを、

解決したと言っていた。


そのあとに、俺が襲われたので、典子のお父さんがキレたんだな。

しかし、俺、なんか言ったっけ? こいつが破門されたのも知らなかったのに。

まあ、いい。ヤクザの世界に興味はない。


その時、敷地内から黒いスーツ姿の、いかつい奴が出てきて、林の背中に蹴りを入れた。

林はバランスを崩して、片膝をつく。


「高田! 玄関前を掃いとけつったろうが! 手前は、まーだ直参のつもりか!」


「す、すみません。へへへっ。すぐやります」


高田は俺にぺこりと頭をさげ、敷地内へとかけていく。


「ふん。ヘタレが。大野奈津美さんですね? お嬢様がお待ちですよ。

 どうぞ、こちらへ」

 

「はい。ありがとうございます」


黒服に続いて、門をくぐると、松葉箒を持った高田が、庭を掃いていた。

前は、それなりに風格があったが、可哀そうに。

ヤクザなんて、やるもんじゃないな。


玄関から邸内へ入り、廊下を奥に進むと、典子の声が聞こえてきた。


『何やってんの! なんでこんなのを買ってくるのよ!!』


うわっ。なんか不味い時に来ちゃったかな。

黒服がドアをノックして、ドアを開け、隙間から中を覗き込む。


「お嬢さん、大野さんが見えられました」


「通して」


部屋に入ると、典子が正座したチンピラを叱りつけていた。


「典子、どうしたの?」


「奈津美、聞いてよ! こいつったら、第六世代を買ってきたのよ?

 馬鹿かってもう! 赤松! もう一回、お店にいって、取り替えてきてもらって!

 ダッシュよ、ダッシュ!」

 

「へ、へい!」


チンピラが部屋を飛び出しても、典子はぶつぶつと文句を言っている。


「何を買ってきてもらったの?」


「CPUよ。CPU。第七世代が出たばっかだから、買いに行かせたら、

 あいつ第六世代買ってくんのよ? ほんともう、使えないったらありゃしない」

 

典子の部屋は、10畳ほどの部屋に鉄製の棚が並べられ、パソコンの筐体が並んでいる。

机には、でかいモニターが3つ並べられ、三面鏡のように置かれていた。


「典子って、パソコン好きだったんだね。知らなかったよ」


「奈津美、これ内緒ね。女でパソコン好きっていうと、変な目で見られるしさ。

 私ね、FPSが好きなのよ。だから、反応がいいPC自作してるの」

 

「ふーん。そうなんだ。それは、そうとお父さんにお願いしたいことあるんだ。

 いい?」

 

「うん。いいよ。リビングでお父さん待ってるから、行こうよ」


典子と二人で、リビングに行くと、渡光源がくつろいでいた。

俺を見ると、立ち上がり、破顔して迎えてくれた。


「よく来てくれたね。ささ、座って座って。大野さんに、コーヒーをお出ししろ」


若い者に指示を出すときは、威圧的な目になる。

さすが、九州一円を勢力圏とする六道会のトップだ。


「ご無沙汰しておりました。典子とは同じ大学になりましたので、よろしくお願いします」


「聞いてるよ。君が一緒だと典子も安心だ」


典子がお手上げのポーズを取る。


「この前なんて、絡んできた奴ら、あっという間にぶっ飛ばしちゃうんだもん。

 さすが、奈津美って感じ」

 

「ははは。下手なボディガードも真っ青だな。で、大野さん、頼みというのは何だね?

 君の頼みなら、大概のことは聞くよ」

 

「そうそう、パパ。奈津美が困ってるのよ。エロ親父から助けてあげて。

 車をどっちが多く売るかで、競争してて、負けたら奈津美がみんなの前でストリップさせられるの」

 

「何?」


渡光源の顔が険しいものになった。

目に凶暴な光が宿っている。

このおっさん、殺すとか言いかねないぞ。


「わかった。今、アルバイトをしてるところにいる男なんだね?

 早速、明日にでも誰か行かせて、止めるように言い聞かせよう。

 もう大丈夫。私に任せなさい」

 

「あ、いえ、私が今日来たのは、止めてほしいわけじゃなくて、

 ちょっと車を買う人を紹介いただけませんかということでして。

 一度受けた勝負を投げ出すのは、なんだか嫌なんです」


渡光源は、苦笑いして、お茶を一口飲んだ。


「相変わらず、面白い娘だ。よかろう。何台買えばいいんだい?」


「あ、いえ、知り合いにも声をかけているので、本当に買う人を探していただけるだけでいいんです。

 いざとなったら、自分で車を買って、勝ちに持っていきますので」


「はははは。君は、豪胆だね。本当に私の配下に加えたいよ。

 まあ、典子に怒られてしまうから、それもできんがね。

 わかった。知り合いに声をかけて、車を買いそうな者を見つけておこう」


「ありがとうございます。4月末までの勝負なので、よろしくお願いします」


典子がぶすっとふくれっ面になる。


「パパに潰してもらった方がいいのに。ほんとに勝てるんでしょうね?」


「大丈夫だって。タクシー会社が20台って言ってただろ? 

 それから、いままでに10台ぐらい売ってるから、

 30台。月末までということを考えて、多くて40台ってところだろ?

 軽自動車なら、俺の貯金で50台以上は買えるよ。買ってすぐに売れば、そんなに損しないし、

 大丈夫だって」


「うーん。それならいいけどー」


渡光源が、くすっと笑った。


「典子、パパに任せておきなさい。台数が足りなそうだったら、

 パパが20台でも30台でも買ってあげるよ。

 お前の親友にそんな恥ずかしいことはさせないさ」


よしよし。これで、勝ちはもらったな。あのおっさん、悔しがるぞ。

ざまあみろってんだ。


「話しは変わりますが、高田さんどうされたんですか?」


「会ったのかね?」


「ええ。前は、組長さんをされていましたよね? 私のことで、破門になったとか」


「ああ、そのことか。実を言うとね、林は、シャブ、覚せい剤に手を出してね。

 君のこともあったし、破門にしたんだよ。

 だが、君が破門を解いてくれというので、一兵卒からやり直させている。

 本来なら、博多湾に沈めているところだ」


なるほど。前々から処分しようとしていたところに、俺の一件があったので、

それを理由にして、追い込んだんだな。

俺の一件だけで、破門にするってのは、どう考えてもおかしいもんな。


「そうなんですか。ヤクザの世界って厳しいんですね」


「ははは。まあ、そんな話はいいじゃないか。

 出前を取っているから、一緒にいただこう。

 君の武勇伝をゆっくりと聞かせてくれ」


それから、食事をご馳走になり、楽しい一時を過ごした。

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