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鉄のこころ

作者: 天津水。

20XX年──


 世界は変わった。私はつくづくそう思う。

 マスコミなどという仕事をやっていると、情報に触れる機会は自ずと多くなる。その中で、ふと思うのだ。世界は、いや、日本は変わったと。


 技術の圧倒的進化、昨今の急速なその進化によって、人々はかつては持ち合せていなかった慢心を手に入れたと思う。かつて外交に関して弱気だった日本は独占した技術を盾にして、諸外国に対して強気に出られるようになった。それ自体はまあいいのだが、この国全体に自分達は特別な存在であるというような慢心が蔓延しているように思われる。


 近頃よく話題に上る『心を持つロボット』とやらも、そこから生まれたくだらないものの一つであると思う。機械にいくら心を詰め込もうとしても、機械は人間にはなれない。


 ただこの問題、記事としては非常に話題性が高いものなので、追いかけているわけである。私自信としては、特に感慨などは存在しない。


 ──それが昨日までの私の考えだった。しかし、それは今日覆されることになった。私が読んだ原稿、小説となるはずだったその原稿は、つい先日まで私が決して受け入れなかった『心を持つロボット』のものだった。


 著者名「ミラ」 作品名「鉄のこころ」


◇◇◇


 ミラ、それが自分に付けられた名前でした。

 私は三十六番目に生み出された心を持つロボットで(博士達は我々のことを機械人と呼んでいましたから、以後そう呼称します)名前から察せられるように女性型でした。その時はまだ、私たちは世の中に存在すら知られていませんでした。


 私は他にいる機械人と話をしたり、博士達の開発を手伝ったりして日々を過ごしました。私たちの行動範囲は研究施設の中だけでしたから、たまに仲間と外の世界を見たいと話す事もありました。心を持った我々は、ある程度の自由を欲しがったのです。そのことを博士達に話すと、今はまだ外には出せないが、資料を持ってきてやるから目途がたつまでそれを見ていろと言ってくれました。


 私は仲間たちと毎日のようにそれを見て、意見を交わしました。あれを見てみたいだとか、あそこに行ってみたいといった事です。外への憧れは日増しに高まるばかりでした。


 私も無邪気に、ある意味漠然といつか外の世界に出たいと思っていました。今考えるとそれは、幻想の世界、物語の世界に行って暮したいという身勝手なものでした。物語の登場人物にもそれなりの気苦労があるのを考えもしなかったのです。


 そんな中、博士達から外の世界に出られるかもしれないという話がありました。どうやら私たちを買い取る人間が現れれば結果として外に出られるということでした。博士達はそれを就職のようなものだと言っていました。なるべく人間に近い生活をさせるということで、売上から自由に私たちが自由に仕える金も捻出されるということでした。


 一人、また一人と減っていき、ついに私も買い取られることになりました。買い取ったのは世界的に有名な企業の社長でした。私は何度も雑誌でそれを見た事がありましたから、何だか既に知りあっているような気軽な心持ちで彼の方に会いに行きました。


◇◇◇


「機械人三十六番、ミラです。今日からよろしくお願いします」


「おお、君がそうか。よろしく頼むよ」


 社長は私が信じた通りに気さくな人でした。私はほっとして、社長の姿を改めて見ました。ふっくらと太った体をサンドイエローのスーツに包んだ社長は、豊かな白い口髭を生やし、見るからに人の良さそうな目をしていました。私はまだ二言も言葉を交わしてないのにこれから送っていく日々はきっと素晴らしいものになると確信しました。


 実際、それは間違ってはいませんでした。社長は私にとても良くしてくれましたし、一緒に色々なところにも行かせてもらいました。この間の出来事はここに特筆すべきことではありません。ただ皆様が望む、平穏で楽しい世界を想像していただければ、大体一致していると思います。


 社長は私から見て、お手本のような善人でした。社長自身も私といるときは大方楽しそうな顔をしていました。ただ、時々その顔に影が差すのに私は気付きました。私は不安になりました。それで、毎晩わけを聞こうとするのですが、どうしても聞けません。そうすると、なんと社長の方から私に話をしてきたのです。あれは満月の夜の事でした。


 私はいつものように雑務を終えて部屋(社長の部屋なのですが、私と共同で使うことになっている場所です。館にはかなりの空き部屋があるのですが社長は私を傍に置きたがりました)に戻っていると、廊下の向こう側から歩いてきた社長に、夜風にあたらないかと誘われました。もちろん、私に断る理由はありませんので社長と共にテラスへと出ました。


 空には円いお月さまが浮かんでいました。私は見とれて月を見つめます。ふと横を見ると、社長も同じように月を見ていました。社長と私の目が合います。ふふ、という笑い声がどちかからともなく流れました。


「なあ、ミラ。呼び方のことなんだがな」


「なんでしょう?」


「名前で呼んではくれないだろうか。今のままだとよそよそしくていけない」


「わかりました。ええと、大五郎さま?」


「疑問形にならんでもいい。うん、いいね、それで頼むよ」


 社長はそう言って、ふふと笑いました。しかし、次の瞬間ふと影が射します。


「……ミラ、やはり私が信用できるのはお前だけだ」


「……どうしたのですか、大五郎さま」


「お前の目には私がどう見えている?」


「……最高の紳士です」


「そうだろう」


 社長は私の方を向いて、酷く悲しそうな顔をしました。そして私に近付いて、手を伸ばし、固く抱きしめました。胸の中心が、軋む思いでした。


「だが実際の私は違う、何もかもが敵に見える。紳士的に振舞うのだって誰かに批判されるのが怖いのだ。お前を買ったのも、初めは壁に言葉を投げつけるよりかは、少しは虚脱感も薄まると思ったからなのだ。……だが、お前は私の思ったよりも、はるかに人間だった。この私が恋をしてしまうほどに、な」


 きっと私はこの瞬間、自分の身の上を完全に忘れて人間になったように感じていました。自分の中に、熱き血潮が流れているとさえ錯覚したのです。流れているのは、ただのオイルだというのに。


◇◇◇


 それから十数年の時が過ぎました。大五郎さまはすでに社長では無くなっていました。

 社長時代によく家を訪れた人たちは、あの方が社長では無くなった途端に、ぴったりと来なくなりました。大五郎さまの孤独はさらに深くなりました。

 私は何年もあの人に寄り添い、心の孤独を癒してきました。あの人の拠り所となってきました。恐らくは私も、同じように拠り所にしていたのでしょう。


 そうしていく内に、大五郎さまの髪には白いものが混じり、体には無数のしわが刻まれていくようになりました。時の流れはあの人を連れ去り、私を置き去りにしていきます。私は変わらず、あの人だけが変わっていきます。それでも私は幸せでした。恐らくはあの人も幸せでした。そう信じています。


 やがてあの人が床に伏せり、もう立ち上がれなくなってからも私はあの人の傍に居続けました。あの人の手を握り続けました。でも私の手は人間のそれではありません。私は人間の心を持つけれども、決して熱い血潮は流れてはいないし、その手は暖かくありませんでした。決して彼の手を温めることはできませんでした。それを悔しく、悔しく思いました。


 どれくらい経ったでしょう、私はすでに温もりが消えたその手をずっと握っていました。


 それから私は、自らの電源を落とし、深い死のような眠りに身を落としました。


◇◇◇


 暗い闇からの回復、意識の浮上、それを感じて、次に誰かの声を聞きました。

 少々うるさく感じながら、瞼を持ちあげると、そこには先程とは全く違う光景がありました。


 古いいぐさに匂いに満ちた部屋、目に写る障子と畳、そして布団に寝かされている私。どれも私たちの館とは一致しません。洋から和へ、全くの逆方向への変化に私は戸惑いました。


 そうやって一人でおろおろしていると、右方向の障子ががらりと開いて、青年が入って来ました。穏やかな雰囲気を湛えた青年でした。彼は作業着を着ていて、一目で技術系の人間だと分かります。そんな彼は私に向かって微笑しながら近付いてきました。


「おはよう。調子はどうだい? 見たところ電源が切れてただけで他に異常は無いようだけど」


「……ええと、どちら様です?」


「ここは僕の家だから、こちら様かな」


「全く笑えません」


「いいんだよ、自己満足なんだから」


 そう言って男は胸のポケットから煙草を取り出して、火を付けました。濃い煙が立ち上ります。私が顔をしかめるのを見て、彼は不思議そうな顔をしました。


「なんだ、煙草が嫌いなわけじゃないだろ? 咳き込むわけじゃあるまいし」


「いえ、ただ匂いが好きになれないもので」


「へえ、やっぱりどこまでも人間に近く作られてるんだね、君」


 作られている、その言葉が私の心にもやもやとした影を落とした気がしました。それが表情に出たのか、彼は笑って「ごめん」と謝りました。


「まあ、ともかく問題は無いみたいだね。安心安心」


「…………」


「ん? どうした、急に黙っちゃって」


「……私、自分の家に居たはずなのに、何でこんな所に。帰らないと」


「……帰ってどうするんだい。最早どうにもならない」


「私の家を知っているんですか? なら今すぐ連れて行って下さいませんか」


 私は至極丁寧にお願いしました。彼は私の顔を見て、少し憐れむような目をしました。


「そんな威圧感たっぷりに言わなくても、望むなら連れて行ってあげるよ。でなければ君は進めないだろうし」


◇◇◇


 館には車で行くようでした。私は助手席に座り、彼が運転をします。私は運転中、窓の外を見ようとはしませんでした。一心不乱に前だけを見つめていたような気がします。それを緊張しているととったのか、彼は音楽を掛け始めました。私の知らない曲でしたが、ジャズ調の音楽が心を癒してくれました。


 やがて外に見える風景が私の知っているモノとなってきて、車は適当な場所で止まり、私たちは降りました。私が「家はどこですか」と問いかけると、彼は「目の前だよ」と言いました。


 私はおかしく思いました。だって目の前にあるのは私の家とは似ても似つかない、ただの瓦礫の山だったのです。「御冗談を」と言って瓦礫をちょいと蹴飛ばしました。


 ──その下には、見慣れた名字の表札が。


「……え?」


「言ったろう、目の前だって。考えなかったのかい? 何故僕が君を家に連れてきたか。取り壊されたんだよ、君の家は。君の主人の死体、ミイラ化していたそうだ。長い間誰にも見出されることが無かったんだろうね」


「私は……」


「館が取り壊されるとき、君は一緒に廃棄処分される予定だった。そこを僕が譲り受けたのさ」


「……どうして廃棄してくれなかったんです。もはや私の生に意味はありませんのに」


 私の言葉に、男は一瞬悲しそうなな顔をしましたが、次の瞬間には元のただ穏やかな顔に戻っていました。


「君の都合なんて知らない。いいんだよ、自己満足なんだから」


◇◇◇


 それから私は男の下で働くようになりました。

 仕事をしている最中、私の脳裏を今まで考えもしなかったことが浮かび始めたのはこの頃です。私は自分の存在に疑問を持つようになったのです。


 私は機械です。人間ではありません。私の身体も、心も、備わる物は全て作られたものでしかありません。私の心は本当に私の心なのか、ただ『そう考えるべき』というプログラムの下に沿っているだけではないのか。


 結局は私など、二進数で動く機械でしかないのです。その事が私を苦しめました。

 作られた『人間もどき』、その事が私の心に重くのしかかっていたのです。


 私はあまりテレビを見ませんでしたが、少なからず生み出された我々のことが取り上げられている事がありました。私は当然、それをあまり見たくはありませんでした。


 それを知ってか、男はこの話題がテレビに上ると、毎回さりげなくチャンネルを変えました。いえ、本人はさりげなくと思っているのでしょうが、見ている側からすれば急いでいるのがバレバレなのです。私は口に出さず、その事に心の中で感謝しました。


 そんなある日のことでした。その日は偶然男が出かけていて、私は一人家の番をしていました。男の仕事はそれほど盛況な訳ではありません。おそらくは誰も来ないだろうと私は踏んでいました。しかし、来客はありました。


 インターホンの音が家に響き、私は玄関へと足を急がせました。急いで扉を開くと、そこには頭の禿げた高齢の男性が立っていました。私ははて、と思いました。というのも、私はその男性に何か懐かしさに似た感情を覚えたからです。そしてそれはすぐに実感に変わりました。男性の口から放たれた言葉が、そのまま私の感情の裏付けとなったのです。


「……ミラ?」


「……博士?」


 私たちはそう言ってお互いを見つめあいます。恐らくは男性から見て私は一切変わりなく、私から見て男性は少し老けて見えました。桑島 八郎。私を作り出した博士の一人です。桑島博士は信じられないものを見るような目で、私を見据えました。ただ、それは私とて同じです。こんなところで自分の親ともいえる存在に見えようとは思ってもいなかったのです。


 やがて博士は驚愕の顔を軟化させて、優しく「上がってよろしいかな?」と聞いてきました。私は二つ返事で承諾しました。


 玄関で靴を脱ぎ、廊下を抜けて客間へとたどり着き、そこで私たちは正座で向き合いました。その状況から先に言葉を発したのは、またもや博士の方でした。


「こうして顔を見るのは何時ぶりになるかな。本当に懐かしい。どうだい、そっちは」


「どうだいと言われましても、特にどうこうしたという事はありません」


「ふうん、そうかい。実は君のご主人が遺体で見つかったと聞いたときは驚いたんだよ、君が一体どうなったか気になった。だがここに居るということは、良い主人に拾われたことになるな」


「博士はここの主人と知り合いなのですか?」


「良い仕事をする男さ。何故もっと自分の腕の良さをアピールして積極的に仕事を受けに行かないのか、と聞いたら『忙しいのが嫌だから』と言いおったよ。変わり者と言うか、私とは正反対だな。私は自己顕示欲の塊だから」


 その言葉に、私は少し嫌な心持ちになりました。

 自己顕示欲の塊、それはつまり、私を作った事も自分の技術の売り込みに過ぎなかったのではないかと思われたのです。私は自分が使い捨ての材料に使われたようで、嫌な気持ちになりました。つい、悪態が口をついて出ます。


「博士はそうやって積極的に仕事を取りに行った結果、私達を作られたのですね」


「……そうなるかな」


「プロジェクトは成功しましたし、博士の地位は向上したのでは?」


「……一時期はね」


「……一時期? それは一体」


 私は意味が分からず、聞き返します。博士は私を見据えて答えます。


「どういうことか、だって? なに、簡単な事さ。君達を人間に近く作り過ぎたのが失敗だった」


 その言葉を皮切りに、博士の言葉が暗く沈み始めました。押し込めていた黒い物が少しずつ流れ出るように、博士の口から言葉が漏れます。


「傷害事件、五十体製造した君たちのうち、十三体が主人に危害を加えた。中には殺してしまった者までいる。最初の頃こそ、私はそのプロジェクトの一員として脚光を浴び、様々な人たちから称賛を受けたよ。だが、その事件が起こってからは非難の眼差しで見られるようになった。被害者からは随分と罵倒されたし、マスコミには連日叩かれた。きっと他の奴らも同じだろう」


 私はその事実に絶句しました。そんな事は一遍も知りませんでした。

 そういえば、男はよく新聞のチャンネル欄と睨めっこをしていました。それは私にこの事を知らせないためだったのかもしれません。博士は尚も続けます。己の恨みを吐き出すように、黒い物を少しずつ。


「やはりお前たちなど作らなければ良かった。禁断の領域に踏み込みたい、誰にも成し得なかった事を成し得たい。そう言った思いが、私を奈落に突き落としたのだ。──お前たちは生まれるべきでは無かった」


 吐き捨てるように言った博士は、私の顔から目を逸らし、立ちあがって玄関に逃げるように去って行きました。やがて扉の開閉の音が響くと、家の中にはまた私だけが残りました。


◇◇◇


 それから、私は男に対して心のどこかでもやもやとした負い目のような物を感じ続けました。そんなだから、私はいつも何かしらにびくびくする臆病さを備えてしまいました。そんな様子が男にも伝わったのか、憐れみと怪訝が混じった瞳で見られる事が増えました。


 もちろん、あの日の事は男には言ってませんので男には何が何だか分かりません。ですが、私は知っています。その様子が男には不可解に見えたのでしょう。そして、いつしか男からは瞳にあった怪訝そうな思いが抜け落ち、私への憐れみだけが残ったような気がしました。


 私はあの日から、男から隠れるように自分達の事を調べました。雑誌から、テレビから、あるいは書籍から。主観的な意見を述べた者から、事実のみを淡々と書き綴ったものまで。それによると、傷害事件を起こした十三体の内、八体は既に廃棄処分されており、残りの五体はどこに行ったか行方が分からないという事でした。


 他に大勢いる機械人はどうなったかと言うと、その事件によって恐怖感に煽られた主人たちが続々と返品をしてきているようでした。返された個体がどうなるかというと、そこまでは書かれていませんでした。しかし、やはりあんな事件があった後では誰にも買い手がつく訳がありません。そんな私達をわざわざ研究所で養う必要性がありません。恐らくは廃棄処分となるのだと思いました。


 私は不安と絶望でまみれた仲間たちの姿を想像して、憐れみました。

 生まれるべきではなかった。そう言われた場合、仲間たちはどう思うのでしょう。恐らくは絶望しかないだろうと思いました。なぜならその時、私がまさに暗い絶望の道をひた走っているに違いなかったのですから。もはや私と仲間達を結ぶものはこの絶望しかないのだと思いました。


 資料を読み終わると、よく縁側に出て空を見上げました。広く突き抜けるような青空を見ると、少し気持ちが楽になりました。そこに太陽を遮るように鳥が通り抜けると、何だか鳥が随分と羨ましく感じました。


◇◇◇

 私は今、廃屋で一人この手記を書いています。もしこの作品が世に出たならば、私は同情されるでしょうか、馬鹿馬鹿しいと嘲笑されるでしょうか。多くの同情を得られれば、私はそれで満足なのかもしれません。この後私は、もう二度と目覚める事が無いように自分の身を火にくべようと思います。機械は死ねばどこに行くのでしょうか。そういえば日本の神話では全ての者には神が宿るといいます。ならば私の身体にもまた神が宿っていて、その神によって黄泉へと送り届けられるのでしょうか。もしそうならば、私には機械の神と人間の神、どちらが宿っているのでしょうか。気になる事は多いですが、ここらにしようと思います。


 唯一つ、私の心は本当に私の心なのかという疑問は、氷解する事はありませんでした。


◇◇◇


『鉄のこころについて』


 以上の手記を世間に公開するにあたり、様々な意見や感想を戴いた。

 その中で、私達の自作自演だという説が未だに多いのは、少し残念と言わざるを得ない。ただ、私もこれが別の誰かの狂言だと言えない事はないと思っている。私が趣味の廃墟巡りをしているうちに、この手記を見つけた時、近くには確かにロボットの残骸と思われるモノがあったが、それを見て他の誰かが想像でこの作品を書き、供養などの理由でそこに置き去ったと考えることもできるわけである。


 だがしかし、問題はそこではない。たとえこれが誰かの狂言だとしても、その誰かはこの作品を通じて伝えたいことが有ったはずなのである。それを感じ取りもせずに、否定する事は、人間らしい感情を失い、慢心に浸かっている事だと私は考える。


 皆々様が人の心を失わない事を、私は切に願う。

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