寄付
「大平君、おかしくない? いったい何に使っているの?」
「え? いや、それはほら、グローブ買ったり、シューズ買ったりとか」
私は大平君をじっと見つめる。
大平君は、困った顔で、目を逸らし、ちらちらと私を見る。
「大平君、あなたのお金を何に使おうが、あなたの自由よ。
でもね、税金は翌年にくるの。なんで、全部使っちゃうの?
少しは考えなさいよ」
「そんな風に言わなくていいじゃないか。
俺だっていろいろ考えてるよ」
「考えてる人が、そんな無駄使いする?
だいたいあなたは、ちょっとお金が入ったからって、
後先考えずにお金使っちゃうような計画性のない人だったの?」
「うるさいなあ。ガタガタいうなよ」
「そうね。私が言うことでもないし、勝手にすればいいわ。
お金使いたきゃ、好きなだけ使いなさい。
何が、二人の将来を考えてるよ。一遍、頭みてもらったら? 私、帰る」
帰ろうとする私の横を大平君がついてくる。
「ついてこないで」
「俺はただ歩いてるだけだ」
「これ以上、ついてくるとあばら折るわよ」
「言い過ぎた。謝るよ」
「煩いわね。消えてくれない?」
「聞いてくれって」
「私帰るんだからついてこないで」
「寄付したんだよ」
「寄付?」
「俺が前にいた和白の青松園に寄付したんだ。勝手にやったのは謝るよ。
でも、何かしたくてそれで……」
「呆れた。何で一言相談してくれないの?」
「ごめん。金は、世界チャンピオンになってからまた稼ぐからさ。
10回は防衛するよ」
「大平君、私、お金に困ってるように見える?
大平君が、お金稼ぐから付き合ってると思う?」
「思わないけど」
私はため息をつく。そうなのだ。この人はぶっきらぼうに見えて、
その実、人のために何かする人なのだ。
自分が大切と思う人を決して裏切らない人なのだ。
だから、私は惹かれ、こんなに好きになったのだろう。
「お金に執着心がないのもいいけど、税金のこととか考えてね。
光臨会に出入りしている税理士さん紹介してあげるわ」
「税理士? いいよそんなの」
「よくないの。寄付した分の何割かは、税金の優遇うけれるんだよ?
私たちもいつまでも子供じゃないんだから、そういうことちゃんとしないと。
でも」
私は足を止め、大平君の手を引いて止まらせる。
「何?」
「大平君、好きだよ」
「あ、え、うん。お、俺も」
大平君が私の両肩に手を置いたので、私は膝蹴りを入れた。
「うぐっ。な、なんだよ……」
「こんな往来で、キスしようとする愚か者には、お仕置きよ。
じゃあ、行きましょ」
「行くってどこに?」
「青松園よ。彼氏が寄付してんのに、私がしないわけにはいかないでしょ?」
「う、うん!」
私は大平君と青松園へ向かった。




