表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おやじ彼女  作者: ponta
復活
3/570

女ならではのこと

 部屋に戻ると、さっきの女性の隣に医者が来ていた。

 俺を見ると、ベッドに横になるように指示する。


 看護師が、ベッドの周りのカーテンを閉じ、

 医者が服をめくり聴診器を当てる。

 冷たい聴診器が、乳首に当たった。

 凄まじい快感が、体を走り抜ける。

 俺は、びくんと体を震わせて、声を出してしまった。


「あっ……」


 医者は、うん? という顔をしたが、その後、ペンライトを使って、

 目を調べ、女性に、大丈夫でしょうといって病室から出て行った。


「ほんと、お母さん心配したんだから。じゃあ、一回、家に戻るわね。

 お昼過ぎには退院していいって先生いってたから、

 その頃に迎えにくるわ」


「うん。わかった」


 母親が病室を出ていくのを待ってから、俺は荷物を漁りだした。

 まずは、情報だ。美少女の体になったというのはわかるが、

 どこの誰だかもわからない。


 ベッドの脇に置いてあった、カバンを開けてみると生徒手帳があった。

 どうやら、俺は大堀高校の1年らしい。

 名前は、大野奈津美か。

 カバンの中をベッドに投げ出すと、教科書やノートに混ざって、

 手帳があった。


 ペラペラとページを捲ると、綺麗な字で予定が書かれている。

 また、制服姿の数人と撮ったプリクラが貼り付けてある。

 これらが、友達ということか。

 友達も結構可愛い子が多いみたいだ。

 おほー、こりゃこの子達に会うのが楽しみだ。


 それ以上、情報を得られそうになかったので、

 棚にあったガムをポケットにいれ、

 俺は病室を出て、散歩することにした。


 結構大きい病院みたいだ。

 俺が歩いていると、男性の入院患者たちが、チラリと顔を見ていく。

 やらしいというか、デレっとしてるというか、男はああいう目で、

 可愛い子を見てるんだなあ。

 前の俺を見ている目といったら、

 蔑んだような馬鹿にしたようなものだったが。

 容姿が違うと、こんなにも違ってくるのか。


 玄関付近にまで行くと、喫煙室があった。

 ちょっと、一服していくか。


 俺は、喫煙室に座っているおっさんの横に座って、

 おっさんにガムを差し出す。

 それから、タバコを吸うポーズをして、笑顔を作った。


「すんません。一本いいすか?」


 おっさんは、驚いた顔をしたあと、急に真顔になった。


「何言ってるんだ? 君、未成年だろう? 

 タバコなんか吸っちゃいかん!」


「え? 俺、36ですけど」


「大人をからかうんじゃない! さっ、早く帰りなさい。

 君みたいな可愛い子が不良みたいなことしちゃいかん!」


 喫煙室から、おっさんに押し出され、俺は舌打ちした。

 一本ぐらい、いいじゃねえか。

 喫煙室のガラス戸に、可憐な少女の姿が映る。


 しまった。俺は今、美少女だった。

 そら、この容姿でタバコくれっていったら、怒られるわなあ。

 しゃーないか。アパートに行って、

 金とタスポを取ってくることにしよう。


 病室に戻って、戸棚を探すと財布があった。

 1000円札2枚と、小銭が入っている。


 俺は、自販機のある食堂まで歩いて行った。

 缶コーヒーを買おうとして、財布を開けようとしてると、

 横から手が出てきて、コインを入れた。


 俺が振り向くと、30ぐらいの男がニヤニヤと笑っている。

 なんだこいつ? ムカつく野郎だ。ぶん殴ってやりたくなる。


「お嬢さん、可愛いね。俺のおごり、好きなの買いなよ」


 おっ。まじか? なるほど。可愛いとこういう事があるんだな。

 俺は、ぺこりとお辞儀して、ボタンを押した。

 がちゃんと音がして、缶コーヒーを取ろうと身を屈めると、

 男にケツを撫でられた。

 俺が、男を見上げると、男は嫌らしい顔で俺を見ている。


「いいねえ。ケツがプリプリしてるよ。いくつ? 

 ねえ、病室は? 番号教えてよ」


 俺は上半身を元に戻すと、体を思い切り捻り、

 左足を踏み込んで思い切りフックを叩き込んだ。

 ごんという鈍い音と共に、拳に熱い感覚が起こる。

 呆気に取られて、よろめく男に俺は言い捨てる。


「ボケが! その顔潰される前に、消えろ!」


 歩き出して、まだムカムカがおさまらない俺は、

 缶コーヒーを、まだ動けずにいる男に投げつけ、病室へと戻った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ