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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ラーギヨティーヌ公爵夫人

作者: 小川大河
掲載日:2026/07/08

 決算前の事務は忙しい。最近は一分一秒と無駄にできない日々が続く。あちこちの部署が書類を送ってくるせいだ。パソコンの画面を凝視しているので目がバキバキになっている。オフィスの中にキーボードをカチャカチャと叩く音が響く。遠くで上司の怒声が聞こえる。

 「ゴラァぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

 見ない見ない。いらぬ心配をして巻き込まれたくはない。上司というのは部下に怒鳴り散らすことを仕事にしているようだ。あの人は1日中それだけに集中している。あんなに元気よく大声を出せるエネルギーには感心するが。

 「ゴラァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁl。

 最悪だ。近づいてきた。そのうち、こっちに来るな。ああ、あっちに行ってほしい。とにかく見ない見ない。知らんふりだ。

 「お前は仕事が遅い。まだ全然終わっていないじゃないか。このままだと、今日は帰れないぞ。それとも帰るのか。仕事もしないで。給料泥棒。お前は給料泥棒だな。本当に給料泥棒は逮捕してくれ。この国の警察は無能だな。こんなやつも見逃すなんて。」

 バンと小気味良い音がして、カサコソと紙が散らばる。書類を上司に投げられたのだろう。あれをされると書類を整理するのにとても時間がかかる。順番に並べていたものがぐちゃぐちゃになる。おそらく、そのせいで今日中には終わらない。全く何をしたいんだが。だが、自分には関係ない。近づいてきている。見ない見ない。

 「ゴラァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっっっっっっっっぁぁぁぁっぁぁっっぁあぁっっっっっっっっっっっっぁぁぁっぁあああああああああああああああああっっぁ」

 ついに来てしまった。もう死にたい。帰りたい。毎日こんなのは嫌だ。職場は地獄だ。どうして人はこんな思いをしてまで働くのだろう。なんで会社に行くのだろう。みんなで休めば仕事はなくなるんじゃないか。

 「お前は俺の話を聞いているんのか。どいつもこいつも使えないやつばっかりじゃないか。俺の邪魔ばかりしやがって。これでもくらって、反省しろ。」

 バッチーンと音がして、頭には鈍い痛みが会った。書類の束で頭をやられた。頭が真っ白になった。何だこれは。ヤバい。前が見えない。アイツはついに超能力でも手に入れたのか。いや、それはない。当たりどころが悪かっただけだろう。目が覚めるとあたりは一変していた。

 「piiohjirhiohaiovhahvjahnvojnbj]

 一体、この人は何を言っているんだ。てか、ここはどこだ。城が見える。それに石造りの街道。ボロ切れをまとった人々。響き渡る人々の怒声。もしかして外国。あとなんだろう、変な匂いがする。腐ったような。下水のような。いや、とてもひどい匂いだ。レンガ造りの建物。馬車が高速で隣を通る。身動きが取れない。体が大きな板のようなものに縛り付けられている。この人たちはなんで私のことを運んでいるんだろう。私の体を4人で運ぶ人々はみすぼらしい格好をしている。それにしても匂いが酷い。

 ビチャビチャと音がする。私を運ぶ人々の足元がぬかるんでいて大変そうだ。雨が振ったのかもしれない

。いや、天気は快晴だ。それにすぐに乾いてしまうような暑さだ。もしかしたら、水場があるのかもしれない。

 あれば何だ。丸いものが落ちている。このへんはひどく臭いな。そんなに大きくはない。いや小さい。そこからなにか伸びている。丸いものに近づいている。目玉だ。くり抜かれた眼球。そこから伸びる筋肉。あちらこちらにおちている。胃からなにか込み上げてくる。目がチカチカする。一体ここで何が。この匂いは血だ。ぬかるみは水じゃない。大量の血が流れたあとだ。頭がフラフラする。一体どこへ運ばれる。

 人間の爪が散らばっている。こっちには足の指が散乱している。手の指はさっき見た。片腕が落ちている。こここそ地獄だ。ひどい匂い。人々は目をギラギラとさせている。いや待て、あれは死体の山だ。なんなんだ。死体はバラバラにされて頭がない。頭があった。人間の頭部だけを積み上げた山ができている。もうすごい匂いだ。

 「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」

 凄まじい叫び。いったいなにが。いや考えたくもない。おぞましいことが行われている。簡単に想像できる。指を引きちぎっているのかもしてない。足を切断したのかもしてない。あるいは。鈍い音がした。不気味な音だ。なんだろう。歓声が上がった。大群衆だ。いったいこれほどの人々が何のために集まっているんだ。それにさっきの悲鳴は。興奮した人々が道をあけてくれる。先の人もどいてくてて、一つながりの道ができた。なんだろう何か光った。

 「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 気がつくと叫んでいた。自分は失神していたのかもしれない。光は刃だ。ギロチン台の。いまもこっちに向けて輝いている。血の海ができている。いつこの下まで運ばれたのだろう。血で濡れた地面が生暖かい。これからギロチンにかけられる。いったいどうしてこうなった。何をしたというんだ。怖い怖い。やるなら早くしてくれ。こっちに群衆の視線が集中しているのが分かる。いや違う。やつらはギロチンの刃を見ているんだ。切られた首、切られた首。いろいろなことを思い出す。匂いがすごい。すごい匂いだ。現実に引き戻された。刃がゆっくりと落ちてくる。首の肉を裂き、首の骨を切る。不気味な鈍い音をたてて。群衆は喝采するだろう。なんか体から変な汁が出てきた。イヤな汁だ。あれは断末魔の叫びだったのか、ようやく理解した。

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 

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