始まりの朝 -2-
しばしの沈黙が部屋に落ち、少しずつ眠気も覚め、頭が正常に働きだす。
(えっ?ちょっ、ちょっと待ってクダサイ。
何で?俺、オトコだよなぁ。
いやいや。嫌だよ、嫌ですよーっ!『朝起きたら異性にへんしーん』だなんて、売れない漫画家よろしくの展開なんて、おにーさんは認めたくないですってーっ!!)
せっかく正常に働きだした頭には申し訳ないが、俺は当然のことながら、パニックになった。
(いや、マジまずいって。今日、平日じゃん!どーすんのよ?これから学ッコに…)
そこまで考えると、俺は『はぃ?』と、時計を見た。基本的に俺の通っている高校まで、どんなに頑張って走っても10分以上、通学(片道)にはかかってしまう。
ちなみに、今何時かと言うと。
(…8時25分?HR開始が30分からで、今から着替えて出たとしてもー…)
『完璧なる遅刻』。その言葉が俺の頭脳から導きだした、簡潔かつ正しい結果だった。
(まっ…)
朝、起きたら女になっていて、遅刻は決定の無残な現状。
「マジかよーーっ!」
普段なら出せない、ソプラノの声が、部屋中に響いた。
△ ▼
(うっわー。嬉しぃー。初めてソプラノの声が出せたよー)
半分やけになりながら、俺は着替え始めた。
(もぅ、いぃや。
今日は休んじゃえ。後で、メールか何かで、上手くごまかしておきゃあ、いぃだろ)
と言うかその手しか無かった。
俺は学生寮(勿論ながら、男子寮)に住んでいるため、今迂闊に出ていって、俺と同じような寝坊した奴等に会えば、変な噂がたつこと間違いナシであり、なるべく人目を避けなければならない。
(だぁーっ。こんな時にアイツが来たらぁ…)
『嫌だな』と、思った瞬間、背後でドアの開く音がし、ついでに、たった今『来てほしくないな』と思っていたヤツがにこやかに入ってきた。
「カーズマー!遊びにいかねぇ?…って、うおぅっ!!」
さてさて。やっぱり中途半端なトコロで終わってしまいました、『始まりの朝』。このお話はここでおしまいで、新しい章に入って行くつもりなので、致し方ないと思って、どうか勘弁してやってください。