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おやじ彼女  作者: ponta
天下無双
529/570

入部

「おっと。変な真似は、止めてもらえますか?

 私、レイプされたっていって、警察に駆け込みますよ。

 困るんじゃないかなあ。4年生になって、退学とかになると」

 

「俺らはなんもしてねえだろうが!」


「そうですね。でも、私がこんな格好で駆け込んだら、警察はどっちを信じるでしょうね?」


俺はブラウスのボタンを引きちぎり、ブラを露出させる。


「なんだ、この女? 頭おかしいんかよ?」


「馬鹿なお前らに、世の中の厳しさ教えてやる。ありがたく思え。

 お前ら、黒帯締めてるな? かかってこいよ。強いんだろ?

 俺をぶちのめせたら、大人しく空手部に入ってやるよ。

 俺、いい女だろ? 奴隷にできたら、楽しいぜえ?」

 

男たちは、ごくりと唾をのみ込み、俺の周りを取り囲む。


「あーあー、やだやだ。揃いも揃って、俺のこと知らないんだな。

 俺は大野奈津美だよ。聞いたことあんだろ?」

 

男たちは顔を見合わせ言葉を交わす。


「大野奈津美?」

「ほら、年末のブレイブにでてた」

「神明館の試合で優勝した女か?」

「うわっ。本物はじめてみた」

「馬鹿、偽物だよ。こんなに華奢なはずない」


正面の奴が、ぺっと唾をはいた。


「お前な、年上をからかうなよ。

 本物だっていうなら、俺を倒してみな」

 

「あ、そ。じゃあ、おやすみなさい」


正面の男の顎に二段跳び膝蹴りをいれると、男は血を口からしたたらせ、

後に倒れた。


残った男たちは、驚き、恐怖の顔で俺から距離を取る。


「あれ? もう降参か?

 なら、俺の勝ちってことで、空手部の看板はもらっていくな」

 

「看板だと? ふざけんな!」


右から殴りかかってきた奴の拳をスウェーでかわし、股間を蹴り上げる。

男は泡を吹きながら、前のめりに倒れる。


「よわいねえ。下級生いじめが忙しくて、練習さぼっちゃったかなあ。

 ほれ、どうした? 二人同時にかかってくれば、俺を倒せるかもよ?」

 

「石井!」

「お、おう!」


左からの蹴りを縮地を使ってかわし、右からの突きをダッキングでかわし、

前へ数歩動いて、振り返る。


「おしい! いまのおしい! せめて、今の1.5倍速なら、かすったかもしれないのに」


「馬鹿にすんじゃねえ!」


一人が、正面から左右の回し蹴りを連続で放ってくる。

俺は鼻先で避けながら、乱れた前髪を、右手ですく。


「あたれ! あたれ、この!」


俺が軸足に、ローキックを当てると、男は尻もちをついた。


「ほら立て。今度は受けだ。俺の突きをかわしてみな」


「女の突きで、俺がやられるとでも!」


立ちあがったそいつの顔面に、右の真正の突きをぶち当てる。

男は鼻血を出しながら、後に倒れ痙攣する。


「女の突きがなんだって? あれま。失神してやがる。

 ほれ、どうした。あとはお前だけだ。かかってこいよ」

 

「ば、化け物だ!」


残った一人は、脱兎のごとく駆け出し、すぐに校舎の陰に消えた。


「歯応えないなあ。準備運動にもなりゃしない。

 上島、見たか? これが、光臨会の」

 

振り返ると、いつの間にか、騎馬立ちをさせられていた連中が、

後に集まっていて全員膝をついていた。


「おわっ。びっくりした。何かようか?」


同じように膝をついていた上島が、手を地面についた。


「磯野さん、空手部に入ってください。お願いします!」


「お願いしますってお前なあ」


上島の後にいた奴らも全員地面に手をつき、頭を下げる。


『お願いします!』


「うーん。そういわれても、光臨会に行く時間が減るのは嫌だし、

 第一、ここって光臨会じゃないだろ? どこの流派なんだ? 

 普通の門下生ならいざしらず、山下師範の愛弟子である俺が、

 はい、そうですかって入れないよ。

 ほら、見っともないから、みんな立って」


上島は、額を地面にこすりつける。


「どうかお願いします! ご指導ください!」


「入部しろから、指導しろに要求があがってるじゃねえか!

 俺は、まともに人に教えたことなんてないよ。

 指導してほしいなら、木村か伊藤に頼め」


「お願いします! 磯野さんのように強くなりたいんです!

 お願いします! お願いします!」


通りかかった人が、何事かという顔で、足を止める。

だんだんとその人数が多くなっていく。

くそっ。なんか、俺が悪いことしてるみたいじゃないか。

 

「あー、もうわかったから、とにかく立て。

 これじゃあ、俺が土下座させてるみたいに思われちまう」


「押忍! ありがとうございます! ほら、みんな立て!」


『押忍!』


空手着姿の奴らに混じって、新入生4人の姿もある。


「あなた達、もう帰っていいわよ。悪い奴らは退治したから」


がりがりに痩せている奴が、顔を紅潮させながら、正拳突きの真似をする。


「自分は感動しました! 綺麗な人だとは思っていましたが、あなたがあの大野奈津美さんだとは!

 自分も強くなりたい。空手部に入って鍛えたい」


「うーん。空手って、きついよ? 汗臭くて女にもてないよ? せっかく大学に入ったんだから、

 楽しいことした方がいいよ?」


茶髪の奴が、うんうんと頷く。


「俺も同感! あんなすごいの見たことない。空手習ってみてえ」


困ったな。でもまあ、少し稽古みてやったら根をあげるだろうし、

いいか。


「そこまで言うなら、一緒に空手部に入りましょう。

 あ、それと、上島! ……さん」


「押忍! 磯野さん、上島でいいっすよ」


「そんなわけにはいかないでしょう? 光臨会ならいざ知らず。

 あ、それと、部内では私のことは、大野って呼んでください」


「なぜですか?」


俺は上島を睨む。


「おい。俺が言うことには素直に従え」


「お、押忍! 失礼しました!」


「ん。よろしい。では、上島さん、空手部の指導に来てくださってる方の

 連絡先を教えてください」


「押忍。携帯にいれてあるので、少々お待ちください」


上島が、芝生のところから、スマホを持ってくる。


「押忍! この方です」


「真鍋さんって、龍泉会の真鍋さん?

 龍泉会なら、大丈夫かな。

 ちょっと、スマホ借りていいですか?」


上島のスマホから、電話をかけるが、留守電となってしまった。


「でないな。しかたない。後で連絡するか。

 じゃあ、全員道場へ。駆け足!」


部員たちが、一斉に走っていく。

俺が引きちぎったボタンを探していると、新入生の一人が、傍に立っていた。

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