刺客
「一発で、わかったぜ。あんた大野奈津美だな? 何でも絶対にタイマンは受けるって?」
白いジャージをきた男は、短髪で175cm、70kg。右腕が太く拳ダコがある。
「典子、聞いた? ほんと、私って変なの引き寄せるよねえ。
お前はどこでやられたい? ここか、それとも場所変えるか?」
「やる気満々じゃねえの。ついてこいや」
「くくくっ。楽しくなってくるねえ。タイマン? 何で高校生の真似事してるかなあ。
お前、二十歳超えてるだろ?」
男は、苦笑いを浮かべると、舌打ちした。
「何でわかった?」
「その拳タコ。それから、お前みたいな老けた高校生は見たことない。
お前、何やってる?」
「ばれちゃしょうがない。空手だよ。あんたと一緒さ」
「ふん。素人の振りして、相手油断させようってセコイ奴と、
一緒にされたかないね。後ろの奴らも見学って感じじゃなさそうだ」
「こいつらは、立会人だよ。光臨会は、汚い手を使うからな」
「じゃ、さっさと行こうぜ。腹減ってんだ。ちゃちゃっと終わらせてやるよ」
男たち三人に囲まれ、脇道に入り、通りから一本入ったアパートの駐車場へ入る。
三人とも有段者だな。隙が無い。
男たちは、俺の逃走を警戒してか、入り口付近に陣取る。
俺は、典子に鞄を預け、上着を脱ぐ。
「さて、はじめましょうか。あ、その前に、お名前は?」
俺はそう言って、後ろ手に首をかしげる。
男は、少しにやけた。
「石津健司だ。では」
構えようとした男に、俺は頭をぺこんとさげ、両手を差し出す。
「握手、いいですか?」
「お、おお」
男が俺の手を握ってきたので、俺は股間を蹴り上げた。
「ぎゃっ」
石津は、泡を吹いて股間を押さえながら、倒れ込む。
石津の股間が濡れ、徐々に真っ赤に染まっていく。
「おっ! 典子、見てみ! たまたまチャンが、つぶれたよ!
これ、タイミングあわないと無理なんだよねえ。
皮からね、睾丸が飛び出すんだ。真っ赤でおもろいよ」
後の二人の顔が強張っている。
「卑怯かな? ここは、試合場じゃない。
油断するのが間抜けなんだよ。
さあ、次はどっちだ? 二人同時でもいいんだぜ?」
左の奴が、雄たけびをあげてかかってくる。
「おおおお!!」
右フック、左アッパーを避け、俺は右の関節蹴りを当てる。
男は顔をしかめ、左足を引きずりながら、後に下がる。
「ははは。お前らどこの流派だ? 蹴りの受け方もしらんのか?」
俺は二段跳び膝蹴りをだす。
男は俺の左の跳び膝蹴りをブロックしたが、右の膝蹴りを顎にあててやると、
顔を背けて距離を取ろうとする。
俺は右のハイキックで顔を蹴りぬき、男を倒した。
「さて、待たせたな。お前が最後だ」
最後の一人は、いつの間にか典子の髪の毛を掴み、
右手に特殊警棒を握っていた。
「く、くるな! この女がひどい目にあうぞ!」
「痛い! 放して! 放してって!」
典子は痛がり、髪を手で押さえる。
「おい。お前、死にたいのか?」
そういいながら、俺は、男に近付く。
「うるせー! 近付くな!」
「お前がいま、髪の毛掴んでる典子はな、六道会、会長の娘だよ。
お前、親父さんがこのこと知ったら、殺されるよ。
お前だけじゃない、お前の家族も全員な。
やくざは怖いぜー。楽に殺しちゃくれないよ」
男はぶるぶると震えている。
「そんなに怖がらないの。一瞬だから」
俺は力を溜め、男に向かって跳び、男の顔面に頭突きした。
男は鼻から血を噴き出しながら、後に倒れた。
「へっ。ばーか。武道家の風上にも置けん奴だ。
典子、大丈夫か? けがはない?」
典子は倒れた男に蹴りを入れる。
「痛いじゃないのー! せっかくセットしたのに、髪めちゃくちゃよ!
なんとかいえ!」
「典子、そいつ気絶してるって。さてと、どこのどいつか吐かせるか」
俺は、一番ダメージが低そうな、ハイキックで倒した奴の胸倉を掴み、
頬を張った。
「あっ、うっ」
「目が覚めました? どの流派か教えてください」
「だ、誰が言うか!」
俺はそいつの顔を、左に向け、鼻が陥没して、気を失っている奴を見せる。
「ああなりたい? そうおっしゃるんですね。では」
俺が拳を振り上げると、男は態度を変えた。
「やめてくれ! 俺が言ったって、言わないでもらえるか?」
「ふん。しゃべる気になったか。黙っててやるよ。さあ、いいな」
「し、至誠会」
「ああ、至誠会ね。ご苦労、じゃあこいつら病院に連れてってやれ。
あと、来るときは連絡してからこい。
今日はジーンズだったからいいけど、スカートならお前らこんなもんじゃすまないよ。
俺のパンチラは、高くつくんだ。わかったな?」
「わ、わかった」
「さて、お待たせ。典子、行こうか?」
それから、典子とランチをすませた。




