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おやじ彼女  作者: ponta
壮士凌雲
513/570

演技

「おはようございます。校内を見て回りたいのですが、

 職員室はどちらでしょうか?」

 

「ちょっと、あなた危ないわよ!

 他校の制服で、こんなところにいたら。

 どっかの高校と喧嘩するとかで、男共が殺気立ってるんだから」

 

「そうなんですか? 困ったな。

 父の母校を見ておきたかったんですけど」

 

「あなた、在日?」


「いえ。国籍は日本ですし、母は日本人なので、生粋の朝鮮人というわけではありません。

 父が在日三世です」


まるっきりの出まかせだが、バレやしないだろう。

女子生徒は俺の言葉に、感心する。


「ふーん。ハーフなのかー。そっかー。

 ハーフは、すごく綺麗な人がいるって聞くけど、本当なのね。

 女優さんか、モデルしたほうがいいんじゃないの?

 いや、待って。どこかで見た気が……」


「あ、私、モデルしてるんですよ。それで、時たま地方番組に出たりするし。

 街角ウォッチっていう番組に。それでじゃないかな」

 

「やっぱり! なんか見たことあると思ったのよねー。

 すげえっ。私、芸能人としゃべっちゃったよ。

 じゃあ、よけい危ないじゃん。私が案内してあげる。

 私と一緒なら、襲われることなんてないし」


「そんな。それは、悪いですよ」


「いいのいいの。気にしない。気にしない。

 私たちは仲間なんだから」

 

あれま。いい人みたいだな。だますのは気が引けるが、この際、甘えておくか。

女子生徒の案内で、校内を歩いていると、後方からバタバタと数人が走ってきた。


追い抜いていったかと思うと、

2m程前で、急に立ち止まり、振り返った。


「ミョンエー、なんなんこの娘! めちゃくちゃかわいいじゃん!

 紹介して、紹介!」

「俺も! 俺も!」

「おほー! どこの娘なん?」


「まったく、あんたたちときたら、いい、この娘はねー……。

 あ、名前聞いてなかったね。名前は?」

 

「大野奈津美です。どうぞよろしく」


「よろしく、よろしく!」

「奈津美ちゃんかー」

「声もかわいいねー。いいねーいいねー」


ミョンエーは、三人を蹴る真似をする。


「あんたら、早く行きなさいよ。金に呼ばれてんでしょ?」


「そうだった。ミョンエーも奈津美ちゃんも早く、こっから離れたほうがいいよ。

 昼過ぎに三鷹水産の奴らが攻めてくるんだよ。

 なんでも、車で突っ込んできたり、火炎瓶投げたり、あぶねえことするらしい。

 特に田崎に取って代わった女がめちゃくちゃで、すぐ人を刺すらしいんだわ。

 すげえ不細工らしくって、綺麗な娘はいきなり顔切られるらしい」

 

なんか話に尾ひれがついてるみたいだな。まあ、人の噂なんてこんなもんか。

俺の顔も知らないみたいだし、まだ大丈夫だな。

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