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おやじ彼女  作者: ponta
壮士凌雲
507/570

ピンチ

8Rのゴングが鳴った。


重い体に、鞭打ち立ち上がる。

1Rのボディ攻撃は、回を重ねるごとに効いてきて、

体を動かすと鈍い痛みが走り、吐き気がこみあげてくる。


距離を取り、ジャブを打ち、距離を詰めようする山中をかわす。

山中の顔は、腫れてきているが、見た目ほどのダメージはない。

動きは衰えていない。


対して、俺は外見上はダメージが無いように見えるが、ボディが効いてきている。

追い詰められているのは、俺の方か。


何とかあと5R、逃げ切るしかない。


距俺のジャブをかいくぐり、右フックを打ってきた山中に、

俺はクリンチして、上から覆いかぶさるようにして、抑え込む。


観客からブーイングが起こる。何度となく俺がクリンチして、

時間を稼ぐのに嫌気がさしたのだろう。


だが、まともに打ち合っては、やられてしまう。


「山中さん、私に抱き付かれて嬉しいでしょう?

 抵抗しないもんねー」


「効いてるだろ?」


「え?」


「抑える力が、ラウンドを重ねるごとに、弱くなっている」


山中が無理矢理、俺の手を広げさせ、ショートボディを打ってきた。

鈍い痛みが走り、俺はたまらず膝をついた。


いかん。今のはまとも食らった。

苦しさに、顔がゆがんでしまう。


フラッシュが一斉にたかれ、会場がどよめく。


「ワーン、ツゥー」


カウントが進められ、山中は自コーナーで、俺が立ち上がるのを待っている。

決めにくるつもりか。


俺はこみ上げてきた胃液を飲み込み、立ち上がる。


レフリーが、俺のグラブを掴み、俺の顔を確認している。

おそらく、俺の顔は真っ青になっているのだろう。

脂汗が全身から噴き出ている。


「やれるか?」


口をあければ、吐いてしまいそうだ。

俺はこくりと頷く。


「ファイッ!」


山中が突進してくる。

膝が笑っている。避けるのは無理だ。


俺はロープにもたれ掛かり、ガードを固める。

山中の全力のパンチが、雨あられと浴びせられる。


必死にガードしながら、試合を止められないように、

時折、軽く手をだし、時間が過ぎるのを待つ。


20秒程耐えただろうか、フック主体だった山中が、

突如右のアッパーをだした。


突如、目の前がまばゆい光だけになり、

天井を向いていると気付いた次の瞬間、俺はマットに倒れこんだ。


「うっ、くっ……」


今度は脳を揺らされた。手まで痺れている。

マットについた手がブルブルと震えている。


ロープに手をかけ、何とか体を持ち上げる。

足に力が入らない。自分の足を数回殴り、カツを入れる。


ロープを掴んだまま、何とか立ち上がると、

割れんばかりの拍手が沸き起こった。


健闘を称える拍手? いや違う。

前もそうだった。俺がピンチになると、観客は盛り上がった。


皆が観たいのは、俺がKOされるところ。

生意気な女がぶちのめされる様子をみて、溜飲を下げたいのだ。


いつだってそうだった。俺が優勢になるとブーイングの嵐が起こった。

俺がピンチになると、一際大きな歓声がわき起こった。


誰がお前らの希望通りになってやるものか。

会場全員に嫌われようとも、どんな手を使ってでも勝ってやる。


叩きのめされるぐらいなら、金的を蹴り、喉を潰してやる。


「セブン、エイト。やれるか?」


はて? いつから試合で、カウントを数えるようになったんだろう?

すぐに立ったんだから、技有か有効だろう?


しかし、まぶしいな。変だぞ。この試合場。

まあ、いい。俺の相手は、獲物はどいつだ。


正面に男が立っている。見たことのない奴だ。

体も小さい。こんな奴に俺はやられたのか?

やられた分、倍にして返す!


俺の殺気が漏れたのか、男は恐怖の顔で下がった。


くそ。追う足がない。しっかりしろ。俺は生半な鍛え方はしてないぞ。

光臨会の人間とことを構えるということが、どういうことか、わからせてやるんだ。


ん? なぜ、こいつはグローブなんてつけてる?

それに、ここは……、リング?


そうだ! 今は、ボクシングの試合中だ。

この野郎~。やってくれんじゃねえか!

意識が妙なところに行きかけたぞ。

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