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おやじ彼女  作者: ponta
壮士凌雲
518/570

突入

田崎は、煙草を投げ捨て、金属バットを肩にからう。


「おう、メガネ。自慢の策が効いてねえぞ? どうすんだ?」


「むー。別の出入り口を使うとはなんと姑息な。

 えーい、各個撃破です!」

 

「はっ。それが策かよ! いくぜ、おらー!」


田崎は文句を言いながら、走り寄ってきた男の木刀の一撃を避け、思い切り男の脛をぶったたく。


「三鷹水産なめんじゃねえ!」


男が二人、俺に接近してくる。二人とも手に角材を持っている。


「とったー!」


俺は振り下ろされた角材を縮地を使って避け、一人の横っ面を棒で殴り、もう一人の喉を棒でついた。


「まったく、こんな美人に角材振り下ろすかあ?」


俺の周りを取り囲んだ奴らを威嚇しながら、俺は倒れた一人の顔面に踵蹴りを落とす。


「お前ら、そういう危ないものを持っているってことは、自分がやられる覚悟もあるんだろうな?

 俺は武器もってかかってくる奴には、手加減しねえよ?」

 

俺は棒を体の前でバトンのように回す。回す速度をあげ、風切り音のテンポが速まると、

男たちの顔に、戸惑いの色が見えた。


「あれあれー? びびっちゃったかなあ。

 逃げてもいいよー。追わないから。

 武器おいて、回れ右しな」

 

俺の言葉に、顔を見合わせ、逃げようと目で合図している二人に、

俺は棒を振り下ろし、倒す。


倒れた二人を見て、男たちは後ずさりする。


「話聞いてたか? 武器おけつったんだよ。

 いうこと聞かない悪い子は、お仕置きしちゃうよーん」

 

「じょ、冗談じゃねえ。こんな女、相手できるか!」

「逃げようぜ!」

「お、おう」

「俺も」


木刀や金属バットを投げ捨て、男たちは学校の外へ逃げていく。


俺にかかってきていた一団が逃げたのを見て、田崎たちを取り囲んでいた連中も、

顔色を変えた。


俺は鼻歌交じりに、歩きながら朝鮮高校の生徒を殴り倒す。


悲鳴が上がるたびに、一人、また一人と逃げ出していき、松下と三野の傍に行った時には、

朝鮮高校の生徒は3人しか残っていなかった。


「汚ねえぞ! んなもん使いやがって!」


「金属バットやら、木刀やらで武装した奴らがよく言うよ。

 ガタガタ言わんとかかってこいよ」

 

「同時にかかるぞ!」

「おお!」


長髪の奴と、ピアスをした奴が、金属バットで殴りかかってきた。

俺は長髪の脛を棒で払い、ピアスをした奴の金属バットをかわし、膝蹴りをみぞおちにいれた。


倒れた二人を見て、残った一人が木刀を投げつけてくる。

俺が木刀を首を傾けてかわすと、男は唾を地面に吐いた。


「やってくれんじゃねえか。勝負せいや。おお?!」


「あら。一対一がお好み? でも、それは虫が良すぎるんじゃないかなあ?」


「ああ? 逃げんのか?!」


男の背後にいた松下が、裸締めを決め、締め上げる。

男が落ちると、松下は手を放し、大きく息を吐いた。


「いってー。思いくそバットで殴られたぜ」


「怪我はない?」


4人が集まってくる。

少し怪我をしているものの、どいつも平気そうだ。


田崎が、血の混じった唾を吐いてから、煙草を咥える。


「しっかし、見事なもんだな。棒もってりゃ、お前ひとりでいいんじゃねえのか?」


「ははは。いくらなんでも、200人を相手にしてたら、体力が持たないって。

 ああいう集団はな、最初の数人を力の差を見せつけて倒したら、かかってこなくなるんだよ」

 

「さっすが俺らの姫は違うねえー。なあ、姫、最初に頑張った俺に褒美くれよ。

 キス、キスがいい」

 

俺の肩を抱いてくる西田の顎に棒を当てると、西田は顎を押さえて蹲った。

背後の妙な気配に気付くと、どこかに隠れていた小森が、俺に抱きつこうと身構えていた。


「メガネ君、西田みたいに棒をくらいたいか?」


「おほん。今のは奈津美さんが、油断してないか試したのです。

 さて、いまので敵の戦力は、半減したとみていいでしょう。

 いよいよ校舎に突入しますが、今の戦いを見ていたら相当警戒するはずです。

 気を引き締めてください」


三野が小森の胸をポンと叩いた。


「うちらの姫がいたら、問題ねえって。朝鮮高校なんて、軽くやっちまわあ。

 なあ?」

 

「三野さん、さっきの戦いが上手くいったのは、敵が油断してたからですよ。

 ほら、ご覧なさい。あんなに威嚇していた連中が、いまは息を潜めている。

 何かあると考えるのが普通ですよ」

 

「何かってせいぜいが、棒きれもっておそってくるぐれえだろ?

 ちゃちゃっとやっちまおうぜ」

 

「うーん。そうだといいんですが。では、正面に奈津美さん、田崎さん、真ん中に西田さんと僕、

 後を三野さんと松下さんで固めて、用心していきましょう。

 このフォーメーションは崩さないでくださいね。分断されたら途端に飲み込まれますよ」

 

校舎内は、まだ少し煙っているものの目や鼻には、それほど影響がなく、

俺たちはゆっくりと進んでいく。

物音はしないもののどこかから見られていると感じる。


2階への階段を上っていると、前から2人木刀を持った男が現れて跳びかかってきた。

俺は木刀をかわし、棒を顔面にあてて、一人を倒す。

もう一人は、田崎が右の拳で殴り倒した。


「やっぱ俺はこれだな」


そういって、田崎は持っていた木刀を捨てた。


「おいおい。大丈夫かあ? こいつら危ねえぞ?」


「はっ。この程度ならなんぼでも来いって。

 それによ、奇襲が二人ってことは、大半が逃げたんだろ。

 なあ、メガネ?」

 

小森は、うーんと言って渋い顔をする。


「まだ、親衛隊が出てきてないんですよねー。

 とにかく用心して進んでください」

 

2階にあがり、廊下を見るが人の気配はない。


「メガネ君、どうする? 教室の一つ一つを調べる?

 それとも上に上がる?」


「敵の大多数が逃げ出したとしても、

 相手の数の有利がなくなったわけではありません。

 囲まれることをもっとも警戒する必要があります。

 手間はかかりますが、教室を一つ一つ調べましょう」


「そうだね。そうするか」


廊下を歩き、教室を見るが誰も残っていない。


同じように、3階、4階を調べたが、教室に居た形跡はあるものの、

誰もいなかった。

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