第一話
近頃、若者というのは実に浮き足だっていると思う。
買い物に行っても、公園へ行っても、大学へ行っても、どこへいってもカップルがつきまとい、
女子は人前で堂々と自分の恋愛履歴や恋愛観を語り、男子は固まって猥談をする始末。
実にはしたなく、浅はかであります!
あぁ、誓って言いますが、私は決してひがんでいるわけではないのです。
そう、決して。
大学に入ってそろそろ落ち着いてきたかなという頃。
あちらこちらで歓迎会を催され、そしてあちらこちらでカップルが成立しはじめる。
私ははからずもそんな軽佻浮薄な勢いには乗らないけども、お年頃としてはそこそこ気にはなり。
友人の言う、「あんたもすぐできるって!」はあてにはならないのだと身をもって実感する日々であります。
私の通う大学はそこそこ名の知れた中堅私立で、私の自宅からは2駅ほど離れたところにあります。
春から一人暮らしをするのだと意気込んでいたのは良いものの、いざ始めると生活の大変さを思い知らされました。
そんな私に母君はあえて厳しい一言をおっしゃられたので、なくなく一人暮らしを継続中なのであります。
私はいつも決まった時間の電車に乗ります。大体通い慣れてきた頃には、同じ電車に乗る人を覚え始めてきました。
ハンチング帽を被ったステッキの似合うご老人や、良い香りを見に纏う自立したキャリアウーマン、同じ年頃のようであろう男子学生、いつも本を読んでいる私立学校の小学男児などなどです。
きっと他にもいらっしゃるのでしょうが、今のところ私の覚えた限りではこんなところです。
あまり期待をしないようにと、浮足立とうとする自身を宥め、私は春の風に背中を押されるように今日も大学へと通います。